上井邦裕の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「目に見えない不動産投資の落とし穴④」 ~物件選びには、性能面からの建物を意識しよう~

賃貸に限らず建物が存在するとなれば、多くは人が居住するという事になります。初めて不動産投資をするにあたり、性能面からの建物に着目したいと思います。生活する上において、項目ごとに、数値化できている制度がありますので、今回はその制度を説明していきます。

住宅性能表示とは

居住するとなれば、人は快適な空間を求めることを考えます。築年数が古い建物とか浅い建物かは、外見上の見た目である程度の判断は出来ると思いますが、建物の中は実際に入ってみないと分かりません。
そこで、現地に出向いて、内見をして、気に入れば契約する。という手順になります。その判断材料のひとつに性能表示と言うものがあります。

新築住宅性能表示制度とは平成12年4月1日に施工された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、同年10月に運用開始された制度です。これに遅れて既存住宅にも性能表示制度が平成14年12月に運用開始となりました。

新築建物と既存建物では、性能表示の基準が異なる部分があります。国土交通省によれば、最新情報として、令和元年に品確法の一部改正をし、公布しております。詳細については、下記を参照ください。
住宅:住宅の品質確保の促進等に関する法律 – 国土交通省(mlit.go.jp)

新築建物であれ既存建物であれ、住宅=戸建てと解釈される方もいるかと思いますが、アパートやマンションは集合住宅や共同住宅と表現することもありますので、品確法の適用となります。

住宅性能表示の必要性

住宅性能表示を「ものさし」で評価を行うと、性能を確認しやすいことがポイントとなります。A社で建築した建物もB社で建築した建物も等級比較すれば、どの部分が優れているかが明瞭となるのです。
例えば、耐震性に優れた建物が欲しい場合、最大等級の「耐震等級3」の建物を建てることで、建築基準法の1.5倍の性能の建物となります。

建物を建てるには設計図があり、設計図に従って施工することが基本となります。
新築住宅性能表示制度では、設計図の段階で「設計住宅性能評価」のチェックを受け、これに従ってしっかりした施工がされているのかを工事中に「建設住宅性能評価」のチェックを受けます。
どちらの評価も登録された評価機関の評価員が審査や検査をして、最終的には証明書の発行となります。

「設計住宅性能評価」のチェックは申請後に図面修正がなければ、通常は1回です。これに対して、「建設住宅性能評価」のチェックは基礎工事・躯体工事・内装工事・屋根工事・竣工の工事ごとに現場検査となりますので、5回以上となります。

これにより、完成してからでは確認できない部分を検査しているので、設計と建設のダブルチェックとなり、安心につながります。
ただし、2つの評価チェックは必須ではなく、例えば、「施工には自信があるので大丈夫!」というのであれば、設計住宅性能評価だけ取得して建設住宅性能評価を受けないこともできます。

表示内容

新築建物と既存建物では項目が異なります。新築建物の場合は10項目、既存建物の場合は9項目です。それぞれ、さらに細かい項目に分かれており、項目ごとに等級や数値が示されています。

1・構造の安定に関すること
2・火災時の安全に関すること
3・劣化の軽減に関すること
4・維持管理、更新への配慮に関すること
5・温熱環境に関すること
6・空気環境に関すること
7・光、視環境に関すること
8・音環境に関すること(新築のみの項目)
9・高齢者等への配慮に関すること
10・防犯への配慮

各項目において、数字が大きいほど性能が高いことを表しますが、項目により最大等級は異なります。
なお、建築基準法で定められている項目については、建築基準法の水準を等級1としています。

高齢者等への配慮に関することを除けば、10項目の内容は居住する上で特別な項目ではなく、必要な項目ばかりです。

住宅性能表示制度は、施工業者と住宅取得者が制度の利用をするかしないかの選択する制度となります。また、各項目について、どの等級を希望するかは任意となり、すべての項目を最大にしても本当に意味があるとは限らないということになります。

例えば、構造に関する項目において、耐震性の等級を上げようとすると、外壁の量を減らすことは出来ず、その結果、窓の取り付けする開口部を減らす、あるいは小さくするといったなどの対応となります。
このように一例ですが、項目の性能の中には、相反する関係のものもあり、本当に欲しい性能は何なのか、どこに重点を置くかが重要になります。

