北野 琴奈の不動産投資コラム

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

今さら聞けないキャッシュフローの基本 前編

不動産投資に興味を持つ人が増えるに従い耳にするのが、実はキャッシュフローの計算の仕方がよくわからない、キャッシュフローがこのような推移になるとは知らなかった、というものです。不動産投資・賃貸経営において数字の流れを把握することは重要ですが、その基礎を理解していない人も多いと感じます。
というわけで今回・次回では、毎年の現金の流れであるキャッシュフロー(以下CF)の基本と、売却をした場合の計算を含め、トータル収益の大まかなシミュレーションをしてみます。

毎年のCFを算出するためには不動産所得を把握し計額を求めなければなりません。
これらは以下の式で表されます。

実際のお金の流れ・・・収支計算 :CF=収入-(各種経費+借入金返済+所得税・住民税)
税額を求めるため・・・ 所得計算 :不動産所得=収入-(各種経費+借入金利子+減価償却費

所得計算の赤字部分が、賃貸経営における「経費」となります。
税引き後CFを確保するために気をつけたいのは以下3点です。

①借入金返済
②減価償却費
③税率

まず①について。上記式からわかりますように、借入金返済のうち元本部分は収支上の支出ですが、所得計算上の経費としては認められません。費用とならない支出です。元本部分は経費にならず税金がかかるので、税引き後のCFがマイナスに転じてしまう恐れがあります。特にフルローンに近い形で、元利均等での借入をしている場合注意が必要です。というのは、元々、支出に占める返済額の割合が多い状況で、借入年数を経るに従い、返済額は変わらないのに経費となる利息の割合が減少してくるからです。

1億の借入を金利2%、25年元利均等返済で組んだ場合、支払い利息金額は、1年目191万円、5年目164万円、10年目131万円、20年目44万円と減少していき、この差額分、経費も減少することになります。仮に所得税・住民税合わせて30%で他条件が変わらないとすれば、支払い利息が30万円少なくなることで9万円の税金増となります。
その分、元本返済分が「資産」になっていけば良いのですが、収益性の悪化で返済分に見合わず資産価値が目減りしていくことも十分あり得ます。

次に②について。減価償却費は①のローン元本とは逆に、支出を伴わない経費です。算出法は建物に関しては現在定額法で決まっていますが、付帯設備などは定率法・定額法のどちらか選択できます。両者を比較すると、定率法の方が当初の手元に残す現金を多くできるので、選択されている方が多いと感じます。ただ減価償却費が少なくなればそれだけ税金がかかることになるので、償却を早くすることで、後々の収支が苦しくなる可能性もあります。
税率が同じであれば、手元に残る金額としてはいつ経費計上しても同じです。他での有効な運用や資金の効率化、貨幣価値等を考えた時、早めにキャッシュ化するメリットが言われることが多いだけですので、何が最適なのかは自身に当てはめて考えてみましょう。(ちなみに個人の場合税率が大きく変わるのは、退職等が考えられます。)
また減価償却の費用計上が進むと、売却時に利益が出やすくなる≒税金がかかることにも留意が必要です。
(簿価=取得価額-減価償却累計額)

最後に③について。個人で収益不動産を購入した場合、不動産所得は、給与所得等と合算されて総合課税となります。所得税は累進課税で、住民税も合わせて税率が例えば30%なのか43%なのかで見ても、最終的に残るCFに大きな違いが出てきます。
例えば給与所得等の他に不動産所得が年間300万円ある時、不動産所得の部分にかかる税金は、税率30%の人は税額90万円、43%の人は129万円になります。(青色申告特別控除額は考慮しない)税額39万円の違いですが、そのためにCFがマイナスになってしまう人もいますので、各々税率の把握は重要です。
税率は個人の状況によって違いますので、不動産所得金額は同じでも、税額・最終CFは変わってくる可能性があるわけです。

CFの大きな流れを把握するには、表・グラフを作成してみると良いと思います。
ご参考までに、キャッシュフロー推移のイメージグラフを載せます。こちらは減価償却を一律にしていますので、支払い利息とその他項目の関係についてご覧ください。
(あくまでイメージです。全ての場合に当てはまるわけではありません。)

キャッシュフロー推移

【横軸:経過年数 縦軸:金額】

手元に残る最終キャッシュは、所得税・住民税を考慮に入れずにいると「こんなはずではなかった」ということになりかねません。
収支と所得の違いを把握し、税引き後のCFを知っておくことが不可欠です。
次回は、売却も含めたトータルでの収支計算をしてみます。

【このコラムの著者】

北野 琴奈

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

1974年 北海道生まれ。
津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。
実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。

会社員の頃、資産運用の大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーの上級資格である、国際ライセンスCFP®資格を取得。
同時にロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだのをきっかけに、夢実現の手段として不動産投資・経営をはじめ、東京を中心に計104室まで保有。海外にもチャレンジし、アメリカの物件購入に到る。

TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。
一方、ワイン好きの趣味が高じて「ワインエキスパート」の資格を取得、ワインに関する講座を務める。
著書に、『逆算で夢をかなえる人生とお金の法則』、『47テーマで学ぶ家計の教科書』、『はじめての人のJ-REIT 基礎知識&儲けのポイント 』がある。

HP: http://www.kotonakitano.com/
blog: http://blog.livedoor.jp/kotonakitano/

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