平賀 功一の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

なぜ今、不動産投資が人気なの? 3つの理由と今後の見通し

今般、現物の不動産投資に注目が集まっています。

今年9月、首都圏を中心にデザイン性が高い賃貸アパートなどを販売する明豊エンタープライズが公表した2021年7月期(2020年8月~21年7月末)の連結決算は増収増益となりました。コロナ災禍にあって、「投資用不動産の販売案件が、いずれも安定した利益率・利益額を確保できたことに加え、新型コロナウイルス感染予防対策のため、対面営業や展示会・セミナーの中止・縮小によって広告宣伝費が圧縮され、販売費および一般管理費が削減できた」(決算短信より引用)と同社は理由を説明しています。これに先立ち、すでに今年7月には年間配当額(予想)を1株あたり「5円」から「8円」へと引き上げており、主力事業の堅調さが見て取れます。

同様、資産運用型マンションを主力事業とするFJネクストも、次期(2021年4月~22年3月末)の業績を増収増益と予想しています。「不透明な状況が続くなか、首都圏の賃貸需要については単身世帯の増加を背景に、今後も底堅く継続していく」(決算短信)と見ており、自社ブランドの継続的な開発・供給に余念がありません。そうした甲斐もあってか、同社は「首都圏投資用マンション供給ランキング」(不動産経済研究所)で2019年と20年の2年連続で第1位を獲得しています。新築マンションを中心に販売は堅調で、業績は概ね計画通りに推移しています。

こうした企業業績の好調さは、不動産投資が資産形成の王道として浸透・定着している証左と解されます。今般、投資用不動産のニーズは高く、すでに市民権を得るまでに認知度は高まっています。しかも、その対象は一部の大地主や富裕層に限定されず、サラリーマンや個人事業主にも広まっています。すそ野は確実に広がっており、不動産投資は一過性のブームでは完全になくなっているのです。

その火付け役となったのが「金持ち父さん 貧乏父さん」です。ご存じ、ロバート・キヨサキ氏のベストセラー作品であり、影響力は絶大でした。私事にはなりますが、当時、不動産投資に関するセミナーやコラムの執筆依頼が増えたのを今でも覚えています。不労所得(不動産投資)の魅力や必要性を世に説いた功績は“カリスマ級”といっても過言ではないでしょう。同書が一大ムーブメントの起点として作用したのは疑う余地もありません。

資産バブルとリーマンショックを乗り越え、再びマンション投資は脚光を浴びる

 ここで、投資用不動産の供給推移を確認しておきましょう。不動産経済研究所が今年8月に公表した「2021年上期および2020年年間の首都圏投資用マンション市場動向」によると、発売戸数には鮮明な「山」と「谷」が見られます。バブル崩壊によって日本経済は大打撃を受け、マンション供給は下降を余儀なくされましたが、1995年(553戸)にはボトムを付け、V字回復しています。2000年代半ばにかけて戸数を大きく伸ばし、2007年には9210戸と初の9000戸を突破しました。

その後、リーマンショック(2008年)によって、再び、ダウントレンドに傾斜するものの、東日本大震災(2011年)の影響も見られず、現在、投資用マンションの発売戸数は総じて右肩上がりの軌跡を描いています。誰もが「金持ち父さん」になりたいと、日々、不動産投資への参加意欲を高めているのです。すでに終身雇用は形骸化し、公的年金だけでは生涯にわたって十分な暮らしが約束されない事実も判明しました。自己責任・自助努力が求められる社会環境のなか、不労所得を手に入れる必要性に多くの人が気付いたのです。

投資用マンション発売戸数の年次別推移表(単位:戸)

【出典】不動産経済研究所

https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/474/md20210811.pdf
「2021年上期および2020年年間の首都圏投資用マンション市場動向」

不動産に対する評価基準が「坪単価」から「利回り」へと変わる

 実は、こうした投資熱を水面下で演出しているのが「収益還元法」です。収益還元法とは、3種類ある不動産鑑定評価方法の1つで、土地・建物から生み出される収益(家賃やテナント料)を基礎に不動産価格を評価する鑑定方法です。90年代後半、わが国は資産バブルの崩壊により多額の不良債権を抱え込みましたが、その資産査定に活用されたことで広く認知されるようになりました。これまでの「坪単価」による比較ではなく、「利回り」によって資産価値を判定する評価手法です。

 ただ、突然に「収益還元法」と言われても、大多数の人はピンと来ないでしょう。無理もありません。そこで、考えてみてください。今では住宅情報誌やネット記事を見れば、必ずと言っていいほど「売りやすい・貸しやすい物件を選べ」とったフレーズが目に飛び込んできます。なぜなのでしょうか?

