猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

20㎡未満の物件はどうか?

TAS賃貸住宅市場レポート首都圏版2014年8月号をいただきました。

今月号の特集記事は、「市場競争力の低い20㎡未満の賃貸住宅(東京23区)」・・・気になります。

GTN(外国人専用保証会社グローバル・トラスト・ネットワーク)の方と先日お話しする機会がありましたが、外国人が好むのは、20㎡未満&古くていいから、場所が良くて安い部屋といっていました。

実感として日本人の低所得層も同様のニーズが近いと感じていますし、21C住環境研究会が行った首都圏入居者ニーズ調査でも、20㎡未満の部屋を借りた人の契約は、06年18.0% ⇒ 09年19.0% → 12年21.8%と実は増えています。

特に、東京23区内の場所のいいところであればこの傾向を顕著に感じます。

「面積・築年数」<「賃料・立地」という関係です。

では、TASレポートでは?

株式会社TAS(タス)はトヨタ資本の不動産評価会社で、アットホーム全国不動産情報ネットワークに公開された情報若しくは成約状況データを元に、筑波大学 不動産・空間計量研究室が分析・算出したデータを毎月発表しています。主な分析結果データは・・

1.空室率TVI(TAS Vacancy Index)
タスが開発した賃貸住宅の空室の指標です。
空室率TVIは、アットホーム全国不動産情報ネットワークに公開された情報若しくは成約状況を空室のサンプリング、募集建物の総戸数をストックのサンプリングとして下式で算出を行います。

なお、募集建物の総戸数は、①募集建物を階層別に分類、②国勢調査、住宅土地統計調査を用いて階層別の都道府県毎の平均戸数を算出し、両者を乗じることにより算出しています。
  TVI = 空室のサンプリング ÷ ストックのサンプリング =Σ募集戸数 ÷ Σ募集建物の総戸数
・・・つまり、募集中の物件がどの位の階数・規模なのかを総務省 住宅・土地統計調査等から類推して分母を決めているということです。

2.募集期間(Downtime)
成約した物件の平均募集期間を示します。アットホーム全国不動産情報ネットワークに公開された情報若しくは成約状況を用いて、下記の計算式で求められます。
募集期間  = Average(成約日 - 募集開始日)

・・・これは、アットホームに募集成約情報が登録された日と思われますので、実際は若干短くなるかもしれません。

3.更新確率・中途解約確率
更新確率は契約期間が2年として入居したテナントが契約更新を行う確率、中途解約確率は契約期間が2年として契約満了前にテナントが退去する確率を示します。アットホーム全国不動産情報ネットワークに公開された情報若しくは成約状況を用いて算出しています。成約した部屋が再び市場に現れる(募集が開始される)までの月数をカウントし、7~48ヶ月目を総数とし、7~22ヶ月目までに市場に現れた件数を中途解約した件数、27~48ヶ月目に現れた件数を契約更新をした件数としてそれぞれの確率を計算しています。
・・・一度募集にかかって決まった部屋を追跡調査するわけですね。ポータルサイトならではの情報力だと思います。

では、レポートではどんなことが書かれているか、整理すると・・・

1)2013年に流通した東京23区の単身者向け賃貸住宅(ワンルーム、1K)のうち、

・15㎡未満が全体の約3%
・15㎡~20㎡が同約5%
・20㎡~30㎡が同約83%
・30㎡以上が同約9%

⇒ほとんどが20~30㎡に集中していることがわかります。では、これより狭かったりする物件は厳しいのか?ということが知りたいですね。

2)賃貸住宅は、1戸当たりの月額賃料の地域相場に合わせて募集を行う傾向にあるため、ある程度㎡が小さくなると、㎡単価が急激に高くなる傾向にあります。 つまり㎡単価で比較すると、20㎡未満の賃貸住宅は割高になるケースが多くなります。 

⇒確かに、貸しやすい賃料帯ってありますから、そのゾーンの中で面積が狭くなると賃料単価が上がります。

• Aの賃料 55,000円÷14㎡(4.23坪)=@13,000円
• Bの賃料 75,000円÷25㎡(7.56坪)=@ 9,920円

単価は高いけど、グロスが安いから「A」の方がリーシングはラクかなぁ・・

もちろん、その面積じゃ借りる人なんかいないよ!という地域では無理ですし、やめておいた方が良いでしょう。でも、その面積で充分!という地域はあります。だからこそ、平成初頭から各地で施行されはじめたワンルーム規制がかかる前には、20㎡未満の物件が大量に供給され、それが規制の原因になったわけです。

