猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

多様化する不動産投資の選び方

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「太陽光 偏重是正図る~価格引き下げ 地熱、風力据え置き~」(2015年2月26日読売新聞)・・・地熱、風力は個人投資家にはなかなか参入が難しいですから、狙い撃ちということでしょう。「向かい風は、風力発電だけにしてくれ!」と、ぼやきたくなってしまう人は多いかもしれませんね。

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2015年2月21日(土)、ベルサール汐留で開催されたHOME’S不動産投資フェアで「多様化する不動産投資の選び方」というテーマで講演をさせていただきました。

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開場すぐの早い時間の出番でしたが、用意していただいた大きい方の会場も立見の出る大盛況。みなさん、興味はあるけどあの投資法どうなんだろう???というところが聞きたいんだと思います。太陽光発電についてももちろん取り上げさせていただきました。

講演の前半は、不動産投資に興味を持ち始めて勉強を始めると、どんな感じで理解が進むかという解説。なぜわざわざ、そんな話から入るかというと、一見投資として魅力的に見えるものが実はそうでもなかったり、逆に、そんな物件買ってどうすんの?と見える投資が実はとても儲かったりと、視点が増えることによって多くの事が理解できるようになるという部分が往々として不動産投資にはあるからです。

「古い物件ばかり買っていて、この人はいまごろデッドクロスになってお金が残っていないはずだ」なんて中傷されたこともありますが、投資はキャッシュフローだけではありません。多分この方は、よく勉強されている方だと思うのですが、不動産投資の理解にはまだまだ先があるということです。

お金の入りかたは、どんな投資でも3つのパターンしかありません。

1.インカムゲイン
2.キャピタルゲイン
3.ファイナンス

インカムゲインはダメでも、キャピタルゲインで儲かる投資もありますし、キャピタルロスが出ても、インカムゲインで十分に儲けられる投資もあります。

例えば、「開発型案件」であれば、

初年度 素地を買って持ち出し
2年目 造成工事をして持ち出し
3年目 インフラを整えて持ち出し
4年目 建築をして持ち出し

と、土地を買ってもお金が出るばかりで「不動産投資」になっていません。この方から見たら、鼻で笑われてしまうかもしれませんね。
でも、
5年目 分譲して4年分の持ち出しの2倍の売却利益・・・というのが、普通にあるのが「不動産投資」なのです。もちろん、この持ち出しができないレベルの投資をしてしまうと破綻しますよ。器というか、リスク許容度というか、バランスが大切だということは忘れないでください。

理解のレベルを順に見ていくとこんな感じになると思います。

第1段階 表面利回りで投資を理解する(満室想定年間賃料/物件価格)
第2段階 キャップレートとFCR(営業純利益NOI/物件価格(あるいは物件価格+購入時経費))
第3段階 税引き後キャッシュフローとデッドクロス、レバレッジとROI・・・・多分この方はここの段階(間違っていたらごめんなさい)
第4段階 内部収益率(IRR)と正味現在価値(NPV)
第5段階 修正IRRと資本蓄積

古い物件は減価償却できる建物価格が低いですし、期間も短いのが欠点です。融資も短めになりますから、同じ借入でも返済額が高くキャッシュフローはあまり残りません。さらに、あちこち壊れて修繕だってかかります。

元金返済部分が多く、経費化できる金利も少ないですから、家賃収入から空室損と運営費を差し引いた営業純利益(NOI)、そこから返済負担率の高い短めの期間のローン返済をしたら、それこそデッドクロスになって税引き後のキャッシュフローはマイナスになります。

でも、融資期間が短いという事はローンが減るのが早いという事でもありますから、「出口」で手元に残る現金が多いという事でもあります。

さらに、古い物件はそもそも土地値だったり家賃がそれ以上下がらなかったりということで、新しい物件に比べると値下がりしにくい場合も多いですし、リノベなどで掛けたコスト以上の価値を上げることも可能です。(「だから築古物件がいい!」ということをいっているわけではありません。新築には新築の、築古には築古の良さ悪さがあるということを言いたいわけです。私も、個人的には築古も新築も、木造もRCも、区分も1棟も、レジも店舗も買って運営しています)

