北野 琴奈の不動産投資コラム

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

収益不動産とマイホーム 売却時に使える優遇の違い

住宅市況の良し悪しは人々の生活や経済に与える影響も大きいため、税制などで優遇措置が設けられていることが少なくありません。ただ同じ住宅でも、マイホームに対しては比較的手厚い優遇が継続的にありますが、それに比べ収益不動産に対する税制優遇は少ない(相続に関係するものを除けば、継続的な優遇はほぼ無い)と言えます。まぁ、当然といえばそうですね。

特に、売却益に対してかかる税金には大きな違いがあります。
まず何と言ってもマイホームの場合は、諸要件を満たせば売却益が3,000万円までは特別控除の適用を受けることができ、結果として税金がかからないことが大きいでしょう。
売却益3,000万円まで課税されないとは、大きな免税ですね。収益不動産であれば、税率20%だとしても600万円もの税金になるわけですから。
もっともマイホームの場合は、最初から運用や投資という視点で購入する方は多くないはずで、たまたま売買のタイミングが上手く合い、利益+税制優遇を享受できたという状況が一般的なのだろうと思いますが。

3,000万円を超えて売却益が出る場合も、所有期間が10年を超える場合はマイホームの方が税率は下がります。売却益にかかる税率は、以下の通り。(復興特別税は考慮しない)

収益不動産
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年以下で39% 
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年超で20%

マイホーム
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年以下で39%
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年超で20%
売却した年の1月1日時点での所有期間が10年超で14%(売却益6,000万円まで。それ以上は20%)

マイホームであれば売却益3,000万円までは税金がかからないし、10年超住んでいたら売却益が3,000万円を越えても6,000万円までは税率14%なのですから、収益不動産との違いは大きいですね。

逆に、残念なことに売却をして損失が出ることもあるでしょう。その場合もマイホームには優遇があります。
収益不動産と比較すると。

収益不動産
不動産の売買の中でのみ損益通算が可能です。 つまり、同じ年に損失が出る不動産と利益が出る不動産を売却すると相殺ができる ため、仮に一方の不動産売却利益が1,000万円、もう一方の不動産売却損失が800万円だとしたら、差し引き200万円に対して課税されるということです。ただし一般の方が、この損益通算をタイミング良く使うのは簡単ではないはずです。収益不動産の場合、マイホームの場合では可能な、給与所得などとの相殺はできません。

マイホーム
一定の要件を満たせば、給与所得などの他のプラス所得と損益通算ができますから、損失が出る場合に使えるケースは多いでしょう。
更に、1年で通算し切れない場合はその損失を3年間繰越して相殺することも可能です。
利用できるケースはまず、売却後に住宅ローンを利用して新しいマイホームを購入する場合。買い替えですね。
また、売却後に新たなマイホームを購入しない場合でも、住宅ローン残高から売却価格を差し引いた金額までは損益通算の対象となります。ざっくり言うと、売却時にローン残高が3,000万円だったとして、売却価格が2,000万円だとすると、差し引き1,000万円を上限に給与所得等と相殺できるということです。
(いずれも、本人の1年の所得が3,000万円を超えないことも要件。)

このような優遇を考えると、自宅を転々としながら資産を増やしていく、ということに興味を持つ方もいるでしょう。いわゆる「ヤドカリ投資」などと表現されることもあり、特に珍しいことではありません。賃貸住宅で負担していた家賃分を住宅ローン返済にしつつ、資産を形成できる可能性があることに魅力を感じるのですね。
また税制ではないですが、一般に住宅ローンの金利は収益不動産用ローンと比較して低いため、ローン返済の負担も少なくなります。

ただし、ヤドカリ投資は=物件の選び方や市況のタイミングにより収益は大きく左右されますから、簡単に上手くいくとはいえないでしょう。
また、あくまで自宅ですから、自分や家族の嗜好も入れた住宅を選びたいという方も多いはずです。
と考えると、積極的に不動産投資として考えるというよりも、上手く市況に乗れた場合に活用できる税制として知っておくと良いのかもしれません。
もちろん、タイミングが良かったとはいえ一度良い思いを経験すると「不動産」に目覚める方もいらっしゃるかもしれませんね。

【このコラムの著者】

北野 琴奈

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

1974年 北海道生まれ。
津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。
実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。

会社員の頃、資産運用の大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーの上級資格である、国際ライセンスCFP®資格を取得。
同時にロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだのをきっかけに、夢実現の手段として不動産投資・経営をはじめ、東京を中心に計104室まで保有。海外にもチャレンジし、アメリカの物件購入に到る。

TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。
一方、ワイン好きの趣味が高じて「ワインエキスパート」の資格を取得、ワインに関する講座を務める。
著書に、『逆算で夢をかなえる人生とお金の法則』、『47テーマで学ぶ家計の教科書』、『はじめての人のJ-REIT 基礎知識&儲けのポイント 』がある。

HP: http://www.kotonakitano.com/
blog: http://blog.livedoor.jp/kotonakitano/

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