上井邦裕の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「目に見えない不動産投資の落とし穴③」 ~物件選びには、環境面からの建物を意識しよう~

初めて不動産投資をするにあたり、今回は環境面から建物に着目したいと思います。新築建物からの視点が中心にお伝えすることになります。
前回は、建物構造について代表的な4種類を説明しましたが、その中でも今回は木造と鉄筋コンクリート造を例にとりながら、説明をしていきたいと思います。

日本の建物の現状

不動産のオーナーになる=不動産投資をするということは、安定収入確保の魅力があるからです。

投資効率から考えてみましょう。同じ土地面積であれば、建物面積の多いもの、言い換えれば少ない部屋数よりは多い部屋数で収入確保を考えたほうが有利です。となると、必然的に階高のある=高い建物に着目することとなり、構造的には鉄筋コンクリート造の建物を検討することとなります。

後ほどの図表で説明しますが、現状、築年数の古い建物がかなりの数あります。そうすると、建物の老朽化に伴い、古い建物ほど修繕費がかかり、空室率の上昇などの不安定要素が増えていくことが想定されます。
築年数が経過していくと、生活インフラの老朽化や陳腐化が原因となり、物理的または機能的に古くなった設備を廃棄して最新の設備に置き換えることを考えなくてはならなくなります。具体的には、雨樋の交換・屋上防水工事・外壁の塗装をするなどの大規模修繕の実施をしなくてはなりません。

このように部分的な作業をするのであれば、いっその事、すべて取り換えした方が作業効率もよく、見栄えも使い勝手も良くなり、資産価値も多くなるので、建替えが選択の1つになってきます。(ただし、建替えとなると立ち退きなどの問題がありますが・・・。)

ですから、日本の建物の多くは「建てては壊す」いわば、「スクラップ&ビルド」という考え方が主流となっています。

賃貸住宅(貸家)の現状

総務省が5年ごとに公表する「住宅土地統計調査」によると、賃貸住宅の築年数に関する統計があります。これは建物構造ごとではなく、全国の持ち家以外の戸数となりますので、ご注意ください。

<賃貸住宅戸数の推移>

このように、築年数の古い建物も多いことがわかりますし、年々、賃貸住宅の割合が増加していることも判断できます。

次に、2018年度(平成30年度)の都道府県別人口総数を基に、上位2つと下位2つの都道府県において、賃貸住宅の住宅数を比較してみました。
極端な事例になりますが、大都市圏に近い場所は企業や大学などが多いので、やはり人口も多く、賃貸住宅の供給量も多くなっていることがわかります。

<都道府県別人口における賃貸住宅の住宅数の推移>

このことからも、不動産投資をするのであれば、やはり、人口の多い大都市圏内にしたいと考えることもうなずけます。

脱炭素とは?

昨今では、SDGsであったり、二酸化炭素の排出量規制であったり、「脱炭素」と言う言葉が日本のみならず、世界のキーワードとなっており、これに取り組みをしない企業は、今後は商取引が出来ないようになるとも言われております。その例として、自動車業界に見られるように、燃料をガソリンから電気や水素、電池にしていく動向があります。

SDGSとすべてを大文字にすると「エス・ディー・ジー・エス」と読まれてしまいます。最後はGoals(ゴールズ)の略の小文字のSでSDGsとなり、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。日本語で「持続可能な開発目標」と言います。

建設業界の脱炭素の動き

では、建設業界はどうでしょうか?
建築物の施工や解体において、大きな環境負荷を発生しているのが現状です。日本が排出する二酸化炭素の1/3は建築物に係るものであり、その大部分を建物(建築段階)の二酸化炭素の排出量が占めているといわれます。「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の統合的な実現が当面の環境課題かと思います。

現状の高層階の建物では、やはり、鉄筋コンクリート造がメインです。コンクリートはセメントに砂や水を混ぜて作られ、強度的には申し分ありません。
しかし、鉄筋コンクリート造は製造過程で多くの二酸化炭素が出るセメントを原材料としておりますので、現状では建てるにせよ、壊すにせよ、環境面からは今後の課題となります。

最近は、セメントの代わりに炭酸カルシウムを使ってコンクリートを製造する技術を開発したゼネコンもあるそうですし、建設現場で使用する電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーに切り替えるなどの取り組みを強化しているゼネコンもあるそうです。
このように、建設業界全体で環境問題に取り組みをしております。

一方で、在来工法と言われる木造ですが、自然の材料である木を使用しているので、建替えに際しても、既存の木は再利用が可能なので、環境に一番優しいと言えるでしょう。

木造は耐火の問題があり、木造の耐火レベルの限界と言われる準耐火建築物であれば3階が限度となります。ただ、耐火建築物であれば、法律上、階高の上限はありません。ですから、建築費用面や工期面、環境面から判断し建築するのであれば、木造が最適!ということになります。

木造の高層建築は、現段階では「理論上は可能である」という段階ですから、現状では、二の足を踏むところです(建物構造についての詳細は前回のコラムを参照してください)。とは言え、一部の大手ゼネコンにおいては、今後は木造の高層建築物の計画・施工を予定している発表があったのも事実です。

耐用年数からの視点

食品には消費期限や賞味期限があるので、購入するにあたり、同じ製品であれば、「新しいものを購入する」と意識されるかと思います。同様に、建物にも期限と言う考えが存在します。
これを「耐用年数」と言います。木造や鉄筋コンクリート造などの建物構造や居住用や店舗用などの用途により、耐用年数が税法上、決められています。
税法上ということは、確定申告や企業決算において、減価償却費の計上をすることができ、税務効果があります。また、金融機関より融資を受ける時にも、判断項目のひとつになります。

建物構造別の賃貸住宅用の耐用年数を示します。(用途により耐用年数は異なります)

                    *鉄骨造の耐用年数は鉄骨の厚みによる
強固な材料で建築した建物ほど、階高も高くすることができ、耐用年数も多くなっています。建築費用も高くなりますが、その分、資産価値も高いと言えます。

今後の展望

建設業界も徐々にではありますが環境問題を意識して取り込んでいます。今後は、新築でも環境問題を考えない建築は時代遅れとなっていくように思います。また、オーナー視点でも今後は「環境問題を意識している建物である」とアピールすることで差別化が図れるのではないでしょうか。
ただ、現状では、木造の高層建築物に関し、実際の地震などによる実績データがないので、不安要因が払拭できないことも本音でしょう。

一方、築年数の古い建物が多いのが現状です。これら既存建物は従来通りの工法ですが、耐用年数が過ぎたからといって、賃貸上、今すぐに問題が起きるわけではありません。
環境面を重視して「スクラップ&ビルド」を実施すると、費用の問題や立ち退きの問題があります。

今後、これからの不動産投資をするにあたり、どのように考えていくかの問題提起を投げかけられているように感じます。

【このコラムの著者】

上井邦裕

三晃トラスト株式会社 専務取締役
保有資格:AFP/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/相続アドバイザー協議会認定会員

大学卒業後、建設分野で20年携わり、その後不動産・相続分野で10年以上携わっている。
(一社)神奈川県ファイナンシャル・プランナーズ連合会にも所属

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