地価の動向
不動産動向の目安を知る指標には、様々なものがあります。地価を客観的に判断するものとして有名なのは、毎年3月公表の公示地価(国土交通省)と9月公表の基準地価(各都道府県)が挙げられます。
ただそれぞれ年1回の発表ですから、物足りないという方も。
もう少しこまめに動向を知りたいという方は、3カ月に1回公表される地価LOOKレポート(国土交通省)
を参考にできそうです。
対象地区は三大都市圏、地方中心都市限定になりますが、地価の上昇、下落、横ばいが矢印や色で示されているので、ぱっと見て全体の傾向がわかりやすい形でまとめられています。
より詳しく知りたい場合は、地区別に解説も記載されているので参考にできそうです。
直近では、令和2年4/1〜7/1の地価動向が8月に公表され、全体の地価動向はこれまでの上昇傾向から、横ばい・下落地域が増加した結果となっています。
例えば東京圏において、1/1〜4/1は上昇地区60.5%、横ばい37.2%、下落2.3%であったのが、4/1〜7/1は上昇地区0%、横ばい88.4%、下落11.7%です。
現在、不動産市場ではまだ様子見ムードも感じられますが、今後下落傾向が鮮明になれば、割安と見た投資家等が購入に動くことも考えられます。
そのような場合でも全てが良い物件というわけではないので、良し悪しを見極めることが必要です。
不動産投資のキモは賃料
不動産の大きな魅力のひとつに、比較的安定した賃料収入が挙げられます。現在の日本では、賃料が2倍、3倍になることはまずないですが、逆に1/2、1/3になることもほとんど考えられません。(事故や事件などによる、一部例外はありますが。)
物件の良し悪しを判断し、この不動産投資のメリット「安定性」を享受するには、購入検討時には入居状況を様々な視点から把握しておくことが大切です。通常は売主側からレントロール(賃料表)をもらい、そのチェックをすることになります。
契約開始時期と賃料の額
まずはざっと見て、賃貸契約開始時期に注目です。(記載がない場合は、売主側に聞きましょう。)賃料は景気等の影響を受けているはずですから、賃貸期間が長ければ現在の市場との乖離があると思われます。よって、現在の入居者の方が退去した際に想定される賃料に引き直しを行います。ただし2年更新の際に賃料を改定している可能性もありますので、それも念頭に置きつつ相場から適正賃料を設定します。
加えて、契約開始が繁忙期(1〜3月前後)の場合は賃料が多少高めでも決まることも多く、7、8月頃の閑散期は賃料が低めで決まるケースも多いことも知っておくと良いと思います。
また一棟アパートやマンションは一般に、満室の方がスムーズに売却できる傾向があるため、空室があっても意図的に満室にして売却するといった手法がとられていることがあります。この場合、購入後ほどなく退去となり、同じ賃料では入居が決まらないといったこともありますので、予め注意しておくと良いでしょう。
今後、新型コロナの影響で気をつけておきたいことは、会社からの家賃補助についてです。最近は会社の福利厚生の一環で家賃補助が比較的多く出ている話しも耳にしますが、企業の減益が続けば福利厚生の見直しが出てくる可能性も考えられそうです。
属性
物件購入検討時に、入居者の方の属性までチェックできることはあまり多くないかもしれません。レントロール自体に記載されていることはほとんど無いように感じます。
ですから、仲介を通して可能な範囲でのヒアリングや現地調査などから調べていくことになります。
売り主側の仲介がその物件の管理もしているのであれば、情報をもらいやすいでしょう。
一般に大きな会社に勤務している等は安心材料になりますが、中には金銭管理がルーズな人もいます。賃料支払いの優先順位が低く、もらった給料はまず自分の好きなことに使ってしまい、何回話しをしても直らないといった事例もありましたから注意が必要です。
また近年は、外国人の方も増えています。留学や仕事などの関係で一時的に日本に住んでいるという場合は、突発的なことが起きた際に、自身の国へ帰国してしまうこともあります。外国人の方の比率が高ければ、一斉に退去ともなり得ますので、リスク想定しておきたいところです。最近では、リーマンショックや東日本大震災時がそのような感じでした。
滞納・トラブルの有無
レントロールからだけではわからない場合もありますから、仲介を通して確認しましょう。滞納については、表面的には問題ないように見えても、保証会社からの支払いになっているということもありますので、チェックしておくと良いでしょう。
トラブルも様々なものがあります。以前、騒音トラブルが何度か起きている部屋がありました。音を出している本人は騒音だと思っていないのですが、隣室からのクレームは何度かありその場では対処したとしても、やはり退去になってしまう頻度が高くなりがちでした。このように、購入検討時点では入居者の方がいたとしても、一見分かりにくい内情を抱えている場合も考えられます。
また、現時点では問題がなくとも過去に滞納やトラブルがあった場合も考えられますので、念のため遡って聞いておくと安心です。
不動産投資が比較的安定しているといわれるのはやはり、賃料というインフラといえるものが源泉となっているためです。
その恩恵を受けるには、表面的な数字だけではなく賃料の実態をきちんと把握しておくことが大切です。今後の不動産動向を注視しつつ、良いご縁を見極められる目を養っていきましょう。