アパートローンの借り換え提案を金融機関から受けたが、果たして既借入を繰上返済する際に課せられるペナルティや、抵当権抹消や設定といった経費をかけてでもやった方が得なのかどうか・・・という相談が時折あります。
アパートローンの貸付が渋いこのご時世でも、貸付先を探さないと利益構造を作りづらい宿命をもつ金融機関にとって、「借り換え」は魅力があります。
他行が、自らのリスク判断をして融資をし、さらに何年か返済の実績があるうえ、融資残高が減少して安全性が高まった債権をさらっていくわけですから。加えて融資手数料などの一時収入的な利益も見込めます。
では、実際に融資を受ける投資家側からみてどうか?ということが気になるわけです。
金利は引き下げてくれるかもしれませんが、先ほど触れたように、借換にはコストがかかります。
・既存借入を一括返済する場合のペナルティ(変動金利を選択している場合は数千円の手数料で済みますが、固定金利を選択していてその固定期間中で、さらに残り期間が長かったりするとそれなりの金額になります)
・抵当権抹消費用(司法書士手数料3~5万円程度)
・抵当権設定費用(融資額×0.4%と司法書士手数料)
・金銭賞貸借契約に貼付する印紙税(借入金額による。1億円を超えると(5億円まで)それだけで10万円します)
・金融機関の融資手数料(2万円前後から10万円程度まで、あるいは融資額の1~2%といったところまでまちまちです)
借り換えるかどうかの判断は、単純な金利の差ではなく、「それらのコストを掛けたうえで実質的な金利はいくらになるか?」という計算をする必要があります。
例えば、1億円を5年前に借りて、そのときの条件が年利2.5%・期間30年だったとして、現在のローン残高を年利1.5%・期間25年(=既ローンの残期間)で借り換えませんか?というオファーがあった場合、表面的な金利差は2.5%-1.5%=1.0%ということになります。
上記の条件であれば、現在のローン残高は約8800万円になっていて、月額返済額は39.5万円→35.2万円と、約4.3万円の支払いが減少することになります。
そこで、先ほどのような借り換えのためのコストが約230万円かかったと仮定すると実際は、その返済額は、ローン残高8800万円に対してではなく、借換コスト230万円を差引いた8570万円に対しての返済額ということになります。
金融電卓10B Ⅱを使って、
N=300(25年×12か月)
PV=8570万円
PMT=-35.2万円
FV=0
と入力し、I/YR(金利)を求めると=1.73%という答えが出ます。
ということは、実質的な金利は1.5%ではなく1.73%ということで現在の金利2.5%との差は0.77%ということがわかります。
このケースでは、繰上げ返済のペナルティを払ってでも借り換えたほうが良いという判断になります。
あとは、借り換えに際して別の条件を付加されることもありますので、その場合はそれも踏まえての判断が必要になります。
・「融資期間をさらに短く設定してほしい」
→金利が下がっても、返済額が上がる場合があります。キャッシュフローの再投資の機会と、売却出口での手取りキャッシュの増加を踏まえて投資判断をします
・自己資金を入れて借入額を減らす
→その資金を使って得られるキャッシュフロー(別の投資機会に対するリターン)との兼ね合いで投資判断をします
・・・実際は、「こういうオファーが来たんですけど」と既借入先と交渉して受け入れられるのが一番手っ取り早いですけどね。
先程の例であれば、1.5%ではなく「1.73%」と同等以上の条件が得られれば交渉成功ということです。