猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

繁忙期なのに空室が埋まらない皆さんへ

空室対策の答えを持っているのは、物件周辺や最寄駅で実際に客付業務をしている業者であることが多いので、今でも現地に行ったついでに立ち寄ってヒアリングをします。
事件は現場で起こっているのです。

不動産の世界にはもう30年以上いますし、本を書いたりあちこちで講演をする機会も多いですが、センセイ扱いや大御所扱いされ調子に乗って慢心することを、そして現場感覚を失うことを心から恐れます。

大所高所でマクロ経済の持論についてご高説垂れるのももちろん良いのですが、いつしか本も読まない、現場も見ない、足で周らないで数十年前の成功体験を自慢げに振りかざして・・・となってしまい、しかもそれを指摘してくれる人が誰もいないようになってしまっては裸の王様もいいところ。

自分への戒めです・・・

この繁忙期に半分空室になっていて決まる気配がないという築古アパートのオーナーから売却相談をいただきまして、現地で打合せをしてきました。

現状のまま売却する場合と、問題を解決し満室にしてから売却する場合では、当然市場に受け入れられる利回りは変わります。

例えば、満室想定賃料500万円の物件で前者は9%、後者は8%といった場合、それぞれ売却価格は、

500万円÷9%=5550万円
500万円÷8%=6250万円

ということで、700万円の差が出るということになります。

問題を取り除くためのコストがこれを下回ればそのお金を掛ける価値が十分にあるという事になります。

また、コストを掛けても空室改善に効果がなければそれはあまりいい対策とは言えないという事になります。

今回の物件では、前オーナーがシロウトDIYで下地処理なしにペンキを塗った金属製の共用階段の塗膜がベロベロに剥がれてしまってスラム感を醸し出していましたので、これをまず解決する必要があると判断しました。

また、外回りでは土間コンクリートや階段の踏面がかなり汚れていましたので、低予算でできる高圧洗浄をお勧めしました。

室内は、やはり前オーナーの手作り感満載の棚や造作を撤去して、独特のセンスの壁紙の張り替えを。

そして、本来付いているべき設備の設置や、入居者に支持をえられるであろう設備の追加に関する助言をさせていただきました。

基本的には「清潔感」と「住み易さ」に留意しながら改善点を見つけていきます。

自分自身、築古物件のオーナーでもありますし、家事も積極的にやるほうなのでそのあたりの感覚も人並み以上には持っているかなとは思いますが、それも先入観。その地域や顧客層にぴったりマッチしているかを検証する必要があります。

そのための業者まわりというわけです。

今回はオーナーも一緒に最寄駅の不動産会社の訪問に付き合ってもらいました。

現在管理を依頼しているFC系の大手管理会社が、「〇万円にしないと決まりません」と周辺相場から見ても激安な家賃への値下げばかり提案してくるし、現地案内は何件か入っている様子なのに、決まらない理由については「ほかの物件に比べて・・・」となんだか煮え切らないので不信感が芽生えているということで、その会社にも。

そもそも、管理会社自体が問題ということもあり得ますから。

ヒアリングは基本的には、地元の古い業者とFC系の店舗の両方をまわります。

募集方法や、普段の集客、ターゲットとなる顧客層などが被らない場合が多いので取りこぼしを防げます。

ここでは入居者を実際に付けてくれる管理会社(PM)・リーシング会社から、いかに本音を聞き出せるかがキモです。

業者同士という気安さもありますが、そのあたりは経験とセンスとキャラクターでしょうか。

また、自分の会社が投資家の代理人としてのAM(アセットマネージメント)に特化していて、自社で管理(PM)を行わず、最適なPMを選定することも業務の一環としているという点も、相手にとっては競合とならないため無用な警戒心を持たれずに済みます。

どちらかというと、この物件は低額物件のため低所得者層にはハードルが高そうな大手ではなく、地元業者系の方が顧客を持っている可能性もあります。

「昭和25年創業」と金文字で書かれたガラスドアを開け、ヒマそうにしていた店長さんと色々お話をした結果、

・ウチはFC系で相手にしてもらえなかった人が時々ふらっと立ち寄る位かな。普通だと審査が通らないような人ばっかりだよ。
・〇万円なら決まるんじゃないかな。(ウチにはお客さんいないから)レインズとアットホームに出すだけだけど

・・・どうやらあまり頼りにならなそうです。

そして、いよいよ現管理会社の大手FC店舗へ。

「○万円でないと決まりませんよ」と提案したという担当者とひざを交えて話した結果、”現状で今すぐ入居者を付けるなら”という前提であることが判明。

いま、現地を見てきてこことこことここを改善しようと思っているんだけど、それだったら?

と、水を向けると一気に目の色が変わりました。

兎角お金のかかる事は、オーナーにいい顔をされませんので、管理会社の人はなかなか提案しづらいのです。

担当者のハートを掴み、空気が変わった勢いで、「ここにオーナーがいないと思って正直に、これやってくれればいいのになぁというのがあったら教えて」。

出てくる出てくる。

「○○さん、いい提案だね!サスガ」

担当者と打ち解ける瞬間です。

あとは、それらに優先順位をつけておおよその金額をその場で出して、段取りをつけるという流れで方向性が見えてきます。

「ADはこのままで大丈夫?もう1か月位出さないとダメとかない?」

「それは大丈夫です」

さらに、相手が言い出しにくいことをこちらから。

ヤブヘビにならないかって?

大丈夫です。本当は必要なのに相手が言いづらくてタイミングを失うよりもよっぽどいいですし、嘘は複数の業者へのヒアリングで明らかになります。

不動産投資(=不動産経営)をされている皆さんも、それをお手伝いする私たちも「虚業」ではなく「実業」の世界で生きています。

地に足の着いた、人間臭く泥臭いところに答えがあります。ゆめゆめお忘れになりませんように。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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