北野 琴奈の不動産投資コラム

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

売却価格が投資全体に与えるインパクト

実物不動産投資はいわゆるレバレッジ効果に魅力を感じ活用する方も多く、それだけ大きな金額が動きます。
毎年着々と積み上がっていくインカムゲインもですが、投資全体を考えた場合、売却価格が与える影響はより大きいものがあります。
自己資金の何倍ものお金が動くレバレッジが上手く作用するとなおさらです。逆方向に作用すると残債で返済できないという事態にもなりうるわけですが・・・
出口次第ではそれまでのインカムが吹き飛ぶくらいのインパクトになる場合もありますので、目の前のキャシュフローだけではなく、全体で考えることが大切です。

キャピタルは市況にも大きく左右されるため、予測が難しいところではあります。
地域別のざっくりとした特徴としては、都心物件は利回りが低めで最後の出口での利益が大きくなりやすい投資であり、地方物件は利回りが高めの一方、売却益がそれほどでもなく、全体で見れば利益が平準化される傾向があるといえます。
(もちろん、全てが当てはまるわけではありません。)
このような特徴を持つため、まずはキャッシュフローが出る物件中心に数年保有して現金を増やしてから、都心物件へと移行する人も少なくありません。
始めは、手元のキャッシュを厚めにして規模を拡大していくという戦略です。この場合、毎年インカムゲインが多く入ってくるため儲かっている気分になり、売却時に起きるかもしれないキャピタルロスにまで気が回らない方も少なくないのです。
「投資は、出口を迎えてはじめて利益が確定する」ことに留意しておく必要があります。

例を挙げて比較してみましょう。
以下を前提とします。
<都心型>
・物件:1億円、利回り8%
・空室率8%、経費率15~17%

<地方型>
・物件:1億円、利回り12%
・空室率13%、経費率18~20%

<共通>
・自己資金1,200万円(頭金600万円、諸経費600万円)
・ローン:9,400万円、25年、金利2%
・10年後に売却
・10年後の残債:6,190万円

利回り都心型8%地方型12%
10年後累積CF350万円1,700万円
10年後家賃見直し720万円(90%)960万円(80%)
①購入時と同じ利回りで売却できるとしたら・・・9,000万円8,000万円
②プラス1%の利回りで 売却するとしたら・・・8,000万円7,380万円
③プラス2%の利回りで 売却するとしたら・・・7,200万円6,860万円
④プラス3%の利回りで 売却するとしたら・・・6,545万円6,400万円

表②にあるように、都心型の場合、購入時+1%の利回り(9%)で売却できれば、残債を差し引くと8,000-6,190=1,810万円(売却経費・税金考慮前)の手残りとなります。
一方地方型の場合、表③にある購入時+2%の利回り(14%)で売却できるとすると6,860-6,190=670万円で、都心型との差額は1,140万円です。
双方の10年間の累積インカムゲインには1,350万円程度の差があるわけですから、この前提では地方型の方に軍配が上がります。
いや、地方型は購入時+3%くらいないと売れないよという場合は、売却時の差額が1,600万円出ますから、都心型の方が金額的には大きくなります。

このように出口を終えてみて初めてその投資がどうであったかが確定することに加え、10年間の資金の積み上がり方も異なります。(上記の場合、10年間のインカムゲインには1,350万円の違い)
仮にその投資によって残る金額が同じであっても、お金の「流れ」には相違があるのです。
特に手元資金があまりないという方にとっては、大きな違いではないでしょうか。物件の金額が大きくなれば尚更、絶対金額に乖離が出ます。

ここではわかりやすいように、「都心型」「地方型」としましたが、もちろん個々の物件の収益性やローンの金利、保有後の管理、売却価格によって数字は変わります。
双方の大まかな違いという点でご参考いただければと思います。
ご自身のスタイルをどうするかを検討する際に、このような特徴があることは予め意識しておく必要があるでしょう。

日本の場合、基本的にはインカムゲイン中心の不動産投資ではありますが、良くも悪くも売却価格のインパクトは無視できません。
ただキャピタルは予測が難しいため、計画に反映させる際には、楽観的な場合、シビアに見た場合等、いくつものシミュレーションを持っておいた方が良いでしょう。

現に、2008~2011年頃は、2015年に現在のような市況になることを予想する人はほとんどいなかったのではないでしょうか。当時購入していた方も、どちらかといえば「今購入しておけば、インカムゲインを得ながら、10年くらいのスパンで見ればいつか売却どきがあるだろう。」くらいのスタンスだったように思います。
そういう意味でも不動産投資・賃貸経営はやはり、中長期的な資産形成の手段なのだと実感しています。

【このコラムの著者】

北野 琴奈

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

1974年 北海道生まれ。
津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。
実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。

会社員の頃、資産運用の大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーの上級資格である、国際ライセンスCFP®資格を取得。
同時にロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだのをきっかけに、夢実現の手段として不動産投資・経営をはじめ、東京を中心に計104室まで保有。海外にもチャレンジし、アメリカの物件購入に到る。

TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。
一方、ワイン好きの趣味が高じて「ワインエキスパート」の資格を取得、ワインに関する講座を務める。
著書に、『逆算で夢をかなえる人生とお金の法則』、『47テーマで学ぶ家計の教科書』、『はじめての人のJ-REIT 基礎知識&儲けのポイント 』がある。

HP: http://www.kotonakitano.com/
blog: http://blog.livedoor.jp/kotonakitano/

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