「ここ数年物件価格が高くなっていて、投資妙味が薄くなっているのでは?」という疑問に対する私なりの見解を・・・
<< 今回のポイント >>_________________________
・5年前に比べると利回りが下がって(物件価格が高くなって)いる
・融資条件は金利・年数・掛目ともに良くなっている
・計算すると、実は現在の方が良い投資になる可能性が高い
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まずは、「楽待」のデータから。
2011年6月と2016年5月の表面利回りの変化をみると、新築は0.79%の低下(価格上昇)している一方、築11年~20年は3.37%と、4倍以上の利回り低下をしていて、その利回り差はほぼ無くなっているということがわかります。常識的に考えると疑問がわく調査結果です。考えられる原因は、(1)新築の売主は業者であり、市場に受け入れられる=相場観をもった価格設定がされる(2)一方、中古の売主の中には高値で売れれば売るし、売れなければ保有を続けるという物件が相当数含まれている・・・という事ではないかと個人的には受け止めています。
では、5年前と現在の新築一棟投資はどう変わったかという事を数値分析してみましょう。
設定条件は、
家賃:6万円/戸
世帯数:8戸
空室率:5%
運営費:家賃の15%相当
購入経費:物件価格の7%相当
そして、
表面利回り:5年前7.37% → 現在6.58%(楽待調査による)
ローン金利(年):5年前3.5% → 現在1.5%
融資掛目(LTV):5年前90% → 現在95%
融資期間:5年前30年 → 現在35年
5年前 現在
• 価格 7820万円 → 8750万円
• 経費 550万円 → 610万円
• 自己資金 1330万円 → 950万円
• 営業純利益 460万円 → 460万円
• ローン返済 380万円 → 310万円
• 税引前CF 80万円 → 150万円
• 自己資金利回り 6.0% → 15.8%
• FCR 5.49% → 4.91%
• K% 5.39% → 3.67%
• YG 0.1% → 1.24%
価格は930万円上がっていますが、用意する自己資金は380万円少なくて済み、税引前キャッシュフローは約2倍(年間70万円増加)。6.0%だった自己資金利回り(CCR)は約2.6倍の15.8%・・・ということで、実は5年前よりも優れた投資になる可能性が高くなっています。
もちろん、楽待のデータは平均値ですから、値ごろ感のある中古物件もありますし、投資として合わない新築だってたくさんあります。
要は、売値や表面利回りだけで投資判断はできないし、融資条件は投資内容に大きな影響を与えるということです。また、金融機関から「融資年数が短い」、「掛目が低い」といったことであまり良くない融資条件を提示された場合、イコール「投資不適格」かというと、それは逆に、借入残高の減少速度やそれに伴う売却時の手取り現金の増加といった部分で反映されますので、内部収益率(IRR)を使った投資判断では、投資パフォーマンスにはそんなに差が出ず、やはり良い投資になるということも少なからずあります。
投資分析や投資判断はなかなか奥が深いのです。