猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

スルガ銀行第三者委員会調査報告書

スルガ銀行第三者委員会調査報告書(2018年9月7日)

330ページに及ぶボリュームです。

メモを取りつつ一心不乱に読み進めていたら、あっというまに夜中の3時過ぎ・・・
池井戸潤もきっと今頃この報告書を読み終わって、半沢直樹か花咲舞のシリーズ最新作を書き始めたことでしょう。

そもそも違う人物の名前が表示されたネットバンキングの残高画面を送付したあとで、同じ口座番号で人物名を修正したものを送付・・・ってホントかね!?

「聖域化」か・・・

可哀そうに・・・

強烈な個性ゆえ、営業トップの麻生氏ひとりが元凶になっている論調が目立つけど本質は根深いんだなぁ・・・

米山社長、べらんめぇ口調だなぁ・・・

いろいろな気づき(?)があります。

折角なので、第三者委員会が作成した17ページにわたる要約版とは別に要約版を作ってみましたのでご参考まで。

スルガ銀行第三者委員会調査報告書 2018年9月7日

ピーク時(2018.3決算)粗利1151億円の銀行が貸倒引当金約718億円という事態を招いた原因はなにか・・・生々しい報告書をもとに第三者委員会の作成した17ページにわたる要約版とは別に要約版を作ってみました。

報告書の構成
1概要、2前提となる事実、3発生した問題、4問題の原因、5関係者の責任、6今後の改善策

組織の問題の本質は・・・
「事なかれ主義で黙認し見ないようにしている無関心な経営陣」と、「現場を知らない経営陣から与えられた理不尽な目標数字をがむしゃらにこなしていくうちに聖域化されガバナンスの効かなくなった営業チーム」

キーマンとなる麻生Co-COO(最高執行責任者補といった意味か?)指揮下の営業精鋭部隊は・・・
・「特別推進チーム(特推)」首都圏営業部直轄の営業部隊
・「パーソナルバンク」2014~16年の融資実行額はスルガ銀行全体の80%超(!)
・「横浜東口支店(ローン専門店舗、旧ドリームプラザ横浜)」のセンター長は2011年大宮のセンター長として初めてシェアハウス融資に取り組んだ人物。スマートライフ案件の取り扱いは全981件のうち865件(88%)
・営業部門への権限集中と審査部の無力化
審査部「このレントロールおかしいし、そんなに預金ないだろ」
営 業「ふざけるな!覚えてろ!」
審査部「いや、おかしいって」
所属長「うるさい!」
麻生氏「そうだ、だまって出せ!案件は全部通せ!」
審査部「・・・」
審査部長「やっぱりおかしいからチェックさせてもらおうか」
麻生氏「なにをコソコソやってるんだ!現場を信じられないのか?」
かくして、エビデンスは審査部に回さず営業部でチェックすればOKという新ルールが制定され、「パーソナルバンク(=麻生氏)事前協議済み」というお墨付きが審査書類に記入されていれば延滞・貸し倒れ履歴ありの事故者でさえ営業から怒鳴られ承認という文化に。

スルガ銀行のシェアハウス取扱い新基準(2016年5月27日~)
・エリア:原則東京22区(江戸川区除く)に限定
・評 価:上記エリアであれば利回り評価を上限として採用。エリア外は実需に準ずる。
・金 利:3.5%を下限とする
・自己資金:物件価格の10%(原本確認の明確な規定ナシ。営業部門で確認すればOK=審査部には提出しない!?)
・返済原資:世帯年収の40%および満室想定賃料収入の70%
・年 収:最低800万円以上(1000万円以下の場合、融資上限1億円)
・入居状況確認:レントロールチェック及び現地確認(1億円以上:部長クラス、1億円未満:所属長クラス)
・取扱い業者(=チャネル):新規は不可と厳しいが、既取引先は“不良情報※”があっても甘い
※不良情報:「書類偽造」「顧客属性の偽り」「金額虚偽・物件瑕疵」「チャネル先所在不審」と分類され把握されていたが、審査部が不法行為に気づく前に業者に是正を促すかあるいは審査部に気づかれないような偽装を教唆する。
偽装の事例
フォレンジック調査(抜き打ちでPC・スマホを確保しメール・ラインなどの履歴を押さえる調査)やヒアリング、アンケートによる事例収集

1. 通帳その他の自己資金資料の偽装(ストック)
・「エビ15M(エビデンス=裏付け資料1500万円)ぐらいでお願いします」(特推リーダー→業者)
・複数の通帳コピーをエビデンスとして送付したあと「○○銀行以外はすべて本物です」(業者→行員)
・「材料送ります」というメールの後1000万円偽装したネットバンキング残高証明を送付(行員→業者)
・「エビはいくらで出した方が理想的ですか?」(業者→行員)
・「数字の変更等あればすぐ訂正できるデータで作ってありますのでお申し付けください」(業者→所属長)
・「できる限りのことはやってみました。不自然な点があれば直すので言ってください。誤字・脱字がある可能性があるので細心の注意を払って内容を確認してもらえると助かります」(業者→特推)
ほかにも
・違う人物の名前が表示されたネットバンキングの残高画面を送ったあと、同じ口座番号で人物名だけ修正したものが
・同じ口座番号で残高が違うネットバンキングの画面を3回送付。うち1回は業者が桁を間違えて2億以上の残高となり、融資を借りる必要が無い内容に(その後修正)

