不動産投資には「人(法人)」と「物」を対象にした投資があります。「人(法人)」を対象にした代表例が賃貸建物への投資です。「もの」を対象にした代表例のひとつに駐車場やトランクルームへの投資があります。今回は「駐車場への投資」について説明をしていきます。
駐車場経営とは?
駐車場経営とは、駐車料金を賃料収入とする土地活用の方法で、主に月極と時間貸し(コインパーキンング)の2つがあります。
<駐車場経営のメリット>
建物賃貸事業と比較して初期投資額を大幅に押さえることができ、その後の建物維持の修繕が不要となり、借主からの雨漏りなどのクレーム処理もありません。というのも、建物所有を目的としていないので、借地借家法の適用外になり規制が緩やかになります。このことより、解約して、転用もしやすいことにあります。
<駐車場経営のデメリット>
更地扱いになるため、固定資産税など税金の軽減や減額の恩恵はなく、減価償却費などの経費が少ないので所得税が比較的多くなります。また、土地を所有していれば、誰でも駐車場経営へ参入しやすいため、近隣に競争相手となる駐車場が増える可能性があります。
なお、駐車場経営にかかる税金として、固定資産税や都市計画税、事業税や償却資産税や消費税といった税金は発生します。
月極駐車場とは
利用する方と毎月の利用契約を結んで、賃料を受け取るものです。土地さえあれば、いつでも始めることができますが、最低限の設備として、整地・ライン引き・車止めは必要です。
月極駐車場では3つの方法があります。
(1)自己経営
募集から賃料回収まで、また、トラブルやクレームなどの対応をすべて自分が行う
(2)管理委託方式
募集や管理を業者に手数料を支払って、委託する方式
(3)一括借り上げ方式
業者に手数料を支払うが、空車・満車の稼働状況に関わらず、毎月一定額がもらえる方式
3つを比較してみますと、(3)は利用者がいなくても業者が借り上げるので、一定額の収入は必ずあります。収入の安定性を重視するのであれば、(3)となります。
「月極駐車場の利用者は誰なのか?」ということですが、
・駐車場がない(足りない)戸建て世帯の方
・マンション・アパート世帯であれば、その敷地に駐車できない方
・近隣の企業に従事する方
主に3つ挙げられますが、不特定多数の方ではなく、利用者は固定となります。
また、周囲にいくつかの月極駐車場があっても、深夜や早朝時間に満車であれば、自宅周辺で駐車場を探している、あるいは日中であれば、近隣の企業に従事する方で満車であれば、企業が駐車場を探している可能性もありますので、検討してみてもいいでしょう。
コインパーキングとは
時間貸しの駐車場のことで、利用する方が駐車していた時間に応じて、設定された料金を支払うシステムです。24時間無人の時間貸しの営業が大半で、屋外式と屋内式があり、駐車台数は数台から数十台となっています。
駐車場の管理は駐車台数により、方式が分かれます。
・小規模(10台程度)の場合はロック式(フラップ板)
・大規模(20台以上)の場合はゲート式
*ロック式(フラット板)
*ゲート式
コインパーキングでは主に2つの方法があります
(1)一括借り上げ方式
運営会社が用地を一括で借上げ、オーナーに毎月固定賃料を支払う方式
(2)共同運営方式
運営会社とオーナーが共同運営をして、契約で決めた利益をそれぞれ受け取る方式
2つを比較してみますと、(2)は共同のため、機械装置の導入やどちらかが辞めたい時などの取り決め項目の詳細が必要となり、煩わしさが考えられます。(1)が一般的には多いと思います。
「コインパーキングの利用者は誰なのか?」ということですが、月極駐車場とは違い、不特定多数の方が、利用者となりますので、いかに認知してもらうことができるのかが重要です。
一般的には、駅周辺や繁華街に多く見かけると思いますが、周辺に病院や商業施設のある場所も適しております。また、利用者目線からすると、一定の交通量があり前面道路が広く、間口が広い方が駐車はし易いので、検討してみてもいいかもしれません。
初期費用について
<月極駐車場>
最低でも整地・ライン引き・車止めの費用は発生します。できるだけ費用を押さえたいと思っても、更地では草が生えているし、地面にデコボコがあるし、このままでは車の重量に耐えることができないので、どうしても整地は必要です。
未舗装タイプは区画ラインが引けないので、区画ラインを引くのであればアスファルト舗装が必要です。
<コインパーキング>
機械設置や配線が必要のため、通常はアスファルト舗装タイプになり、整地費用の他に機械の設置費用が発生します。先ほど写真で見て頂いたロック式とゲート式に分かれますが、初期費用を押さえるのであれば、ロック式となります。
ロック式の場合はフラット板・精算機・照明・看板・車止めが必要になります。
駐車場経営と税金
冒頭でも触れましたが、駐車場は更地扱いとなるため、収入に対して税制面での優遇措置は
ほんどありません。
主な税金として、以下のものがあります。
<固定資産税・都市計画税>
固定資産税=課税標準額×税率1.4%
都市計画税=課税標準額×税率0.3%(市街化調整区域内の場合は課税されません)
課税標準額とは、固定資産税評価額の70%です。更地扱いのため、課税標準の特例措置はないので、住宅用地よりも高くなります。
<償却資産税>
アスファルト舗装や隣地との間に設置したフェンスなど駐車場設備にかかる税金です。
償却資産税=課税標準額×税率1.4%
こちらの課税標準額とは、設備ごとに取得した金額を100とします。一定の償却率で計算し、年々減少していきます。
<消費税>
青空駐車場と言われるような、土地の整備をしていない更地に近い状態での貸付けであれば非課税です。
「月極」・「コインパーキング」のどちらの形式でも、地主または業者のどちらかが土地の整備をしたかによって、課税区分が変わります。
・地主は土地を貸し、業者が整備し駐車場を運営した場合:地主は「非課税」
・地主が整備し、業者あるいは地主が駐車場を運営した場合:地主は「課税」
つまり、地主は土地貸しのみであれば、「非課税」ということになります。
まとめ
建物賃貸経営と比べれば、初期投資費用は押さえることはできますが、税制面での優遇措置はほとんどありません。
土地所有者はご自身なので、固定資産税は必須ですし、所得税や住民税といったものが所得に応じて発生します。とは言え、いかに空室率を低くするかで利益率に直面してきます。
建物賃貸経営とは違い、対象となるのが「物である」ので、借地借家法の適用外になり、転用はし易いといえます。そのうえで、理由はさまざまですが、2~3年の保有を考えているようであれば、駐車場経営を検討してみてもよいと思います。
参考にしてみてください。