新年が明けて早1ヵ月弱、1月も既に終盤ですが・・・
改めまして本年もよろしくお願いいたします。
先月のコラムでは、「期待感」により不動産価格が上昇してきている中、家賃上昇につながる、企業業績や賃金の向上などの実体経済がついていくかどうか、という視点を持つことについて話をしました。
賃貸市場では相変わらず、住居の家賃が上昇しているという話は、都心部であってもまだあまり耳にしません。良くても、減少の幅が縮小した、減額交渉がなかった、または賃貸契約更新の際に家賃据え置きというくらいです。
既に賃貸経営をしている場合、家賃が上がっているという実感を持っている方はまだかなり少ないのではないでしょうか。
一部新聞等で、オフィスに関しては空室率低下、賃料は回復し上昇傾向もといったことが報道されていますが、全体に浸透するにはまだ時間もかかりそうです。
個人の住居でいえば、賃金が上がらないことには家賃上昇には到りません。
企業の業績が本格的に回復し、家賃に反映されるところまでいくかどうか・・・
アベノミクスにおいても個人消費の回復を目指し、賃金水準の切り上げを何とか実現させようと、税制優遇を含め経済界に働きかけています。
新年度に向けて賃金交渉の話が多くなってくる中、動向の行方には注目です。
因みに昨年、大企業におけるベースアップと定期昇給の平均は併せて2.2%ほどの上昇でしたが、消費税増税を考えると物足りないでしょう。
それでも大多数が6年ぶりのベースアップ実施ということで、意義は大きいと感じます。
仮に賃金が手取りで2%上昇したとすると、月給20万円の場合4,000円、30万円であれば6,000円のプラスになります。
このうちのどのくらいが家賃上昇として見込めるでしょうか?
現在の収入に占める家賃の割合が20%だとして増額分を自動的に割り振れば、それぞれ800円、1,200円です。
ただ現実的に考えると、このくらいの賃金上昇では家賃にかける金額を多くしてもいいか、と思う人は少数派でしょう。賃金が増えたからといってすぐに引っ越しをする人もあまりいませんね。
まだまだ先行き不透明感が漂う中、まずは貯蓄等の自己防衛としてのものが先にくると思われます。
家賃には遅行性がある理由のひとつです。
継続性も課題です。企業側としては、今年度だけは何とか賃金を上げたけれど業績が伸び悩めば持続は難しく、加えて人件費が経営を圧迫する状況になる可能性もあるでしょう。
家賃は家計の中で固定費として毎月出ていくお金です。賃金の継続的な安定が見込めなければ、当然家賃上昇も難しいのです。
別の視点から気になる動きとしては、ここ最近、企業の経営スタンスに変化が出てきていることです。
世の中の大きな流れとして、ROE重視の経営姿勢にシフトしているところが増えてきています。
ROEとは投資指標のひとつで、自己資本利益率のこと。
純利益÷株主資本(自己資本)で計算され、利益を上げるために株主資本を効率的に使えているかどうかを測るものです。
純利益を上げる方法のひとつに経費削減もあるわけですが、そこには人件費(≒賃金)も入っています。
ROEの考え方は企業として至極当然だと思いますが、この数字自体が目的になり過ぎると、賃金が上がりづらくなる可能性は否めません。
株式市場では、ROEも含めた新たな株価指数、「JPX日経インデックス400」が昨年から始まっており、日経平均株価やTOPIXと並んで、代表的な指数となりつつあります。
日銀の資産買い入れや私たちの公的年金を運用するGPIFも指標のひとつにしていることで、今後も徐々に存在感が高まっていくと思われます。
もちろん、賃金の上昇には企業業績の向上が不可欠であることは間違いないのですが、そのまま反映されるという単純な流れではありません。
企業の経営スタンスの.変化についても、その動向に注目しておく必要がありそうです。