「土地は減価償却されないので、不動産の利回りは建物のみで評価するべきでは?」という疑問を解決するひとつの考え方として”最有効利用分析HABU”という手法が参考になるかもしれません。
更地に何かを建てて最終的に更地に戻すという枠組みの中で、その建物が存在する期間中に土地はいくらの収益を生み出したかという分析をするのがHABU。
当然、最も収益が大きい選択肢が投資として最も適している利用方法であるということになります。
必要な要素は
1.建築費
2.営業純利益NOI
3.建物の償却費用
3.建物の償却費用は、減価償却ではなく以下の計算によって算出します(金融電卓かエクセル関数PMTを使用してください)。
N:耐用年数(法定耐用年数ではなく実際の)
I/YR:投資家が求める自己資本の利回り
PV:建築費
FV: 0
※P/YRは1で設定
これから求められるPMTが建物の償却費用となります。
そして、「土地が生み出す収入」は”営業純利益NOIー建物の償却費用”で求められます。
例えば、投資家が求める自己資本利回り10%とした場合、
あ:80㎡の貸家(建築費約1450万円・NOI約167万円・耐用年数40年)
い:20㎡×9戸のアパート(建築費約4900万円・NOI約605万円・耐用年数40年)
う:25㎡×18戸のマンション(建築費約1億6330万円・NOI約1685万円・耐用年数60年)
という条件であれば、土地の収入はそれぞれ
あ:貸家 約 19万円
い:アパート 約 104万円
う:マンション 約 46万円
となり、「い:アパート」が最有効利用となります。
同様に、すでに建物が建っている中古物件でも取得価格のうち建物価格を分けて、改修費・建築費など選択肢ごとのコストと想定耐用年数を出すことによって最有効利用HABUを計算することもできます。
こちらの表のケースでは、現状維持・資本改善・建替えの三つの選択肢のなかでは、建替えが最も優れているということがわかります。
ただ、実際は賃料や稼働率、運営費・修繕費といった運営期間中の変動要因は選択肢ごとに変わりますし、立ち退き等の問題もありますので、投資判断を行う場合は「内部収益率IRR」の計算を、立退き・解体コストも踏まえた更地での出口としてするほうがわかりやすいと思います。
あるいは、選択肢ごとに投資する自己資本も、投資する期間も、投資期間中のキャッシュフローも変わるはずですから、そのあたりの要素も踏まえた修正内部収益率MIRRと、それによって導き出される最終的な利益の総額で比較する資本蓄積法で判断するとさらに比較しやすくなるはずです。
CCIM institute(不動産投資顧問協会:米国)の提供する教育プログラムではこういった実学を基礎から学べます。