2. 収入関係資料の偽装(フロー)
・源泉徴収票は年収1000万円。預金通帳に記載された給与振込は21万円。
・「年収が足りない場合は、源泉徴収票を作ってくれ。それを役所に持っていけばその金額の課税証明がとれる」特推部長の指導により行員が業者に説明して回っていると支店長から営業部部長にクレーム

3. レントロールの偽装
・「レントロールの利回りを“現況収入の70%=返済額以上”にしていただきたいです」(行員→業者)
・「利回りは8%で仕上げてください。最近うるさくなっています」(行員→業者)
・「これだとちょっと安いですよね?」(業者)「そうですね、金額の調整をお願いしたい」(行員)

4. 物件概要書(事業計画書含む)の偽装
・「色々訂正しています。以前お送りしたのは他の物件と間違えたと思ってください」(業者→行員)

5. 入居状況の偽装
・「賃貸借契約を送信しますが空室2室のでいいですか?」(業者→行員)・・・賃貸契約書って空室にもあるの??
・「ウェブ上に掲載されている空室を取り下げてください」(行員→業者)
・「すべては案件を仕上げる事や、御社を守っていく事に繋がりますので今後もお願いします」(行員→業者)
・(シェアハウスは水道メーター・ガスメーターが個別に分かれていないのでカーテンの有無で空室確認をするため、行員から業者へ事前に現地調査のタイミングを知らせたのをうけて)「〇〇日に現地行ってカーテンやってきますので完了したらまた連絡します」(業者→行員)

6. 売買契約書の偽装
・二重契約
・減額覚書

7. 手付金・中間金領収書の偽装
等々、書類偽装の常態化・蔓延。行員アンケートでは「不正が全くない案件など、全体の1%あったかなかったか、そのレベル」という声も。無担保ローンの抱き合わせ(歩積両建)
審査部「儲けようとして収益不動産ローンを借りる人が7%近い高金利の無担保ローンを借りたいと思う経済合理性がないのでおかしいと思います」
麻生Co-COO「1億円借りる人が1000万円借りないでどうする!」
・・・無担保ローンの平均セット率:全社63%、横浜東口72%。

営業のプレッシャー
・釣り堀に魚が10匹しかいないのに10匹取って来いといわれる状況
・首を掴まれて壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴られた(新種のカベドン?)
・営業会議で案件が無いことを理由に「今から営業してこい」と追い出される支店長
・「数字ができないならビルから飛び降りろ」
・他の社員の前で長時間罵倒
・「お前に給料を払うのが勿体ない!」他の社員の前でずらっと並べられ自分の給料を発表させられたうえで
毎日2~3時間立たされて詰められる、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1か月無視される
・金曜日に「月曜までに案件取って来い」と指示
・稟議書を破って投げつけられる
・毎日毎日怒鳴り続けられ、2週間も昼食に行かせてもらえず夜も11時過ぎまで仕事をさせられ、うつ病に
・支店長が激高し、ごみ箱を蹴り上げ、空のカフェ飲料のカップを投げつけられたりした
・「死んでも頑張ります」→「それなら死んでみろ!」
・役職者であっても行動管理票を元に毎日詰められ、精神的に追い込まれた
・モノを投げつけられ、パソコンにパンチされ、「お前の家族皆殺しにしてやる」と言われた
・部下の目の前で土下座させて謝罪させられた。椅子の背面をキックされた
・会議中にはターゲットになる者を特定され、多人数の前で罵声を浴びせる。恫喝・強要、パワハラ以外のなにものでもない
・この会社の一番上の層の人間は「聞いてない!」「知らないことにしろ!」「下の人間がやるんだよ!」という社風
・「自爆」=ノルマ達成のために自分もしくは配偶者等の家族名義でローン実行すること

極端な形式主義
・書類だけ揃えればいい
・過度の効率性重視
・債務者に貸すという感覚が希薄

営業第一主義への偏重
・優秀な営業部の若手人材→パーソナルバンクへ
・優秀ではないが営業部の従順な人材→審査部へ
・東京審査部:93%が麻生氏の元部下かパーソナルバンク経験者あるいはその両方
・中途採用:229名のうち125名(55%)が住宅・不動産・建築出身者(!)※で銀行マンとしての研修は1泊2日のみ、あとはOJTで現場に放り込まれる

※2008年ゆうちょ銀行への出向による人材不足が懸念され中途採用が本格的に行われた。一方、不動産業界も同時期のリーマンショックの影響で転職者が増えた。

創業家をはじめとした上層部が刷新され、生まれ変わった姿に期待しています。
もともと持っていた先進的な取組みを次々と開発していくチャレンジングなバンカーとしての良さを活かして、従業員のためにも顧客のためにも社会のためにも存在価値のある素晴らしい銀行を目指してほしいと思います。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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