猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

物件が被災した場合の投資判断

この奇観・・・背筋が寒くなるような恐ろしい写真です。

丸一日が経過して、北海道内のさまざまな様子が伝えられています。皆様、何卒ご無事で。

札幌市内も大変な状態のようです。道路の破断に建物の倒壊、不同沈下・・・

札幌市清田区といえば、かなりの数の賃貸物件が流通しているエリアでもあります。

物件が被災した場合に、どんな投資判断をするかということを参考まで。

軽微な被害で済めば、まだいいのですが致命的な被害を受けた場合は
1.更地にして売却する
2.コストをかけて復旧させる
3.解体して建てなおす
・・・という判断を迫られます。

更地にして売却した場合、更地価格から解体費用と売却コストとローン残と譲渡所得税を差し引いて手取り額が出ます。

被災直後となるとなかなかそこで土地を買おうという人は余程優れた立地でない限りはしばらくいないか、かなり買いたたかれる可能性が高くなるかもしれませんが、いずれにしてもそこを更地にして売った場合に手元に残るであろう現金が「投資基礎」という基準になるお金になります。

復旧するにしても、建替えるにしてもその場所で新たに投資を再スタートさせるうえで、本来更地で売っていれば手に入ったはずの現金を、現金化せずにその場所に再投資するわけですから、「投資基礎」=「新たな投資の自己資金」ということになるわけです。

建物自体は大きな損傷はしていなくても、不同沈下(建物が沈んで傾いている状態)になっている建物はニュース画像からかなりの数が確認できます。

この場合、建物下部の地盤面下を補強して建物を戻すという工法を採用します。
「不同沈下 対策」と検索するといくつも専門業者のHPを探すことができます。



(注:検索して出てきたものをご紹介しているだけで、これらの業者がいいか悪いかはわかりませんし、別におすすめしているわけでもありません)

工法はいくつかありますが、30坪程度の木造2階建てで200万円~800万円というのが相場で、この会社で進めているダブルロック工法だと300万円程度ということですね。

仮に、18㎡(約5.5坪)のワンルームが12世帯という物件であれば延べ床面積は約66坪で650万円前後のコストで不同沈下状態を回復できるということです。不同沈下以外の細かな修繕を含めて復旧コストが1000万円かかり、売却手取りの「投資基礎が」仮に500万円とすれば、新たに始める投資は1500万円の投資という事になります。

18㎡のワンルームは清田区では最近は作られておらず築30年近いものがほとんどですが、人気がないようで家賃は2万円以下のものも結構見受けられます。賃料坪単価とすれば2,700円程度にしかなりません。

満室想定賃料を1.5万円×12戸×12か月=216万円。

空室率30%、運営費30%(募集に苦戦する物件で賃料単価が低いと相対的に運営費率が高くなります)と仮定すると、満室想定賃料216万円×(1-(30%+30%))=営業純利益(NOI)86万円。

表面利回りは、満室想定賃料216万円÷投資総額1500万円=14.4%ですが、
ネット利回りは、営業純利益(NOI)86万円÷投資総額1500万円=5.7%ということになります。

建替えの場合は、同じ間取りにする必要もありませんので、市場性があって投資効率のいいものを選択することになります。

清田区では、どうやらワンルームよりも1LDKや2LDKの方が市場性はありそうです。

面積は40~60㎡前後、

賃料は、4万円台から6万円台。

調べると、新築アパートは33㎡(10坪)程度の1LDKで5.5万円(5,500円/坪)、57㎡(17坪)程度の2LDKで7.5万円(4,400円/坪)が相場のようです。

例えば、既存の18㎡ワンルーム12戸のこの物件を、36㎡の1LDK×6戸に建替えた場合を想定すると、満室想定賃料は5.5万円×6戸×12か月=396万円。

空室損を20%→5%、運営費を30%→15%と想定すると、営業純利益(NOI)は396万円×(1-(5%+15%))=317万円ということになります。

仮に、この65坪ちょっとの建物を坪単価60万円で建てられるとすれば、約3900万円が建築コストということになります(1部屋あたり約650万円)。投資基礎の500万円を加えると4400万円が投資総額という事です。

表面利回りは、満室想定賃料396万円÷投資総額4400万円=9.00%
ネット利回りは、営業純利益(NOI)317万円÷投資総額4400万円=7.2%

1000万円掛けて改修した場合のネット利回りは先ほどの計算で5.7%となっていますので、比較すると建て替えのほうに分があるということがわかります。

当然、きちんと地震保険に加入していて改修コストや、建築コストの何割かがが出るとかすれば、投資総額は下がりますので相対的に投資利回りも上がります。

大切な保有物件が被災して茫然自失の方も少なからずいらっしゃると思いますが、リカバリーもできますし、場合によっては投資が改善することもありますのでぜひお気持ちを強く持って頑張っていただきたいと切に願います。

そして、今回被害に遭われなかった地域で投資をされている皆さんも、いつどこが被災地になるかわかりませんので、地震保険の加入も含め、万一の事態に備えておくことをお勧めします。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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