北野 琴奈の不動産投資コラム

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

相続対策と不動産投資、その違い

80年代後半のバブル経済以降、不動産投資という言葉をごく一般に耳にするようになったのは、2000年代になってからです。
それまでアパートマンションを建てる方の大半は、土地を持っていたり相続対策が必要な方々で、メインとなる目的は、保有する資産の評価減効果を得たいというものでした。
2000年に入ってから、そのような相続対策ではない、比較的若い世代(20〜50代)が徐々に不動産投資に興味を持ち始め、実際に手がける人が増えました。こちらの目的は、早期リタイア、リタイア後の資産づくりなど、「相続対策」とは異なる視点を持っています。

当時、様々な書籍やネット情報が急速に増えていった中、不動産投資はひとつの分野として確立され、今では相続対策と共存するようになりました。
どちらも結果的には賃貸経営という同じことを行うのですが、アプローチが異なります。
今回は、それぞれを比較してみようと思います。

それぞれの事情

<相続対策>
相続対策の背景でまず挙げられるのは、相続税を減らしたい、遺された家族間に争いが起きないようにしたい、ということです。
現金や他の金融資産よりも評価減効果を得やすい不動産を有効に活用することで、対策をします。また国税庁の資料によると、相続財産に占める不動産の割合は現在30%程度(平成30年分)。他の財産と比べて分割しにくいこともあり、より相続人の状況を踏まえた対策が必要になります。不動産売却や分割等は時間もかかりがちなので、早めから取り組みたいところです。

評価減効果以外に最近よく耳にするようになったのは、「生活資金を確保したい」というものです。以前と比べて平均寿命が延びているため、次世代に向けた相続対策をしながらも自分(たち)の生活資金も必要になっている、という状況がわかります。そのため、財産の評価額を下げながら賃料も得られる賃貸経営に魅力を感じるという声もあります。

平均寿命が延びていることで、相続する側も高齢になってきています。そのため、生前贈与も上手く併用しながら対策をする方も増えているように感じます。

<不動産投資>
相続対策とは異なり、現役世代が将来を見据えた資産形成、または早期リタイアを目指して、運用のひとつとして不動産投資を、という声が多くあります。
一般には、給与所得を得ながら属性を活かし、借り入れでレバレッジを効かせた不動産投資を手がけることが多い状況です。現時点で保有する土地や現金等の資産は少ないため、購入できるかどうかは金融機関の融資スタンスに大きく左右されると言えます。
まだ若いため、将来に向けて効率よく資産を作りたいということで、借り入れを活用して資産を増やしていくことができる不動産投資に興味を持ち実際に始める方も多いようです。フットワークも軽く、情報交換や勉強会等へも積極的に参加する方も比較的いるように感じます。

一部、若いながらも金融商品などで資産を築いた方、株式上場で資金を得た経営者の方などが、資産を分散したいということで始めるケースもあります。

注意点

<相続対策>
相続対策の方の多くは、土地や資産があるため収支を厳しく見なくても成り立ちやすい、ことがあり、それが良くも悪くも作用するように感じます。良い点としては、そこまで厳しいコストカットをする必要がないので、周囲との関係性を保ちやすいことや、資産価値は高いけれど利回りとしては低めになる地域での賃貸経営をゆっくり時間をかけて行えることがあります。
一方、油断してしまいがちな点としては、出された収支シミュレーション等を自身でしっかり検討せず、言われたことを鵜呑みにしてしまう可能性があることでしょう。
チームワークは大切ですが、最終的な責任は自身にある、大切な資産を守るのは結局自身だという意識が大切です。

<不動産投資>
早期リタイアを目指すなど、短期間で資産を作りたいという願望があると、借り入れを利用して次々に新しい物件を購入する方もいます。何か問題等なく順調に行けば良いですが、手元に現金が少ない場合、ギリギリのローン返済計画を組んでいると、突発的なことに対応できない場合もあります。

特に中古物件の場合は、購入した途端に設備故障があることは珍しくありません。10万円程度の給湯器やエアコンくらいであれば何とかなるとしても(複数戸になれば、それなりにかかりますが・・・)、給排水設備やエレベーター、オートロックなどの修理となると、数十万円以上100万円単位の費用になることも。
また突発的なことではありませんが、「想定外」に空室が長く続く状況も考えられます。

加えて手元現金が少ないと、税金(固定資産税、所得税・住民税)についても、納税通知書が来た時に慌てることになりますので注意が必要です。予め収支計算に入れて、納税のタイミングも含めて管理することが求められます。

次の購入までの期間が短ければどうしても手元のキャッシュが少なくなりがちですから、注意点として意識しておいた方が良いでしょう。

相続対策と不動産投資とでは、賃貸経営をする事情や目的に違いが見られます。
ただしそれは、入居者の方には関係ありません。入居者の方にとっては、「自分が住みたい住居を借りる」、ただそれだけですから、オーナーの事情はそれぞれだとしても「賃貸経営」の根本的な部分を忘れずに、「選ばれる」住居を作っていく必要があるでしょう。

加えて、自身の日々の仕事の中でコスト意識が高かったりすると、不動産投資においてもコストに厳しくなりがちです。もちろん費用対効果について考えることは大切ですが、必要以上になってしまうと、周りとの調整が難しくなり、結局賃貸経営も上手くいかなかくなってしまうこともありますから、バランスが大切です。

最近は、これまで相続対策で賃貸経営をしてきた方々が不動産投資に興味を持ち、土地から購入、または既存の物件を一棟購入する、という、「運用、投資」を手がける話しも聞くようになり、不動産投資の裾野が広がりつつあるのだと感じます。

【このコラムの著者】

北野 琴奈

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

1974年 北海道生まれ。
津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。
実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。

会社員の頃、資産運用の大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーの上級資格である、国際ライセンスCFP®資格を取得。
同時にロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだのをきっかけに、夢実現の手段として不動産投資・経営をはじめ、東京を中心に計104室まで保有。海外にもチャレンジし、アメリカの物件購入に到る。

TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。
一方、ワイン好きの趣味が高じて「ワインエキスパート」の資格を取得、ワインに関する講座を務める。
著書に、『逆算で夢をかなえる人生とお金の法則』、『47テーマで学ぶ家計の教科書』、『はじめての人のJ-REIT 基礎知識&儲けのポイント 』がある。

HP: http://www.kotonakitano.com/
blog: http://blog.livedoor.jp/kotonakitano/

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