平賀 功一の不動産投資コラム

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投資家なら知っておきたい3種類ある不動産鑑定評価方法

コロナショックに翻弄された1年 2021年の公示地価を振り返る

「不動産価格は分かりにくい」―― よく耳にする言葉です。一体なぜなのでしょうか? そのヒントを探るべく、まずは2021年の公示地価を振り返ってみましょう。

 国土交通省から公表された2021年の公示地価は6年ぶりの下落となりました。住宅地(全国平均)は前年比マイナス0.4%となり、5年ぶりの下落です。また、商業地(同)はマイナス0.8%となり、こちらは7年ぶりの下落となりました。

これにより日本有数のショッピング街「銀座8丁目」(東京都中央区)はマイナス12.8%の大打撃です。東京圏の商業地で最も下落しました。コロナショックにより、インバウンド需要が一気に蒸発したためです。2020年に年間4000万人の訪日を目指した外国人客数の政府目標は、ふたを開けてみると約411万人という結果でした。伝染病という見えない恐怖が国内の経済活動を自制させました。

 しかし一方、上昇している地域も各所で散見されました。テレワークの普及による住宅観の変化や、ステイホームによる巣ごもり需要が地価上昇要因として作用しました。たとえば、静岡県の熱海市春日町は県内の住宅地で上昇率が第1位でした。また、日本を代表する有数のリゾート地・長野県軽井沢も同様で、首都圏の高所得者層を中心とする別荘地需要が地価上昇をもたらしました。

このように、ひと口に公示地価といっても、その中身はすべてが同一方向に動いているわけではなく、ある場所は「上昇」、またある場所は「下落」といった硬軟入り混じった“まだら模様”を呈しています。世界を震撼させたパンデミックが、日本の地価を上へ下へと大きくゆさぶった格好です。

 冒頭に立ち返り、なぜ、不動産価格が分かりにくいかというと、こうした様々な価格形成要因が常に変動しているからです。各要因は固定的ではなく、拡大縮小・集中拡散・ 発展衰退といった変化を繰り返しています。影響を与え、同時に影響を受けるという点において、不動産は相互作用しており、地域特性や利用目的、権利関係の態様、さらに取引の需給動向や国内外の経済状況など、あらゆる要因が相関結合して土地価格が形成されます。そのため個別事情に左右されず、客観的で合理的な不動産の市場価値を評定するには、それに見合った評価方法で算定する必要があるのです。

 そこで、知っておいてほしいのが不動産鑑定評価方法です。資産運用では「収益性」「安全性」「流動性」が重要になるわけですが、誰もが儲けるために投資している以上、当然、収益性が最優先されて然るべきでしょう。株式の売買同様、割高な時に物件を高値づかみしてしまうと、期待通りの利益は確保しにくくなります。

不動産には「流動性に劣る」という弱点があります。そのため投資に失敗したからといって、すぐに撤退(売却)とはいきません。つまり、物件選びには選択眼が求められます。いかに物件を割安で取得できるかが成否を二分するのです。その点、不動産価格の算出プロセスを知ることで、価格の妥当性が見えてきます。値ごろ感のある、お値打ち物件を手に入れやすくなるのです。

売り主が売りたい価格が原価法 不動産仲介の査定に使われるのが取引事例比較法

 では、ここからが本題です。不動産鑑定評価方法とは、具体的にどのような方法なのでしょうか。現在、「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」の3種類が使われています(下表参照)。

原価法とは、敷地の取得費(造成費を含む)、建物の標準的な建設費、販売・広告費、人件費、さらに適正な利益を積算・合計して試算価格を求める方法です。ハウスメーカーやマンションデベロッパーといった供給サイドの立場に立った価格といえます。かなり極端な表現をすると、供給側が「売りたい価格」となります。

