猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

収益物件特有の物件調査2

収益不動産は、一般的な不動産調査に加え以下に述べる項目についても精査を加える必要がある。
前回は
1.共用部の維持管理状況
2.建築条例・法規制
3.入居者の属性
4.賃貸契約の内容
について触れた。
今回は、残りの3つの調査項目のうち「市場性」について、次回は「投資適格性」、「自分自身のニーズに合った物件なのかという判断」について解説する。

5.市場性

収益不動産として運用を行っていくうえで、その物件が果たして市場に受け入れられ事業として成り立つのかという判断は、計画の根幹を為す重要な要素となる。ここでは、「不動産投資に向いている場所かどうか」という判断をする場合に役立ついくつかのポイントを紹介する。なお、これら調査の対象となる賃貸物件は、交通便・間取り・面積・賃料・築年数などによって異なる結果が出るので、それらを特定した分析を行うことが肝要である。また、それを行うことによって投資の方向性を打ち出すうえでのヒントとなる事が多い。

(1)人口・世帯数・ストックのバランスを見る
若年層が多く、人口ピラミッドがいまだピラミッド状を維持し、持家率が37.6%と低く、産業・経済面から見ても投資エリアとして魅力的な福岡市の人口増加は、2008年(平成20年)から2012年(平成24年)の5年間で約6万5千人。また、世帯数は約5万6千世帯の増加がみられた。持家率から判断すると、この中の約3万5千世帯が新たに発生した賃貸需要と考えられる。
一方、同期間に供給された住宅は約7万戸、貸家はこのうち約4万戸・・・。同様の状況は福岡に限らず多くの大都市で見られる。逆に市場自体が小さく注目されない地域において需給バランスが保たれているケースも少なくない(ただし、それが投資市場として成り立つ地域であるという確約をもたらすものではない)。
人口の増加・世帯数の増加・ストックの増加については、各自治体のホームページや総務省、国交省のサイトから調べることができる。
貸出されている賃貸物件の戸数あるいは床面積の変化から需要のトレンドを予想する方法としては、「吸収(Absorption)」がある。計算式は「期末の占有-期首の占有」あるいは、「期首空室数+期中供給数-期中滅失数-期末空室数」。市場の需要は吸収の増減に正比例する。
また、賃貸物件の検索ポータルサイトから近隣エリアの需給ギャップを調べるために「敷金・礼金」の有無に注目する方法もある。当該物件の諸条件を検索項目に入力し、競合・比較物件となる募集物件一覧を出すと、特定の条件では敷金・礼金が取れていたり、取れていなかったりという傾向がわかる。空室を解消するために、賃料値下げに先んじて初期費用の削減を行う方策が一般的な賃貸市場の特徴を利用した判断方法として簡易的であるが有効な手法といえる。
これらの手法を現地調査及び周辺不動産会社へのヒアリングと合わせ利用すると、より正確な市場把握をすることができる。

(2)賃貸需要を生む施設の有無
賃貸住宅の運営をする場合、そこに住むであろう入居者の見込みが立たないと成立しない。
満室時表面利回り20%の地方物件を買ったという投資家からの相談案件では、唯一の需要先であった近隣工場の移転に伴い事業の破たんを迎えた。彼は資本改善や賃料値下げといった様々な施策を検討していたが、肝心の需要が対象地域になければ効果は無いということを知ることになった。
立地の選定には、賃貸需要を生み出す施設と複数の代替需要の有無が重要。施設には駅や港、空港といった交通機関以外にも、官庁街、オフィス街、大学、工業団地、大規模商業施設、軍の基地などさまざまなものが考えられる。又、その施設がもつパフォーマンスにも注目すべきである。駅であれば一日の乗降客、工業団地であれば構成企業の産業の動態。大学も学生数の多寡や、人気度など、様々な要因が考えられる。
ここで必要なデータは、電鉄会社・企業・大学のホームページ、商工会議所のサイトなど。あるいは、マクロ的な指標であれば経産省のHPなどから調べることができる。

(3)年収と家賃のバランス
国交省の調査によると入居者が希望する家賃負担割合は年収の20%、また民間で行われた同様の調査では月収の30%程度の家賃負担が理想であるという結果が出ている。
全国の賃料を規準とした賃貸住宅市場の特徴を見ると、他地域より2割ほど高い東京周辺を除き、おおよそ5万円前後の賃料が単身者向け物件では需要が中心であるといえる。首都圏入居者意識調査(21C住環境研究会+リクルート社)では、入居者の8割は20~30代の独身社会人となっているが、同世代の年収がおよそ300万円前後という厚労省の調査結果を踏まえると300万円×20%=60万円・・・@5万円/月と計算することもできる。当該地域や想定入居者層の収入と物件賃料のバランスが取れているかという点にも着目すべきである。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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