 実は、収益還元法が立役者となり、実需目的のマイホーム購入にも投資的な視点が不可欠という観念を植え付けました。いざとなれば「売れる」「貸せる」といった“出口戦略”が、住宅の取得時にも求められるようになっています。住宅に内在する収益性の高低がマイホームの魅力(資産価値)を決定付けるのです。要は、この段階で誰もが投資感覚に触れているわけです。自覚の有無にかかわらず、「売りやすい」「貸しやすい」物件選びを始めた時点で、不動産投資の第一歩を踏み出しているのです。

低金利による運用難のなか、緩和マネーの受け皿として不動産投資が注目される

 今般の不動産投資人気には、さらに2つの理由がありました。より直接的な要因として、2つ目は現物不動産への投資が緩和マネーの受け皿として選好されている点です。

 今ではあまり見聞きしなくなったアベノミクスですが、とりわけ第1の矢である「大胆な金融政策」はポジティブ・インパクト(良い影響=プラス材料)として投融資市場に受け止められました。2013年3月に黒田東彦(はるひこ)氏が日本銀行の総裁に就任し、市場の活性化を促すべく「数々の政策的な後押し」=「黒田バズーカー」(異次元の金融緩和)を乱発しました。副作用は承知のうえ、国債やETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)といった資産を買い入れ続け、さらに2016年にはマイナス金利政策も導入するなどして、2%の物価安定目標の実現に腐心しています。

 その結果、日銀の狙い通り長期金利はゼロ%近傍を維持し、ジャブジャブと揶揄(やゆ)されるほどの通貨供給量が市中に出回るようになりました。皮肉にも、こうした緩和マネーが低金利による運用難のなか、相対的に高い利回りが見込める不動産投資へと流れ込んでいるのです。

 言うまでもなく、パンデミックは全世界の懸念材料です。そのため、日本に限らず米国や欧州でも大規模な金融緩和政策が実施されています。主要国の政府と中央銀行が景気の下支えや金融安定化のために協調姿勢を強めています。こうした支援材料も後押しとなり、イールドスプレッド(利回りの差)水準などから判断して値ごろ感や割安感が感じられる日本の不動産に世界の緩和マネーが資金流入しています。

 さらに話を日本に戻しますが、国内の金融機関が投資用不動産関連の貸し出しに前向きな点も遠因として挙げられます。関心が高まる不動産投資への融資を銀行サイドも商機と捉えているのです。企業への貸し出しが先細りを余儀なくされる中で、地方銀行を中心に個人向けの不動産融資を拡大しています。その根底には、コロナ災禍で不動産に代わる収益源の開拓が難しくなっているという金融機関側の事情がありました。不動産投資に対する各行の資金融通の積極化が3つめの理由として挙げられます。

いびつな不動産価格構造 金融政策の行方が今後のカギ

最後に、今後の不動産市場の見通しを展望します。

9月21日に国土交通省から発表された2021年の基準地価(7月1日時点)は、住宅地や商業地など全用途の全国平均で2年連続の下落となりました。公示地価や路線価と同様、パンデミックを真因とするインバウンド需要の剥落が地価を押し下げました。

にもかかわらず、特にマンション価格は都心部を中心に高止まりを維持しています。首都圏では新築マンションの平均価格がバブル期を超えました。収益還元法の浸透により「売りやすい」「貸しやすい」といった利用価値の高い土地・建物は価格が上昇する一方、「売りにくい」「貸しにくい」“負”動産は下落しています。優勝劣敗がより鮮明化しているわけです。

このように不動産価格は全体の方向感が一致しない、いびつな価格構造を形成しています。個人的には、今後、より濃淡の強い「まだら模様」の価格構造が進展していくものと予想しています。

同様に、金融政策の行方も気がかりです。やや専門的な話になりますが、9月下旬に開催された米国の金融当局の会合(FOMC)で「経済の改善が概ね予想通りに進めば、資産購入のペースを早急に緩和する必要がある」との発言がありました。アメリカでは早ければ年内にも資産購入の段階的縮小を始め、2022年に利上げ(ゼロ金利を解除)を断行する可能性が現実味を帯びています。

翻って、日本銀行は2%の物価安定目標を達成できず、異次元の金融緩和を解除する見通しは立っていません。政策スタンスは日本と米国で「逆方向」へ動き出そうとしており、手順を間違えると緩和マネーの逆流を誘発するおそれがあります。当然、金融政策の混乱は不動産投資にマイナスに作用します。過度に投資家心理を刺激しないよう、中央銀行には市場との上手な会話が求められます。マーケットが動揺しないよう十分な時間と説明を重ねながら、金融政策の正常化へ向けて動き出してほしいのです。

 上述した3つの理由により不動産投資を始める環境はすでに整っています。金持ち父さんになるか、それとも貧乏父さんになるか?―― 皆さんの決断力が試されようとしています。

【このコラムの著者】

平賀 功一

e住まい探しドットコム代表
AFP/宅地建物取引士/管理業務主任者/福祉住環境コーディネーター/住宅ローンアドバイザー/二種証券外務員

第一不動産グループの住宅販売会社にてマンション販売のプロジェクトを任され、モデルルームの設営から広告代理店との広告やチラシの打合せ、アルバイトの管理、事業主や施工会社との交渉、販売スケジュールの作成、販売収支の管理、契約業務全般などを歴任。三井不動産販売(株)への出向経験あり。
1999年に住宅コンサルタントとして独立し、e住まい探しドットコムを設立。

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