メディアなどで頻繁に話題にのぼることはないけれど、ふと思い出したように取り上げられるJ-REIT。
基本的にはインカムゲインを目的としていることもあり、普段の値動きは地味なことも多く話題性がさほどないからなのだと思いますが、だからこそ中長期の資産運用のひとつとして選択肢になりうるのかなとも感じています。
そんなJ-REITはここ数年、金融緩和やマイナス金利による恩恵を受ける金融商品として見聞きするようになりました。
現在、東証REIT指数は1,900ポイント前後で推移。これは、2016年4~5月以来の高い水準です。
2016年にマイナス金利が導入された直後は期待先行で価格が上昇しました(グラフ赤丸部分)が、以降2017年含めて価格自体は下落傾向でした。(金融庁による、毎月分配金を出す投資信託に対する否定的なコメントの影響も大。)一方分配金の水準は好調だったので、個人的には「静かな資産運用」と感じていました。
昨年2018年は価格も上昇基調に転じ、現在に到っています。
<グラフ1>

*東京証券取引所公表のデータより作成
J-REITは2019年4月現在で63銘柄、時価総額は14超円を超え米国に次ぐ世界2位の規模です。
各銘柄の価格は1.7万円~77万円程度まで。そのうち10万円台のものが43銘柄ほどありますから、不動産にしては比較的少額で取り組めるのではないでしょうか。分配金利回りは、2.9%~6.5%程度となっています。
更に小口を希望するのであれば、J-REITのETF(上場投資信託)もあり、こちらは2千円~2万円程度あれば購入できるものが大半です。
ここ数年の動向としてREIT指数と利回りをご紹介しましょう。
<表2>

*不動産証券化協会公表のデータより作成
債券的な性格を持つJ-REITは、基本的に価格と利回りは逆の動きをします。
通常価格が上がれば利回りは下がり逆も然りなのですが、それに当てはまらない動きも見られます。
現在2019年4月現在は、東証REIT指数が1,890前後、平均利回りが3.94前後で、例えば2014年と比較すると
東証REIT指数は、2014年末1,898 → 2019年4月1890 とほぼ変わらないのに対し、
平均利回りは、 2014年末3.02% → 2019年4月3.94% と上昇しています。
分配金の水準が切り上がったという見方もできるでしょう。
ただ、分配金は増えているがその分が指数に反映されないのは、投資家の市場に対する見方が懐疑的だとも考えられますから、今後の変動の仕方は気になるところです。
またJ-REITの「平均利回り」は、長期金利(10年国債利回り)を基準にして、リスクプレミアムをどのくらいプラスするのかという視点でも考えられます。ところがマイナス金利導入以降、これが正常に機能していないという指摘もあります。
長期金利が低下してもJ-REITの利回りは下がらないので、市場は現在の10年国債利回りを基準にはしていないのでは、ということです。
だとすると他に何か基準となるものがあるのかということも、判断材料のひとつとして気にかけていくと良さそうです。
J-REITの価格が上昇している要因のひとつに、主な投資家の一カテゴリーである外国人投資家の資金が、一時の売り越し基調を経て再び流入してきていることも挙げられます。世界的な金融緩和や低金利の影響は少なくないと思われます。
米国やEUによる利上げ先送りを受け、今後も資金流入が続く可能性もあるでしょう。
ただし外国人投資家は短期売買も多いため、資金の引き揚げも早く、値動きが大きくなることも想定されます。
懸念はありながらも時価総額も伸ばし成長してきているREITですが、ここ数年物件価格が高止まりしていることには注意が必要です。各REITも、高値づかみにならぬよう物件取得には慎重になっているところも見受けられます。
何らかのきっかけで、物件価格下落、賃料下落という状況になった時にも乗り切るだけの体力は必須だと、特にリーマンショックを経験した銘柄は痛感しているのではないでしょうか。
昨年は、皆さんもご存じのように不動産業界の不祥事が重なったことやこれまでの賃貸物件に対する過剰融資→空室増加等が指摘されたこともあり、金融機関の融資スタンス変化により過熱しつつあった不動産市況にブレーキがかかったという状況がありました。
そのような中、日本不動産市場を牽引するひとつとして考えられるJ-REITがどのような動きを見せるのか。
株式のように派手な動きは少ないですが、国もJ-REIT市場の拡大を目指していることもあり、今後も存在感を少しずつ増していく可能性はあると感じます。