平賀 功一の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「円安進行」「金利上昇」「ウクライナ紛争」 わが国の不動産投資への影響は?

もはや「円」は安全資産ではない!?「有事の円買い」から「有事のドル買い」へ

 2月24日、世界を取り巻く安全保障環境が揺らぎました。グローバル化の進展に伴って世界のパワーバランスが変化し続けるなか、地政学的リスクが強く意識されるようになりました。同日、ロシア軍が軍事インフラへのミサイル攻撃を開始し、ウクライナ侵攻が始まりました。アメリカは世界の警察としての機能を十分に発揮できず、今日、国際秩序が脅威にさらされています。

 この影響を真っ先に受けたのが原油先物市場でした。WTI先物価格は3月7日に一時1バレル=130ドルを超え、2008年7月以来13年8カ月ぶりの高値水準となりました。ロシアへの経済制裁として、アメリカがロシア産原油の輸入禁止措置を欧州の同盟国と検討しているとの報道が流れ、供給が滞るという懸念が広がったためです。

すでに日本ではレギュラーガソリン価格が高止まりしており、政府は高騰するガソリン価格を抑制しようと補助金を支給しています。さらに、ガソリン税を軽減すべく「トリガー条項」の凍結解除も俎上(そじょう=議論)に挙がっています。

しかし、緊張が続くウクライナ情勢は沈静化する気配もなく、その先行き不透明感からエネルギー価格の先高観は強まるばかりです。足もと、エネルギー価格の変動によって株式市場が大きく揺さぶられており、こうしたベンチマーク(根幹となる指標=株価)の乱高下は投資家心理にはマイナスに作用します。

 また、この時期、日本円が大きく売られたもの特徴的でした。為替市場では、対主要通貨で「円」が全面安となり、3月28日、ドル円は一時1ドル=125円を突破しました。およそ6年7カ月ぶりの円安水準です。

これまで日本円は安全資産とされ、世界規模での災害や紛争が起きるたび、資金の逃避先として日本円を買う(円高)傾向がありました。ところが、ウクライナ情勢では「円」が安全資産とされず、基軸通貨である「ドル」を買う動きが世界的に強まっています。要は「有事の円買い」ではなく「有事のドル買い」が進行しているのです。ドル高は相対的にドルの購買力を高めるため、海外の投資家が日本の不動産を購入するには有利となります。

日米金利差の拡大観測が、さらなる円安を誘導する

 ところで、なぜ、これほどの急激な円安が進行しているのか?―― そこには金利との密接な関係がありました。

同日、国内債券市場では長期金利(10年物国債利回り)が一時0.25%まで上昇しました。そこで、日本銀行が市場操作を断行し、金利上昇の抑え込みに動きました。振り返れば、これまでも日銀はマイナス金利政策を導入するなど、果敢に金利上昇を抑制してきました。2%の物価安定目標を達成すべく、特に長期金利の上昇には敏感でした。

その一方、アメリカではすでにインフレ高進を食い止めようと政策金利の断続的な利上げが始まっており、金融正常化を実現すべく金融政策の引き締めに動いています。

こうした経緯があるなか、3月28日、日銀が利上げ阻止への強硬姿勢(公開市場操作)に打って出たため、市場関係者の間には、さらなる日米の政策スタンスの違いが意識されました。日米金利差の拡大が想起された結果、円売り・ドル買へと進んだのです。

金利の旨味(恩恵)が薄い日本の通貨より、高金利が期待できるアメリカの通貨へと投資マネーが還流するのは極めて自然な流れです。ウクライナ紛争で地政学的リスクが顕在化するなか、緩和マネーは虎視眈々と安全な投資先を探しています。

「イールドギャップ」「レバレッジ効果」――不動産投資は金利上昇に弱い

以上を踏まえ、最後、わが国の不動産投資への影響を分析してみましょう。

最も不動産投資に影響を与えるのは金利の変動です。イールドギャップの観点からも低金利が不動産投資には望ましいのです。イールドギャップとは「利回り」から「借入金利」を差し引いた数値を指します。たとえば、ある投資物件の利回りが8%、借入金利が年率3%とした場合、その差5%(8%-3%)がイールドギャップ(%)となります。

イールドギャップは投資物件の収益性を見る指標の1つです。たとえ同じ利回りの投資物件でも、借入金利が高ければ、その分、イールドギャップは低くなります。イールドギャップが低くなると、キャッシュフローに余裕がなくなってくるのです。家賃からローン返済分を差し引いた実質の収入額が少なくなるわけです。

一般に不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンと言われ、中長期的なスパンで主にインカムゲインを狙った投資が不動産投資の基本特性です。そして、その価値尺度は「利回り」によって表され、利回りの高低がパフォーマンスの良し悪しを決定付けます。

しかし、投資効率を向上させるべく「レバレッジ効果」を狙う不動産投資では、金融機関からの融資なしには話が進みません。そのため、ローンを組むことを前提に収支計画が立てられるわけですが、その際、高い金利での借り入れは「百害あって一利なし」となります。資金調達環境の悪化(金利上昇)は不動産投資に逆風となるのです。

エネルギー価格の上昇や円安が金利上昇をもたらす恐れあり

では今後、金利はどのように動くのか?―― ウクライナ紛争の長期化リスクに加え、対ロシア経済制裁でエネルギーを中心とした需給ひっ迫がインフレを加速させようとしています。加えて、円安による輸入物価の上昇もインフレを助長します。ある市場関係者も「足元のエネルギー価格の上昇や円安の影響からインフレが加速する」と予想しており、すでに大幅な引き下げが実施された通信費の影響を差し引くと、実質的には2%程度の物価上昇が起きています。

つまり、日銀が掲げる2%の物価安定目標に到達しているわけです。もはやデフレではありません。これまで、次の一手を見出せない金融政策の限界を市場関係者は敏感に感じていました。長期化するマイナス金利政策は出口が見えないなか、その副作用ばかりが重くのしかかっていました。

しかし、黒田総裁も来年(2023年)4月で任期満了を迎えます。そろそろ金融政策の正常化に向け、利上げへと政策スタンスを転換しても不思議ではないと個人的には考えています。本格的な値上げラッシュを前に、“地ならし”を始める好機といえるのです。

もし、本当に大規模な金融緩和に区切りをつけ、正常化への道を歩み始めると、これまでの低金利環境は終わりを迎えることとなります。3月28日には長期金利が一時0.25%まで上昇しました。3月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く)はプラス0.8%となり、7カ月連続の上昇です。伸びは2年3カ月ぶりの大きさとなりました。

繰り返しになりますが、資金調達環境の悪化(金利上昇)は不動産投資に逆風となります。長期金利には下押し圧力が働き始めています。今後の投資戦略として、インフレ高進を織り込んだ事業計画の策定が今まさに求められようとしています。

【このコラムの著者】

平賀 功一

e住まい探しドットコム代表
AFP/宅地建物取引士/管理業務主任者/福祉住環境コーディネーター/住宅ローンアドバイザー/二種証券外務員/マイアドバイザー®

第一不動産グループの住宅販売会社にてマンション販売のプロジェクトを任され、モデルルームの設営から広告代理店との広告やチラシの打合せ、アルバイトの管理、事業主や施工会社との交渉、販売スケジュールの作成、販売収支の管理、契約業務全般などを歴任。三井不動産販売(株)への出向経験あり。
1999年に住宅コンサルタントとして独立し、e住まい探しドットコムを設立。

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