3)東京23区において、20㎡未満の賃貸住宅の約9割は築10年以上であり、新規供給の著しい単身者向け賃貸住宅市場において、老朽化により市場競争力が低くなった物件が多くなっています。 

⇒ワンルーム規制後は、20㎡未満の部屋を新規に大量供給できなくなりました(規模で規制がかかるので)。
いま新築供給されている大規模物件はすべて20~25㎡以上。新築の20㎡未満は4~10戸程度の小規模なものばかりで、流通しているのはほぼ築20年以上のワンルーム規制前の物件。
しかもそのほとんどが、適正な資本改善が行われていない(長期修繕計画を立てている賃貸物件オーナーは全体の6%にも満たないという国交省の調査結果もあります・・・・)

4) 図-4は、東京23区の面積別更新確率の推移を示しています。 
更新確率の値が低いということは、テナントが退出する可能性が高く、空室や募集費用が発生するリスクが高いことを示しています。 
東京23区においては、20㎡以上の賃貸住宅の更新確率は概ね45%ですが、20㎡未満の賃貸住宅の更新確率は約35%と、とびぬけて低い値となっています。 仮に残りの65%の半分が毎年入れ替わるとすると、20㎡未満の賃貸住宅の募集期間は2014年3月時点で約3.0ヶ月ですので(図-5)、空室損失及びテナント募集費用として、満室想定年間収入の約11%が毀損することになります。
 空室率TVIにおいても、20㎡未満の物件の空室率は際立って高い値となっており(図-6)、厳しい市場環境にさらされていることがわかります。 東京23区の20㎡未満の新規物件供給は、1991年をピークに(注:平成3年。ワンルーム規制は前年の平成2年頃から各地で制定されはじめました)減少傾向にありますが、それでも新規単身者向け物件の10%程度を占めています。

・20㎡以上の賃貸住宅の更新確率45%
・20㎡未満の賃貸住宅の更新確率は約35%
・20㎡以上の賃貸住宅の募集期間は2014年3月時点で約2.8カ月
・20㎡未満の賃貸住宅の募集期間は2014年3月時点で約3.0カ月

・・・と、いうことは。「半分が毎年入れ替わるとすると」という仮定の条件ではなく上記のデータから計算してみると

20㎡以上の賃貸住宅の稼働空室率は、

1-更新確率45%=解約率55%
1/55%=平均居住年数1.82年(21.8か月)
1-21.8カ月/(21.8カ月+募集期間2.8カ月)×100
=稼働空室率・・・11.38%

20㎡未満の賃貸住宅の稼働空室率は、

1-更新確率35%=解約率65%
1/65%=平均居住年数1.54年(18.5か月)
1-18.5カ月/(18.5カ月+募集期間3.0カ月)×100
=稼働空室率・・・13.95%

この空室率の差 2.57%を、補える賃料単価の格差があれば投資としては悪くない選択肢ということもできます。

今回の分析からは、「20㎡未満の物件は相対的に、立地や運営、築年等で不利なものが多い」ということ を示しています。

従って、

(1)立地が良い場所で新築供給された20㎡未満のワンルーム規制にかからない小規模物件を取得、あるいは建築。
(2)運営がうまくいっていないで稼働率が悪くなってしまっている20㎡未満の中古物件(大抵は安く売りに出ます)を再生 。

ということができれば、良い投資になる可能性が高いということをこのレポートから読みとりました。

また、空室率も、「相対的に、立地や運営、築年等で不利なものが多い20㎡未満の物件」の平均値ですから、逆に言えば「立地や運営が良くて、新築や築年を感じさせない資本改善が行われている物件」であれば13.95%なんていうことにはならないはずです。

ちなみに、日管協短観(2014年7月)では、首都圏の一般(学生除く)単身者の平均居住年数は、2年から6年の間に95.3%が分布しています。

仮に、居住期間18.5か月→36か月、募集期間3か月→2か月という改善がされれば、空室率は、1-36カ月/(36カ月+2か月)×100=5.26%ということです。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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