「ニッカ、ウィスキー2割増産」30年にも原酒不足解消・・・・
ついつい忘れがちですが、需給ギャップを埋めるのにウィスキーだと10年かかるということです。
テレビのゴルフ中継で渋野日向子プロが素敵な笑顔で「タラタラしてんじゃねーよ」というスゴイ名前の駄菓子を食べている姿を見た人達が大人買いして一時的に品薄になったとしても、”よっちゃん食品工業”(酢漬けイカで有名なあの会社だったんですね、会社名は創業者金井芳雄(よしお)代表の名前からとったのかな?)の山梨の工場をフル稼働させれば1か月もたたずに需給ギャップは解消することも可能です。
需要供給曲線は中学の社会科の授業で習います。
不動産(建築)の場合はウィスキーほどではありませんが、賃貸床として供給されるまでは「用地取得→許可→造成・開発→着工→検査→竣工」というステップを踏みますので、2~3階建ての小規模なアパートでも半年程度、大規模なマンションやビルで2~6年程度かかります。
需要が見込めてから、用地を取得してもタイミングが合わない可能性がありますからそのあたりの票読みが課題になるわけです。
フィッシャー・ハドソン・ウィルソン・モデルという市場モデルがあります(CCIMの市場分析の授業で教えています)
左上の象限「短期的 需要/供給関係」はまさに需要供給曲線のハナシで、需要が増加(=斜線が右にスライド)すると直立した破線(供給)との交点が上に移動しますので、賃料が上昇しNOI(営業純利益)が増加するということになります。
右上の象限は、直接還元法(DC法)による価格決定の仕組みを表します。
「V(価格)=I(営業純利益)÷R(還元率≒期待利回り)」
つまり、分子である営業純利益が増加すれば物件価格は上昇するし、あるいは営業純利益が変わらなくても、分母である期待利回りが下がれば(=より低い利回りで買いたい人が市場に増えれば)やはり価格は上昇するというわけです。
逆に、需要が減れば賃料低下→価格低下ということになります。
居住系に限らず賃貸不動産の需要は人口の増減に大きな影響を受けます。
日本全体では人口減少トレンドにあったとしても、マクロでは東京といくつかの県、ミクロでは駅や商業施設・公共施設の近隣か郊外かによっても人口増加・減少がみられるはずです。
そして、右下の象限は建設市場。
「価値と開発コスト」とありますが、何を表しているかというと「開発には一定のコストがかかる」という前提で考えると、物件価格の低下が続いて「開発コスト>物件価格」となるのであれば”誰も好き好んで新規供給しない”という当たり前の判断をする・・・ということです。
最後の左下の象限「長期的 供給/需要関係」では、新規開発・建築による供給が減少した場合、老朽化による解体などで一定量減少していく賃貸床在庫に対する引当ができずに市場全体の供給が減少して第1象限の需給ギャップを解消・バランスしていく・・・という考え方です。
また、大規模修繕による物件の維持管理にもコストがかかりますから賃貸需要が少なく、賃料がとれない市場であれば新規の開発がされないと同時に「解体・撤去」という選択をする投資家もより多くなるでしょう。
ワンルーム規制がある地域であれば、入居者ターゲットにマッチングした比較的リーズナブルな賃料設定ができる狭めの間取の物件は大量供給できないので、正の需給ギャップが大きめになる可能性が高いとか、
建築費の上昇は、長期の市場トレンドにとっては決して悪くはないとか、
このモデルから得られるヒントはたくさんあります。