猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

区分マンション建替え2つの成功条件

日本最古の民間分譲マンション「四谷コーポラス」(昭和31年/1956年)。
2017年8月に解体され、2年の工期を経て「アトラス四谷本塩町」という名前で生まれ変わりました。

と、いうことで完成見学会に行ってきました。

かつてここに建てられていた建物の記憶を残す共用スペース。

スイッチプレートに

ドアノブとロックチェーン

ドアと金属製の格子

これは、分譲時のパンフレットと、当時記事に掲載された「新建築」。

なにしろ、旧区分所有者25名のうち23名がここに戻ってきています。
きっと思い入れもひとしおなんだと思います。
もちろん、JR四ツ谷駅から徒歩6分という立地の良さもあるでしょう。

建て替え前と、後では延べ床面積は1.7倍、戸数は1.8倍になっています。
50㎡と77㎡の2パターンだった間取が28㎡から114㎡の33パターンとバラエティ豊かになったのは、旧区分所有者それぞれの希望を取り入れたからだそうで。
新規の販売戸数28戸は全て完売していますが、気になる価格は平均坪単価450万円(!)。
28㎡で4000万円近くということです。

ちなみに、旧所有者が再取得する場合の割合というのがあって、一般的な建替え案件の場合では50%といわれています。
4000万円の部屋であれば、2000万円で再取得できるということです。
コチラの場合は、なんと70%。
4000万円の部屋は30%の1200万円を負担することで再取得できるという計算です。

そして、従前の部屋面積の70%で構わなければ(50㎡→35㎡、77㎡→54㎡)金銭的な負担はゼロ。
2013年に耐震診断をして、3億円の耐震補強費用が必要という事が判明し、
2014年から2016年にかけて建替えが検討され、
2017年に建替え決議成立。
かなりスムーズに建替えPJが進行した様子がうかがえますし、旧所有者の合意形成において特に問題も発生しなかったと担当者の方もおっしゃっていました。

考えられる大きな要因は2つ。

1.建替えによる増床面積が大きい
2.販売住戸の価格が高い

この条件を満たせば、負担無しやわずかな負担で築61年の耐震補強が必要なマンションが、最新の新築マンションになるのであれば反対する理由も特に無いでしょう。

逆に、この2つの条件を満たしていない区分マンションの建替えは難航します。

少し古い調査になりますが、2006年に東京カンテイが「都道府県ごとの旧耐震マンションのシェア」というのを発表していました。

「島根県」と「佐賀県」は旧耐震マンションのシェア0%。つまり、旧耐震マンションが一棟もないというのも驚きですが、その頃にはマンションを建てる必要性がなかったということでしょう。

一方、港区は旧耐震マンションが51.5%、渋谷区47.6%、新宿区42.6%と都心部のシェアが高いのが目立ちます。(千葉県美浜区は旧耐震の団地群が住戸の多くを占めているので特殊性があります)

都心部は開発時期が早いので、これも得心がいきます。

これから順番にマンションが加齢していきますが、エリア的などこかのラインを境に、先ほどの2つの条件を満たさないことになってきますから、そこで明暗が分かれるはずです。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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