不動産についてご質問を受けるのは日本国内のことが多いのですが、ここ数年は海外不動産についても聞かれることが増えました。
海外不動産と一口に言っても、国は様々。更には、同じ国でも地域により売買・賃貸の事情が異なることは珍しくありません。
私自身、実体験があるのは米国のカリフォルニア州とネバダ州であり、その他の地域や国については、見聞きはするものの実感を伴うわけではありません。
今年で米国における賃貸経営は9年目に突入し、購入から売却まで一通りの流れも経験してきた中で、上記2州については多少なりとも「こういうもの」という感覚ができてきたように感じます。
それでも何かトラブルが起きた時、それがお国(地域)柄なのか個別要素の強い事例なのかは、まだまだ判断が難しいところです。
滞納についての考え方
お世話になっている管理会社さんのご尽力もあり、これまで空室で困ることはあまりなかったのですが、突発的な修繕や滞納といったトラブルはいくつか発生しました。
なかでも、滞納についての考え方は日米で結構な違いがあることを実感したことがあります。
まず日本での場合、通常の賃貸借契約では借主の立場が手厚く保護されているため、通常、滞納があったとしても即座に退去してもらうことは難しいのです。しかるべき期間(3ヵ月程度が目安)と裁判などの法的手段を取るという煩雑な手続きが必要となります。裁判の前には、契約解除の予告通知書を内容証明郵便で送付といった段階を踏むことになるため時間もかかります。
一方米国の場合は、特に借主の立場の方が強いわけではなく、貸主の権利も十分に尊重されています。家賃滞納に対して何度か交渉を試みても状況が改善されない場合は、(3ヵ月といわず)退去してもらうことが可能です。その場合、費用はかかりますが、後々のトラブルを避けるためにも弁護士を通じて行った方が良さそうです。
また米国では、個人に割り振られている社会保障番号というものがあります。日本で言うマイナンバーのようなものです。この番号は生活の様々な場面で提示が必要になり、これまでの金銭トラブル等の履歴もリスト化されています。住居を借りる際にも番号を求められることが多いため、滞納履歴がついてしまうとその後、自分名義では借りにくくなることもあるそうです。
その他、「家賃滞納が発生したらさっさと退去してもらい、次の入居者の方を見つける方にエネルギーを注ぐ方が良い。仮に滞納分を回収できなかったとしても、日本と違ってすぐに退去ということができるのだから、迅速に対応すればそこまで痛手ではない。」という話しも聞いたことがあります。
確かに築年数を経ても賃料が下がりにくく空室も少なめ、長期で見れば物件価値が上昇していくという、日本とは異なる環境だと考えられているからこその視点だと感じます。
日本人は細かい?!
米国不動産と関わるようになり日米の考え方の違いで耳にすることが多いのが、「日本人は細かい」ということ。
期日を守る、定期的な状況の報告などといったことは、日本人の感覚では当たり前だと思われるかもしれませんが、実際問題として現場で常に徹底して行うことは難しいようです。日本とは違い、多様な人種がいることの影響も大きいのでしょう。
なかなか状況が変わらないのであれば、必要以上に目くじらを立てて疲弊するよりも、こちらとしても「正論を主張する」考え方を少し変えた方が、ストレス軽減されそうです。
このようなことを考えると、日本にいながら海外で不動産を保有する際には、日本人気質と現地気質、共に理解して上手く調整できる方々の存在が不可欠だと強く感じます。
私の場合も、信頼のおける方々に間に入っていただいていますが、各種「調整」にご苦労されているはずです。
日本においても地域により慣習の違いはありますが、国が変わると理解不能なことに出会うこともしばしば。その背景にある文化や根本的な考え方の違いを知り、相手を理解しようとする姿勢も必要です。
ある意味、自分のキャパシティーを広げる機会だと思えば、多少はおおらかな気持ちになれるかもしれませんね。