猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

かぼちゃの馬車問題の処方箋

かぼちゃの馬車の賃料未払いで問題になっていた㈱スマートデイズが民事再生法適用申請をして監督命令を受けたという記事が帝国データバンクの倒産速報でまわってきました。

http://www.tdb-news.com/bankrupt_detail.html?ID=63505

負債総額約60億3,500万円のうち約23億円が物件オーナー約675名に対するものとありますので、ひとりあたり約340万円。

このコラムを読まれている皆さんの中にも、被害に遭われて「もうダメだ」と絶望されている方もいらっしゃるかもしれませんが、自己破産はその後の人生に大きな影響を与えますので、なんとかリカバーしたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。

もしも私だったらこうするかなという私見を参考まで。

賃料支払停止直後から被害者の会が組織され、今回の件で融資を積極的に出していたスルガ銀行との交渉もすでに始まっています。https://s-higai.com/?information=stopsruga2

被害者の会にはすぐに参加して被害回復の可能性を追求し、最新動向にアンテナを張ります。

ちなみに被害者の会のHPに出ていたスルガ銀行横浜東口支店支店長との交渉結果(破たん前)はこんな風に情報共有されています。

1,スマートデイズが賃料を払わない間、スルガ銀行へ返済しなくても、ブラックリストに載せず、法的手段(差押え等)も執らない。
2,それがいつまでか、まだ決まっていない。
3,オーナーが(販売会社経由で)スルガ銀行に提出した与信用資料は、その一切という(包括的な書き方で)開示を求められれば開示する。
4,遅延損害金が発生するかどうかは、確認の上、追って連絡する.
5,スルガ銀行がサブリース契約と無関係であるという書面に署名押印することは、現在は求めていない。
6,スルガ銀行からのアンケートに回答しなくても、交渉は可能である。

最終的には、スルガ銀行と㈱スマートデイズが共謀関係にあった事が証明できなければ責任を追及するのは難しいと思いますが、もともと評価を大きく上回る融資をしている案件ですから、そもそも銀行サイドも差し押さえ・競売ということは債権回収という側面で見ればあまり得策ではないという判断をする可能性は大いにあると思います。

そして、自己破産以外に取るべき途は1.損切りして売却、2.事業の立て直しのいずれかになります。

1.損切りして売却
市場価格よりも高い金額で購入していて、しかもフルローン・オーバーローンともなれば、損切りに必要な現金(=売却価格ー売却経費(売却価格の3%強)ーローン残高)を用意できるかどうかがカギになります。やるべきことは、

①いくらで売れるかの査定
②損切りに必要な金額の計算
③金融機関に債権の差額を放棄してもらうよう交渉
④不調の場合、抵当権の抹消とその後の差額分の返済方法について交渉。

損切りのための資金は、預貯金のほかに市場価値が上がったり、ローン返済が進んだことによって売却に伴う手取り金の大きい別の保有物件の売却も合わせて検討します。

2.事業の立て直し
ポイントは、(1)支払いの軽減と(2)運営の改善です。

1)支払いの軽減
①元本返済免除
金利のみを返済して出口でまとめて元本返済というファンドなどが使うバルーンというローンの返済方法がありますので、これに準じた方法を使うことができればローン返済額は減ります。
仮に借入額1億円・年利4.5%・返済期間30年・元利均等返済の場合、返済額は月額506,685円(年額6,080,223円)ですが、金利のみであれば同じく返済額は月額372,250円(年額4,466,996円)となり、月額134,435円(年額1,613,220円)の支払い軽減となります。
ただし、元本はいつまでたっても減らないので債務超過の状態がいつまでも続くことになります。将来のインフレに期待するのみです。

②金利の引き下げ
先ほどの例をもとに、金利が4.5%→2.5%とできた場合の返済額は月額506,685円→395,121円(年額6,080,223円→4,741,452円)となり、月額111,564円(年額1,338,768円)の支払い軽減となります。