住宅性能表示制度の利用率

では実際に、この制度をどのくらい利用しているのかを見てみます。
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会の令和2年11月の統計情報を基に、戸建住宅と共同住宅等に分けて、住宅性能評価の普及率の推移を図にしてみました。

<共同住宅等の住宅性能評価の普及率の推移>
<戸建住宅の住宅性能評価の普及率の推移>

住宅性能表示は「共通のものさし」で住宅を比較することを目的として、平成12年10月に運用が始まりました。しかし、上記の利用率を見ても、共同住宅も戸建住宅も普及率は20~25%であまり進んでいないのが現状です。

その理由の多くは、消費者が住宅性能評価制度を知らないことではないかと思われます。

知っていたとしても、戸建ての場合は「これからずっと住むつもりで新築物件を購入した!」はずなので、建築基準法の水準をクリアしていれば、住宅性能評価書を取得する必要性が感じられないといったこともあるのではないでしょうか。

また、共同住宅等の場合は、賃貸住宅であるケースが多いでしょう。借主がどの点に重点をおいて、借りているのかはわかりません。ですから、大家≒貸主がすべての項目の等級を上げたとしても、入居される、あるいはずっと借りてくれる保証はないので、こちらも戸建て同様、建築基準法の水準をクリアしていれば、問題無し!といったところでしょうか。

建築基準法に従って建物を建てていれば、性能評価を受けなくても問題はありません。いわば、住宅性能表示制度は建物の通知表のようなもので、これを見れば、建物のランクが明瞭となります。

逆に、20~25%が住宅性能評価を受けていることも事実です。建築基準法の水準等級であるオール1の評価で住宅性能評価を受けることも、心もとないとして、いずれかの項目性能の等級のレベルを引き上げて、差別化を図ることもできますが、施工費用と住宅性能評価書を取得する費用もかかります。
しかしながら、他物件と差別化を図る意味においては、利用する価値はあると思います。

住宅性能表示制度の費用と問題点

制度の利用には費用がかかります。
例えば、建築基準法の水準の評価(等級1)で評価を受けようとすれば、新築戸建住宅の場合は設計と建設の両方合わせて10万円~20万円ほどかかります。
ただ、新築共同住宅等の場合は戸数で計算したり、延床面積で計算したり、評価機関により様々なのが現状です。
某評価機関を例にすると、設計と建設の両方合わせて20戸未満で60万円ほどかかり、戸数が増えていくごとに1戸あたり3万円ほど加算となっています。

実は、数多く存在する評価機関によっても、建物構造によっても、項目によっても金額は異なります。制度の中に必須項目と選択項目があり、選択項目を評価に加えるごとによって費用が加算しているのです。

このように取得にあたり、費用がわかりづらいことも普及が進まない要因の1つかも知れません。

まとめ

住宅性能表示制度が発足して約10年経ちますが、普及は思ったほど浸透していないのが現状です。
理由として、戸建ての場合は「一生に一度の買い物」と言われるように、終の棲家となることが大半ですから、販売業者側から見て、性能表示を使うメリット=差別化を図る必要性を感じないことが理由の1つでしょう。
賃貸物件である集合住宅等の場合は、借主によって、どの項目を重要視しているのかが、様々であることから、建築費と投資効果のバランスを考えると、貸主は二の足を踏むことになります。
制度そのものは、項目を数値化しているので、一目でわかりやすいことはメリットですが、一方で、費用は統一基準がないので、評価機関により、まちまちなのがデメリットです。

表示内容のどの項目でも良いので、等級を上げたことをセールスポイントにして、他物件と差別化を図ることも戦略のひとつではないでしょうか。

【このコラムの著者】

上井邦裕

三晃トラスト株式会社 専務取締役
保有資格:AFP/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/相続アドバイザー協議会認定会員/マイアドバイザー®

大学卒業後、建設分野で20年携わり、その後不動産・相続分野で10年以上携わっている。
(一社)神奈川県ファイナンシャル・プランナーズ連合会にも所属

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