「企業の不動産売却加速~持たざる経営に転換」という記事が、今朝の日経新聞朝刊一面に。
コロナで売上減少
↓
資金繰りに困窮
↓
こぞって投げ売り
↓
地価下落??
と短絡的にとらえられがちですが、どういう話かというと・・・(個人投資家にもあてはまります)
記事の内容を簡単に整理すると
■自社ビルの売却により財務負担を軽くしつつ投資資金を確保する
■世界的な金融緩和で資金豊富なファンドが買手となるので、そのまま自社ビルをリースバックで利用し続けることができる
■売却によって調達した資金を使って、より良い物件を取得したり設備投資、あるいは既存借入の返済などに充当する
ということです。
わざわざ、自分で持っていた物件に家賃を払うの?馬鹿らしい・・・と、思うかもしれませんが
例えば、みなさんが会社を経営していて
・自社ビルをぜひ売ってほしいという人がいて、いい条件を提示してくれて10億円の現金が手元に残る
・そのままテナントとして借りてくれれば立退きしなくてもいいと言ってくれている
・そのかわり家賃は年間1億円払わないといけない。
・でも10億円を事業に使うと年間5億円儲かる
というケースであればどういう判断を下すでしょう?
どうしても不動産にこだわりがある方であれば、
・でも10億円の現金を使うと、同規模のビルを5棟買えてキャッシュフローは年間5億円になる
でも、いいでしょう。
個人の投資の場合でも、自分で保有している物件の出口戦略を考える場合には2つの数字を押さえて判断します。
(1)その時点で売却した場合、手元に残る現金(=投資基礎Eq’)
(2)売却せずに継続保有した場合に得られる税引後キャッシュフロー(=ATCF)
ATCF/Eq’=投資内部の自己資本利回り(=CCR。ROE・ROAともいいます)となりますから、CCRが小さければ「自己資本に対して得られるキャッシュフローが過少=投資効率が悪い」ということで売却出口を取るというのが妥当性のある判断となりますし、
CCRが大きければ「売却しても、継続保有で得られるキャッシュフローに見合った現金が手元に残らない=投資効率が良い」ということで、売らずにおくというのが妥当性のある判断となります。
そして、その投資効率が良いか悪いかという水準は、売却して得られた現金を他の投資に(企業であれば本業の利益率でしょうし、不動産投資家であれば別の物件ということです)まわした場合の投資効率(CCR)と比較してどうか?ということ、
そしてもうひとつ「既存の借入を繰上げ返済した場合に減る返済額」(=残期間が短いものほど返済による効果は大きくなるようになっています。これは、「年間返済額(ADS)/残債=K%」という計算でわかります)の割合も資金の転用先として検討することになります。
売却出口を取った方がよくなりがちな局面はふたつ
1.残債が減少した場合
2.価格が上昇した場合
そして、その両方が同時に訪れた場合にはと1と2を合わせた効果が生じます。