2020年9月1日の日経に、資金確保のために企業が保有不動産を売却するという案件が増えているという記事がありました。
個人が買えるような物件が市場に出てくるかは別として、図にあるように「含み益資産」を売却して、
(1)現金として置いておく
(2)有利子負債を繰上げ返済する
という作業をするのは、個人投資家にも当てはまる「検討余地のある施策」といえます。
ローン返済が進んで(あるいは値上がりして)売却すると手元に残る現金がかなりの金額になる物件があれば、それは「含み益(の大きい)資産」といえます。
そして、売らずに継続保有した場合に得られ続けるであろうキャッシュフロー(CF)に対して、その手元に残る現金(=「投資基礎」といいます)があまりにも大きければ、投資内部における自己資本利回り(CCR)はとても小さくなります(=投資効率が悪いということ)。
例えば、
【購入当初】
自己資金(Eq) 100万円
キャッシュフロー(CF) 30万円
CF30万円÷Eq100万円=CCR30%
これが、物件価格の値上がりと残債の減少によって
【現在】
売却手取り(Eq’) 1200万円
キャッシュフロー(CF) 30万円
CF30万円÷Eq’1200万円=CCR2.5%
と、なるわけですから
(1)売却手取り金(Eq’)1200万円をCCR2.5%以上の投資に振り替える
(2)売却手取り金(Eq’)1200万円をK%(=年間返済額ADS÷借入残高LB)が2.5%以上の既存借入の繰上げ返済に充当する
という投資判断をした方が、キャッシュフローが増加するという事になるわけです。
併せて、
繰上げ返済に充てた場合には金融機関から見た自分の経営は、
(1)長期借入の減少
(2)ローン返済減による当期利益の増加
という二つの効果によって、「債務償還年数」が圧縮され、債務者区分がより安全側にシフトするという結果をもたらします。(K%は、より少ない繰上げ返済額でより大きなキャッシュフローの増加が見込めるかということを見る指標にもなります)
つまり、”新規の融資を受けやすくなる”という事です。
個人的にも、過去に購入したオーナーチェンジのファミリータイプ区分(キャッシュフローは全く出ませんでしたが、アービトラージによるキャピタルゲインを期待しました)を7年越しの努力の結果、実需市場で売却する機会を得ましたので、
保有を継続した場合のキャッシュフロー
月額2万3000円
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売却による手取り現金を、ローン返済が進み借入残高が減少したのでK%がとても高くなっているいくつかの融資(=年間返済(変わらず)÷借入額(減少)=K%(上昇))の一括繰上げ返済に充てることによる返済額の減少=キャッシュフローの増加
月額26万5000円
そして、まったくの空き担保になった物件が増えましたので、新規融資がさらに組みやすくなります。
繰上げ返済の相談に行った銀行で、完済年齢を考えたら新規の融資を受けるにしても期間は短くなっちゃいますよね?と担当者にカマをかけたところ、年齢関係なしに新築木造で30年融資出しますとのこと。
良さそうな物件があっても、立場上、投資家を優先しないといけないので、なかなか自分にはまわってこないのがこの仕事の難しいところではありますが、
難易度が高くて個人投資家が手をださないとか、融資不調等のドタキャンで急きょ他の投資家を見つけなければいけないといったシチュエーションであればなんとか買えますので、繰上げ返済の手続きをしに行きがてら相談してこようかと。