 次に、取引事例比較法とはマーケットが正常に機能している時、駅からの距離や広さ・築年数など、各物件の地域要因や個別要因を比較し、同条件の物件がいくらで取り引きされているか?―― こうした大量のサンプル(成約事例)をもとに価格を類推する方法です。その際、市場において発生した実際の取引事例を価格判定の基礎とするため、偏りのない事例を収集する必要があります。売り手と買い手が折り合った(=偏りのない)結果として、売買が成立した事例が多く存在する場合に適用できる鑑定方法です。

 なお、この方法は不動産仲介における査定価格を算出する際にも採用されています。不動産仲介会社は宅地建物取引業法の規定に基づき、類似物件の取引事例や市場動向を勘案のうえ、向こう3カ月のマーケット予測を加味して査定価格を算出します。

 なぜ、3カ月かというと、媒介契約は契約期間が3カ月だからです。この期間内に成約できる前提で業者は査定しています。査定業務はマニュアル化されており、景気や金利動向、不動産市況、さらに周辺エリアにおける需給バランスなども考慮して算出されます。それでも3カ月後に売れ残った場合、仲介業者の査定価格が不正確だったということになります。

3種類の不動産鑑定方法

原価法(主に新築物件)「もし、建物を新築したら、いくら費用がかかるか」というように、対象不動産の再調達原価から対象不動産の試算価格を求める手法
取引事例比較法(主に中古物件)駅からの距離や広さ・築年数など、各物件の地域要因や個別要因を比較して、同条件の物件がいくらで取り引きされたか、多数の取引事例をもとに対象不動産の試算価格を求める手法
収益還元法(主に投資物件)対象不動産が将来生み出すであろうと期待される収益をもとに対象不動産の試算価格を求める手法

「収益力」=「利用価値」を裏付けとして鑑定評価する方法が収益還元法

 続いて3番目、収益還元法の説明に進みましょう。収益還元法とは土地と建物を一体とみなし、そこから生み出される収益(賃料やテナント料など)に応じて不動産価値を評価する方法です。アパートや賃貸マンションはもとより、ロードサイド店舗やコインランドリービジネスに至るまで、その不動産を運用・経営して得られる収益力(利用価値)が不動産価値を決定付けます。「坪単価」ではなく「利回り」に着目した手法といえます。まさに投資家の立場に立った鑑定方法なのです。

 冒頭、公示地価に触れましたが、公示地価は土地の本来の価値を示すべく、現存する建物等の形態にかかわらず、その土地の効用が最高度に発揮できる使用方法(最有効使用)を前提として評価を行っています。

分かりやすく言うと、その土地に実在している建物は無視(更地として扱う)し、その土地に最有効使用の建物を“想定”して試算価格を求めます。不動産全体の収益から「建物に帰属する収益」を控除し、「土地に帰属する収益」のみを残して公示地価は試算されます。土地と建物は不可分の関係にあり、両者を一体として扱うことで初めて収益価値が評定できます。わざわざ最有効使用の建物を想定し、その後に建物部分の収益を控除するのは、そのためなのです。

 不動産は一点物がゆえ個別性が強く、投資家といえども、その適正価格を算定するのは容易ではありません。不動産の適正価格とは、売り主にも買い主にも偏らない自由な取引のもと、通常、成立すると認められる価格をいいます。現実の社会経済情勢の中で、合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるべき土地価格を意味します。一般の諸財と異なる不動産について、その適正な価格を求めるためには鑑定評価の活動に依存せざるを得ません。上述した3種類の鑑定評価方法を知ることで、価格形成のプロセス・メカニズムを理解してほしいと思います。

【このコラムの著者】

平賀 功一

e住まい探しドットコム代表
AFP/宅地建物取引士/管理業務主任者/福祉住環境コーディネーター/住宅ローンアドバイザー/二種証券外務員/マイアドバイザー®

第一不動産グループの住宅販売会社にてマンション販売のプロジェクトを任され、モデルルームの設営から広告代理店との広告やチラシの打合せ、アルバイトの管理、事業主や施工会社との交渉、販売スケジュールの作成、販売収支の管理、契約業務全般などを歴任。三井不動産販売(株)への出向経験あり。
1999年に住宅コンサルタントとして独立し、e住まい探しドットコムを設立。

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