猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

イールドギャップのよくある誤解

NYが本社のブラックストーンは世界最大のファンドで全世界のGDPの6%相当額を投資しています。


NYが本社のブラックストーンは世界最大のファンドで全世界のGDPの6%相当額を投資しています。

丸の内トラストタワーの20階と15階ということもあって、時々話をしますが「日本の不動産は、その実力の割に安い」と言っていました(流暢な日本語で)。

~海外勢は投資利回りと調達金利の差である「利回り差」を重視する~

「利回り差」を、「表面利回りと金利の差」と誤解してイールドギャップ云々講釈する人は多いですが、

ここでいう「投資利回り」は”キャップレート”、すなわち総家賃収入から空室損と運営費を差引いた「営業純利益」を物件価格で割った利回りの事を指します。

さらに、ファンドが使う融資は3-5年程度の投資期間を設けて、その期間が終了した時点で元本を一括返済し、保有期間中は利払いだけ・・・という仕組みになっています。

例えば(取得・売却のコスト、税金は別として)、

物件価格 100億円(キャップレート3%)
出資額   5億円(5%ルールがあるので)
証券    35億円(仮に3%配当)
借入額   60億円(年利1%ノンリコース)

という投資投資をファンドが行ったケースを想定すると、

年間の営業純利益(NOI)=3億円
-証券への配当      =1億500万円
-金利支払い       =6000万円
=出資者のキャッシュフロー=1億3500万円

出資者の自己資本利回り(CCR)=1億3500万円÷5億円=「27%」(税引前)ということになります。

「取得額+取得コスト」が「売却額-売却コスト」とイコールになれば、内部収益率(IRR)も同じ数字になりますので、このケースの売主(安邦保険集団)や、昨年のアバクロ銀座店(プルデンシャル・ファイナンシャル)やその前のキラリトギンザ(アゼルバイジャン投資庁)のように、大きく値上がりをするとそれこそかなりのIRRとなるわけです。

逆に、自己資本利回り(CCR)がかなり高めになりますので、キャピタルロスが多少発生してもそれなりの投資実績が残せるという感じになります(多少ではない値下がりの場合は、ノンリコースローンなのでそのまま物件を金融機関が引き取って終了)

一方、個人の場合は保有期間中も元本返済をしなければいけませんので、「金利+元本=返済額」が、借入額に対してどの位の割合なのか?ということがキャッシュフローに大きな影響を与えます。

例えば、年利1%で1億円の融資を受けた場合、ファンドのような「金利のみ支払い」という条件であれば、年間の返済額は「1億円×1%=100万円」ということになりますが、「金利+元本=返済額」ということであれば、返済期間によって年間返済額が大きく変わります。

期間  年間返済額  年間返済額÷借入額=K%
35年  3,387,428円   3.39%
30年  3,859,674円   3.86%
25年  4,522,469円   4.52%
20年  5,518,732円   5.52%
15年  7,181,934円   7.18%

「経験上、イールドギャップ(表面利回りと金利の差)は12%程度あればいい投資になります」・・という話も時々お見受けしますが、例えば金利1%で表面利回り15%、こういった方々のおっしゃるところのイールドギャップが14%という投資で、1億円×表面利回り15%=満室想定賃料1,500万円という場合、
・空室率30%
・運営費率40%
(管理費・小修繕・固定資産税・水光熱費・清掃費・AD・原状回復費など・・・賃料単価が低いほど賃料収入に対する負担の割合は大きくなります)
といった数字であれば、

営業純利益(NOI)=1500万円×(1-(30%+40%))=450万円

キャップレート=450万円÷1億円=4.5%ということになります。

これを、年利1%20年返済でフルローンということになると、年間返済は1億円×K%5.52%=552万円の返済ですから、

営業純利益          450万円
-年間元利返済         552万円
=年間税引前キャッシュフロー ▲102万円

というのが、真実の財務内容ということに。

もちろん購入当初は満室で修繕もとりあえずは発生しないないしは先送りに・・・ということであれば

営業純利益          1050万円
-年間元利返済         552万円
=年間税引前キャッシュフロー+約500万円

ということで、専業大家になりたくなるところだと思いますが、あれよあれよという間に

営業純利益          450万円
-年間元利返済         552万円
=年間税引前キャッシュフロー ▲102万円

になって、青ざめる人が結構いらっしゃるというのはみなさんご存知の通りで・・・

もちろん、「融資期間が短い=K%が高い」というのは、単年のキャッシュフローの側面しかとらえていませんから、「残債の減少=売却キャッシュフローの増加」という側面で見れば、融資期間が短いという条件は必ずしも悪いわけではありません。

あえて、他の投資家が拾わない築古物件を短い融資期間で取得して、バリューアップしたり、建替えたり、更地で売却したりという手法も魅力的なスキームですし。

”安全”の定義は、「危険性が把握され、それがコントロール下にある状態」。

事前に想定できる・できたはずの「想定外の事態」って結構多いです。

「そんなコ難しい理屈を知らなくたって投資はできている」なんて言わずに、少なくとも投資のモノサシだけは正しい知識を身に着けておくことをお勧めします。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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