*著者撮影
則武地所が破産申請を出しましたね。
逃げ切れると思っているのかわかりませんが、今回のケースでは非免責債権となりますのでそうはいきません。
【 破産法第253条第1項 】
免責許可の決定が確定したときは,破産者は,破産手続による配当を除き,破産債権について,その責任を免れる。ただし,次に掲げる請求権については,この限りでない。
③ 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
日経クロステックでは建築士事務所・工事監理者・指定確認検査機関が実名報道されていますが、建築確認・中間検査・完了検査が行われて検査済証まで発行されていることから、このあたりの責任問題も問われることと思います。
今回の八王子の死亡事故に関する損害賠償請求の流れは、
被害者(入居者)の遺族から物件オーナーへ損害賠償請求
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物件オーナーから売主へ損害賠償請求
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売主 から施工業者へ損害賠償請求
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施工会社から保険会社へ保険金請求・・・ということになりますが、被害者からはそれぞれの登場人物に対して以下の法的構成で責任追及される可能性があります。
物件オーナー(貸主) | 賃貸借契約に基づく契約責任、不法行為責任(工作物責任) 【 民法 第709条】不法行為責任 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 |
サブリースの場合のサブリース会社 | 賃貸借契約に基づく契約責任(ただし事故が発生したのが賃貸部分ではなく、物件オーナー所有の共用部なので責任追及されない可能性があります) |
管理会社 | 不法行為責任(ただし通常の管理行為によって本件の問題が発見できたかが争点となります) |
施工会社 | 不法行為責任 |
設計者・監理者 | 不法行為責任(ただし本件の事故を予測できたかどうかが争点となります) |
指定確認検査機関 | 不法行為責任(ただし建築基準法違反の見逃しがあったかどうかが争点になります) |
それから、則武地所と建築請負契約を結んで工事代金の一部を支払い済みで工事がストップしている方もいるでしょう。
下請けに支払いがまわっていなければ「留置権」を主張されて建築途中の建物の占有をされる可能性が高くなります。
その場合は、
破産管財人選定
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請負契約解除
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工事出来高の査定
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出来高清算
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あらたな工事会社(現下請けの場合が多いと思います)と請負契約締結
・・・という流れが一般的です。
また、建築工事の留置には土地の占有が伴うのでそれを認めるかどうかの判例は、工事の進捗状況などによってさまざまです。
それから、事故は起こっていないけど建物に問題があって改修が必要な物件オーナーさんは、平成21(2009)年10月以降住宅瑕疵担保責任保険の加入が売主・請負業者に義務付けられていますので、引き渡しから10年以内であれば改修費用相当を保険会社に直接請求することができます(支払い上限額・免責金額・縮小填補割合などありますので注意)。
対象は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」(オプションで「給排水管路」)。
建物構造上主要な部分として挙げられているのは、小屋組・屋根板・斜材・壁・横架材・柱・床版・土台・基礎。
雨水の浸入を防止する部分として挙げられているのは、屋根・開口部・外壁。
共用階段が入っていないので、場合によっては階段が架かっている踊り場・共用廊下などの床部分だけになる可能性もありますが・・・
ご参考まで(一応、顧問弁護士に内容チェックしてもらいました)。
則武地所の3期分の決算書も取り寄せてみました・・・ホントに破産申請必要な財務内容かどうか。