2001年の誕生以来、少しずつですが金融商品の一つとして個人にも認識されてきたJ-REIT。
前回は、ここ数年の価格と分配金の推移をご紹介しました。
分配金利回りの平均は4%前後で推移し、時価総額で14兆円を超えたとはいえ、株式市場(東証一部)の600兆円前後と比較するとまだまだ知名度は低い、もしくは「よくわからない、難しい」という声の方が多いのでしょう。確かに、不動産ということでハードルが上がる面はあるのかもしれません。
しかしながら、J-REITはいたって透明性が高く、直近の運用状況やこれまでの推移も含めて、誰でも閲覧可能な詳細資料が豊富です。
インターネット使用可能な状況であれば、情報収集は問題なく行えると言えます。
それに加えて、各投資法人の運用報告会や、複数の投資法人が集まるJ-REITセミナーなどに足を運んでみるのもリアルで面白いと感じます。
投資法人からの説明はもちろんなのですがそれだけではなく、参加している個人投資家の皆さんからの質問や応対にも、興味深いものが結構あります。
例えばこんな感じ。
質問:「現在の借入金は、金利の低いところに借り換えをしないのか?」
答:「金融機関との良い関係を出来るだけ保つ意味もあり、全てを借り換えする訳ではない。全体のバランスを考えながら検討している。」
基本的には合理的に動く部分が多いのでしょうけれども、そうは言っても長く良い関係を維持するためには、全てにおいて効率を求める訳ではないということは、中長期視点で運用するJ-REITならではと感じます。
投資家としては賛否両論があり意見は分かれるところだとは思いますが、投資法人のカラーが出るのでしょう。
質問:「地震保険には加入しないのか?」
答:地震による予想損失(地震PMLという、建物が被る損失額の程度を予測した数字を使用)と地震保険加入の費用を比較し、分配金に与える影響とどちらが大きいのかを判断している。
地震保険は火災保険に比べて保険料が高いというのは、個人で購入する住居なども同様です。J-REITも、PMLの数値が高いなど一部の物件では地震保険に入っていますが、数としては多くはありません。
J-REITほど分散が効いていない個人の場合は、1つの物件のダメージが与える影響が大きいため、地震保険は基本的に入った方が良いのではないかというのが、個人的な見解です。
質問:「ポートフォリオ入れ替えに伴い、高値でも売却ができているが、売却先はどこなのか?(高値でも、購入するのは何故?)」
答:「売り買いともにそれぞれの事情があり、期待する「利回り」も異なるため、高値だから購入せず様子を見るという人もいれば、今欲しいことが優先である人もいる。」
それぞれの事情があるというのは、本当にその通りだと感じます。安い時に購入し相場が良い時に売却したい、という思いは皆さん共通だとしても、実際にできるかどうかは別です。資金調整やマインドの問題などのハードルがあり、結果的に売買のタイミングは各々異なってきます。
J-REIT自体は証券化された金融商品ですが、分配金の源泉となるのは実物不動産からの賃料収入がメインですから、賃貸経営を行う個人にとっても共通点が多いでしょう。投資法人側が投資家からの質問に対してどのような答えをするのかで、それぞれの性格・特徴が垣間見られますから、やり取りには興味がありますし私自身の方向性の再確認にもなります。
個人投資家の方々は基本的に自身のお金を運用しているわけですから、上記のようなもの以外にも率直な質問が多いなという印象です。(特に年配の方は、普通は躊躇しそうなところをずばっと聞いたりもするので、別の意味でも勉強になります。)
・稼働率が良い地域のことばかり強調して、あまり良くないところの説明が不足しているのでは。
・分配金の原資となる内部留保、そんなにあっても自分が生きている間に受け取れないと意味がないので分配金に回して欲しい。
・○○(別のJ-REIT銘柄名指し)は話しにならないけど、それと同じようなことをしようとしているのでは。
などというような質問もあります。
投資法人から直接説明を聞く機会は、開示資料や数字からだけでは得られない、感覚的なものも含めた総合的な判断を可能にすると感じます。