③返済期間の延長(リスケ)
同様に、返済期間を30年→35年とできた場合の返済額は月額506,685円→473,257円(年額6,080,223円→5,679,084円)となり、月額33,428円(年額401,136円)の支払い軽減となります。
平成バブルが崩壊した時に多くの債権がサービサーに流れましたが、リスケで50年返済とか60年返済とかいった事案も少なからずありました。

④金利の引き下げ×返済期間の延長
②と③を合わせて適用できた場合の返済額は月額506,685円→357,495円(年額6,080,223円→4,289,940円)となり、月額149,190円(年額1,790,280円)の支払い軽減となります。

⑤一部繰上げ償還
K%(ローンコンスタント)という分析指標があります。計算方法は、

年間返済額(ADS)÷ローン残高(LB)=K%

年利4.5% 期間30年・・・・・・K%=6.08%
年利2.5% 期間30年(②)・・K%=4.74%
年利4.5% 期間35年(③)・・K%=5.68%
年利2.5% 期間35年(④)・・K%=4.29%

K%=6.08%の借り入れを1000万円繰り上げ返済すると、年間60万8,000円の返済額が減るという意味でもあります。

K%は金利が高いほど、また融資期間が短いほど大きくなりますので、諸費用分や担保不足分を補う部分として年利7%期間10年程度のフリーローンを組んでいる場合などは繰り上げ返済の効果は大きくなります(K%=13.93%)。

(2)運営の改善
すでに、満室やそれに近い運営ができている物件であれば、自主管理に切り替えるなり管理会社(今回の件で管理受託を狙っている業者はたくさんいます)を探してそこに頼むかすればいいと思います。ただし、「借上げ賃料>相場賃料」という逆ザヤになっている物件もかなりありそうですから、収入が減ることも覚悟しておく必要があります。
問題は、空室だらけの物件。

全空であればいっそのこと解体して更地にして売却・・・と考える方もいるかもしれませんが、全空室のアパートとして売るよりも間違いなく安くなってしまいますので、その選択肢はないと思います。その敷地が隣接地の価値を大きく高めるような(整形地になる・容積率超過の解消や接道要件を満たすなど適法性の回復ができる等)場合であれば別ですが。
と、すれば満室にすべく何らかの手立てを打つということになります。
空室対策のポイントを整理すると「5つのP」に要約されます。

Place(立地)
Product(物件そのもの)
Price(賃料や初期費用)
Promotion(広告活動)
Partner(管理会社などの協力者)

共用スペースが無くてシェアハウスとして募集ができないならば、いくつかの部屋をつなげて作ることもできます。
7㎡では狭すぎて需要が無いのであれば、2部屋を合わせて水回りを造作し14㎡の部屋にすることもできます。
募集賃料や初期費用の見直しや、入居ターゲット層や募集するチャネルを変えたりはすぐにでも取り組めるはずです。

できることはいくらでもあります。

どうか打ちのめされた気持ちのまま絶望して投げやりにならないでもうひと頑張りしてみてください。手を差し伸べてくれる協力者は絶対にいるはずですし、動けば何かが必ず変わります。

私からの応援の気持ちを込めて最後にこちらの言葉を贈ります。
「人生の意味を見つけるための逆説の10カ条」
1.人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。
2.何か良いことをすれば、隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。それでもなお、良いことをしなさい。
3.成功すれば、うその友達と本物の敵を得ることになる。それでもなお、成功しなさい。
4.今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。それでもなお、良いことをしなさい。
5.正直で素直なあり方はあなたを無防備にするだろう。それでもなお、正直で素直なあなたでいなさい。
6.最大の考えをもった最も大きな男女は、最小の心をもった最も小さな男女によって打ち落とされるかもしれない。それでもなお、大きな考えをもちなさい。
7.人は弱者をひいきにはするが、勝者の後にしかついていかない。それでもなお、弱者のために戦いなさい。
8.何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。それでもなお、築きあげなさい。
9.人が本当に助けを必要としていても、実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。それでもなお、人を助けなさい。
10.世界のために最善を尽くしても、その見返りにひどい仕打ちを受けるかもしれない。それでもなお、世界のために最善をつくしなさい。
   ケント・M・キース

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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