猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

フラット35を悪用した不動産投資

住宅ローンで不動産投資・・・この手口にもメスが入ったようで。
不正を確認すれば全額返済」だそうです。

金融機関が融資した債権を住宅金融支援機構が買い取り、証券化によって機関投資家から得た長期資金を金融機関へ供給する「買取型」、金融機関が機構の「住宅融資保険」を設定したうえで融資し、住宅ローン債権の受益権を機構を通じて転売する「保証型」。前者では物件価格の90%、後者では100%(=フルローン)が可能です。

もちろん、「住宅」ローンですから購入した住宅を貸して賃料を得るというのは対象外であり、バレたら全額返済・・というのが今回の記事なわけです。

記事を読むと、この手口に乗った(利用した?)人はどんなひとかというと、

(1)年齢:20代~30代前半(35年融資を組むためには、完済時年齢の縛りがありますから若い人である必要があります)

(2)年収:300万円前後(住宅ローンの規定では、返済比率35%以内というのが多いので300万円あれば2700万円程度の融資を組むことができます)

(3)物件:2~3000万円の区分ファミリーマンション(金額は年収との兼ね合い、区分はフラット35を受けるために必要な「適合証明」が取れる物件が多いからということからでしょう)

(4)その他:200万円前後の借金があって困っている人

保証人も不要で、審査が甘くて、低金利で長期間の融資を使って、いまある借金が帳消しにできてしかも不動産も手に入る!

関わった不動産業者がどういった提案をしたかは想像に難くありません。

ファミリータイプの区分は、物件価格に対する賃料が思ったほど取れませんので、利回りで考えるとあまりいい投資にはならない場合が多いです。さらに、区分は修繕積立金や建物の固定資産税など運営費が高めになりますので、一棟ものであれば家賃収入に対して15~17%程度の首都圏でも25%~30%程度になる場合が多いと思います。

投資として成り立つとすれば、それに気づかず貸しに出したものの、意外とキャッシュフローがでないため、精神的・経済的負担が重く売りに出した物件を、実需価格よりも低い金額で購入し、入居者が退出した後に売却するという「アービトラージ」的な投資でしょうか。

ただし、日本の法律では入居者の住む権利は非常に強いですから、定期借家契約でない限り退出時期が読めないという欠点もあります。

物件購入代金2500万円と200万円の購入経費、そして200万円の諸々の借金を返済、それから100万円のお小遣いを欲しくて、売買契約書を3000万円に偽造して年利1.7%35年返済でフラット35の融資を引っ張った年収330万円の若者が月額10万円でその物件を貸していたとすれば、

年間家賃収入:120万円- 空室損5%(仮):6万円 - 運営費25%(仮):30万円 = 営業純利益:84万円 - ローン返済:114万円 = 税引き後CF:▲30万円

課税所得もマイナスになりますので、所得税還付も考えられますが、そもそも年収330万円であれば、所得税・住民税は年間20~30万円程度しか払っていないはずですから絶税効果も大したことはありません。

一応、計算してみると・・・
建物割合60%・築年数25年と試算すると、減価償却は年間55万円、金利負担は年間50万円で土地分4割相当の20万円は赤字の場合は不算入、青色申告控除も赤字の場合は不算入となれば、営業純利益84万円-減価償却55万円-建物分の金利30万円=▲1万円。

年収330万円の場合は、給与所得控除が30%+18万円=117万円、基礎控除が38万円。独身で配偶者がいないか、いても共稼ぎで扶養に入っていなければ、課税所得は175万円。

税率は、所得税5%・住民税10%なのでほかの控除がなければ税額は約26万円、▲1万円に対する節税効果は1500円・・・

でも、目先の200万円の借金の返済に追い立てられていたらその返済が毎月2万5千円(年間30万円)を超えていたら「助かった!」と飛びつくのでしょう。

ちなみに、全額返済を求められて売却という場合には、2500万円で購入した物件も仮に表面利回り10%が相場であれば、年間家賃収入120万円÷10%=1200万円でしか売れないということです。
どうしても買った時の値段、2500万円で売りたいということであれば、120万円÷2500万円=表面利回り4.8%で買ってくれる投資家を探す必要があります。借金を帳消しにできる3000万円で売りたいなら4.0%です。

仮に、入居者がすぐに出ていってくれたら2500万円では売れるかもしれませんが、500万円の差額はどこかで用立てしないといけません。

もちろん、運営費24万円(賃貸管理費が不要になりますので、貸した場合よりもその分少なくなります)とローン返済114万円の合計138万円(月額11万5千円)を負担して自分で住むという選択肢もありますが、年収300万円であれば居住費の負担が収入の46%(!!)になりますので、やっていけないと思います。

住宅ローンで買った物件を賃貸に回し・・・という事をしないまでも、「マイホームを購入して、多めに借りた住宅ローンで、いまある借金をまとめちゃいましょう♪」という業者もよく見かけますが、大丈夫かなぁ・・・

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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