猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「全国賃貸住宅実態調査報告」の最新版が届きました。


IREM-JAPAN(全米不動産管理協会日本支部)が毎年実施している「全国賃貸住宅実態調査報告」の最新版が届きました。

https://irem-japan.org/
賃貸管理・賃貸経営の系統だてられた知識を持つCPM(不動産経営管理士)が自社で管理する物件の空室率と運営費率に関して定量的な観測を行っています。

「空室率」とひとくちに言ってもカウントの仕方はいろいろあって・・・

総務省統計局が5年ごとに行い、様々なデータの元として利用される「住宅・土地統計調査」から導き出される空室率は、

空室数÷(空室数+入居中の部屋数)=空室率

という計算をします。

10戸×10棟=100戸の市場で空室が10室あれば、「空室率10%」ということです。

それから、㈱タスが開発した空室率インデックス「空室率TVI」というのも時々ニュースで取り上げられることがあります。

こちらは、出資者でもあるアットホームのデータを利用しています。

空室数はアットホームで募集されている戸数、そして分母となる総戸数は、独自データから導き出されたその物件のあるエリアと構造ごとに想定される戸数。

先ほどと同様に10戸×10棟=100戸の市場で空室が10室あれば、「空室率10%」ということになるかというと、満室で募集にかけられていない物件についてはデータの母数からは除かれてしまうため、例えば先ほどの例でいえば

「10戸の空室が5棟の物件で生じていて、残りの5棟は満室」という内訳の場合は、

空室数10戸÷(10戸×5棟)=空室率TVI 20%

さらに、5棟で10戸ある空室のうち4棟ではそれぞれ1戸、残りの1棟で空室が6戸という内訳において市場が改善し、それぞれ1戸の空室だった4棟が満室になると、

空室数6戸÷(10戸×1棟)=空室率TVI 60%

・・・と、市場の空室率が10%から6%に改善したにも関わらず、20%から60%と非常に悪化したように見えてしまうという弱点があります。

では、

空室数÷(空室数+入居中の部屋数)=空室率

という計算が正しいかというと、この計算方法では、
「調査時点での空室率しかわからない」
ということが最大の弱点になります。

例えば、総務省統計局の調査は(5年ごとの)10月1日に行われますが、100戸の市場で10戸の空室だったものが、

・翌日入居申し込みが入って5戸に改善されたり
・翌日退去が発生して15戸に悪化したり

という「一年を通じた変化」が反映されないということです。

この変化を反映させた実際の空室率の計算は以下の通りとなります。

1-居住期間÷(居住期間+空室期間)=空室率

居住期間は「1÷年間の解約率」で計算できます。

100戸の市場で年間解約が20戸出たとすれば、解約率は
20戸÷100戸=20%。

平均居住期間は
1÷20%=5年(60か月)

平均の空室期間が2か月とすれば、この市場の空室率は

1-60か月÷(60か月+2か月)=3.22%

こういった計算を基にした調査データとしては唯一無二のものとなります。

http://irem-japan.org/research/noi/
IREM-JAPANのホームページからエクセル形式の調査データをダウンロードすることができますので、ご参考まで。

例えば、東京都で見てみると・・・

一棟木造の空室率は1.01%

一方、非木造では0.64%

そして、区分・単身は1.66%

同様に、固定資産税・賃貸管理費・水光熱費・清掃費・消防点検といった「運営費(OPEX)」についても調査がされています。

区分マンションは、管理費・積立金がある関係で一棟ものよりも運営費負担が重くなりがちですが、経過築年数によっても変化が生じます。

「運営費÷家賃」という計算で得られる「運営費率」築年数ごとにみると、

10年未満20.02%
10‐20年23.73%
20年超25.90%

となっています。

調査数の少ないエリアについてはデータ的な価値が低いかもしれませんが、参考にはなるはずです。

ただし、この調査には
「前提条件として、IREMメンバーであるCPM(不動産経営管理士)がそのスキルを使って管理している物件のデータしか使っていない」
という最大の欠点があります。

広くこの調査が行われることによって、より正しい数字がわかるようになりますので、これからも国交省や(社)日本賃貸住宅管理協会会員企業への働きかけを行っていく必要があります。

でも、調査協力していただいたIREM メンバーの皆さんは空室で困っているオーナーに対して、「CPM(賃貸経営管理士)が管理を行えば、このくらいまで空室率を改善できる可能性があります」という裏付けを示すことができるかもしれませんね。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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