計算してみましょう。

価格3,000万円の築古物件 表面利回り10% 空室損5%※・運営費20%(=NOI率75%)と仮定すれば、営業純利益(NOI)は225万円です。

(※全国賃貸住宅NOI率調査では、古い物件の方が空室率が低いというケースが少なからず見受けられました。ワンルーム規制がある地域で賃料単価が高いエリア(23区など)だと、家賃の高い築浅物件が供給過剰、規制前の築古物件は狭いかわりに家賃が安くニーズにマッチしているのに新規供給が困難といったことが考えられます)

頭金を10%、諸費用を7%とすれば、300万円+210万円=510万円の自己資金を入れて2700万円の借入をして投資ということです。年利2.0%、期間15年であれば年間返済額(ADS)は約209万円。

税引前キャッシュフローはNOI225万円-ADS209万円=BTCF16万円と、カツカツながら一応プラスのキャッシュフローです。

では、税金は?

所得税・住民税の実効税率が30%の投資家と仮定しましょう。建物価格は、価格の1割の300万円で築22年超の木造とします。

   NOI      225万円
-)減価償却    75万円
-)金利       52万円
-)青色申告控除 10万円
=)課税所得    88万円

実効税率30%であれば、88万円×30%=26.4万円の税金ですから、BTCF16万円だと10.4万円の赤字です。この状態がデッドクロス状態ということですね。

さらに、5年目には減価償却が終了していますし、金利は40万円位になっていますから、

   NOI      225万円
-)減価償却     0万円
-)金利       40万円
-)青色申告控除 10万円
=)課税所得   175万円

・・・税金は52.5万円になって、税引後の赤字は36.5万円

ちなみに返済の中で金利が占める額と、税引後キャッシュフロー(ATCF)を計算すると・・

 支払い金利    ・・・ATCF
1年目52.6万円   ・・・-10.2
2年目49.4万円   ・・・-11.2
3年目46.2万円   ・・・-12.1
4年目42.9万円   ・・・-13.1
5年目39.6万円   ・・・-36.6

5年間で、最初に入れた自己資金510万円と赤字総額73.2万円で「約583万円の持ち出し」ということです。キャッシュフローで見たら、投資になっていません。

では、5年後に購入価格の3000万円の90%、2700万円で売れたとしたら???
さらに300万円の値下がりですから踏んだり蹴ったり???

売却時の経費を約4%とすると108万円。譲渡税は、減価償却分と売却経費を考えると非課税です。

そして、2700万円の借入の残債は1888万円。なにしろ、15年返済の1/3の期間経過ですから減り方が違います。

と、いうことは・・・売却価格2700万円-売却経費108万円-残債1888万円=「手取り704万円」。5年で121万円の利益です。

正確には、購入時の経費210万円は経費で落としたり、減価償却したりできますからこれを仮に4年平均(年間52.5万)で割り付けると、

 支払い金利    ・・・ATCF   
1年目52.6万円   ・・・-10.2 →+5.3
2年目49.4万円   ・・・-11.2 →+4.6
3年目46.2万円   ・・・-12.1 →+3.6
4年目42.9万円   ・・・-13.1 →+2.6
5年目39.6万円   ・・・-36.6 →-36.6

となります。最初に入れた自己資金と、売却したときの手取りを反映させると・・・

0年目   -510万円
1年目   +5.3万円
2年目   +4.6万円
3年目   +3.6万円
4年目   +2.6万円
5年目   -36.6万円+704万円

IRR=6.12%

投資家の割引率=5%であれば、NPV+27.4万円と、投資として成立するということがわかります。

講演では、
1、駐車場・コインパーキング
2、太陽光発電
3、借地・底地
4、再建築不可
5、土地+新築
6、賃貸併用住宅
7、戸建賃貸
8、シェアハウス
9、商業店舗
10、新築と中古
11、一棟と区分
12、木造とRC
13、都心と地方・・・について駆け足で解説させていただきました。

講演後、フェア受付の横で第3回全国賃貸住宅NOI率調査報告書に第2回の報告書と去年のHOME’S講演DVDとIREM-JAPANのDVDをセットにした(1,000円!)ものの販売をしていたIREM-JAPANブースをのぞいたり

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会場内をうろうろしたりしていました。

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でも、何か物足りないなぁ・・・と思っていたら、この方が遅れて登場!

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ホームズ君w・・・去年、名刺をもらいました。

この内容をたっぷり2時間かけて解説する「不動産投資の正体<改訂版>出版記念セミナー」の詳細は㈱シー・エフ・ネッツ ホームページから http://www.cfnets.co.jp/

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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