不動産投資には、生命保険代わりとして利用できたり、雪だるま式に資産を増やせたりと、多くのメリットが備わっています。このようなメリットに惹かれて不動産投資に興味を持ち、実際に物件を探し始めた方が関わるのが不動産会社の営業マンです。
熱心に物件を勧める営業マンに対し「そんなにいい物件ならなぜ自分が投資しないのだろう……?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、不動産投資会社の営業マンがなぜ自分で投資に踏み切らないのか、その実態を解説します。
さらに、優良な営業担当者を見極めるために重要な3つのポイントや、しつこい勧誘に対する断り方についても見ていきましょう。
不動産投資の営業マンはどんな仕事をしているのか
不動産投資の営業マンがなぜ自ら投資をしないのかを解明する前に、まず営業とはどんな仕事をするものなのか、その業務内容や報酬制度を見てみましょう。
不動産投資会社営業マンの仕事内容
不動産投資会社の営業が行う主な業務は、電話営業です。オーナーになってくれる方とのアポイントメントを取り付けるため、一日数百件にも上る電話をかけます。
広告や自社ホームページ、物件検索サイトなどからの問い合わせや反響に対する営業もありますが、電話による営業が主流の会社もまだ多いといわれています。
その中で、不動産投資に興味を持ってくれた方と日時の交渉を行い、実際に資料や実績を見せながら不動産投資を始めてもらうための営業活動を行うのです。
その他、すでに自社の物件を保有している既存のオーナーへ営業をかけることもあります。またマンションやアパートの一棟売りの場合、情報が市場に出回る前に、営業担当者から直接プロの不動産投資家へ紹介するケースもあります。
このような営業活動が功を奏し、晴れて物件を購入してもらえれば業務は成功です。契約成立後、オーナーのアフターフォローなどを通して顧客満足度を高め、次の物件を購入してもらえるように関係性を維持していくことも重要な業務となります。
不動産投資会社営業マンの給与形態
不動産投資の営業マンの給与形態は「基本給+歩合」という形を取ることが多く、契約件数が多ければ多いほど高収入になります。不動産業は特に高額商品を扱う業界なので、契約を獲得した営業担当者には高額なインセンティブが入ります。
逆に、契約を取れなかった月の給与はかなり落ち込むことになり、営業成績によって月々の給与額が大きく変動する職業といえるでしょう。
不動産投資会社の営業マンの仕事内容・給与形態を知ると、なぜ必死に不動産投資を勧めてくるのか、なぜ高額な不動産を紹介したがるのか、理解できるのではないでしょうか?
中には、インセンティブが欲しいばかりに顧客の事情を考えず限度額いっぱいの高額な物件を購入させたがる営業もいます。
事前に不動産に関する知識を持っておかないと、言われるがまま無理な金額の不動産を購入し、失敗してしまう危険性があります。
自分の目で物件を見極めて判断できるよう、しっかりと予備知識を持たなければなりません。
不動産営業マンが自分で不動産投資を行わない4つの理由
実際に投資用不動産の営業マンと話したことのある方は「家賃保証(サブリース)が付いている」「高利回り」「年金代わりになる」など、多くのメリットを説明されたのではないでしょうか?
しかし実際には、自分では不動産投資を行っていない営業マンも少なくありません。
「なぜそれほどにメリットのある不動産投資に自分が参入しないのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
不動産投資の営業マンが投資に乗り出さない理由は大きく4つに分かれます。
・副業が禁止されている
・不動産投資、もしくは該当物件を信用していない
・本業に集中した方が高所得になる
・ローンが組めない
それぞれの理由を詳しく解説しましょう。
副業が禁止されている
不動産投資に取り組むことはできるが、あえて不動産投資に乗り出さないという営業の方もいらっしゃいます。
その理由の1つが「副業が禁止されている」というケースです。
不動産投資は「投資」の一種であるため、副業と見なされないのが一般的です。しかし中には、不動産投資も副業とみなし、禁止している企業もあります。
このような企業に属する営業マンの場合、不動産投資に手を出したくても出せないという状況にいるわけです。
不動産投資、もしくは該当物件を信用していない
不動産投資という投資手法を信用していない営業マンもいるでしょう。
一見すると矛盾しているように見えますが、物件の営業をかけて人に勧めるのと、自分が実際に不動産事業に乗り出すのとは訳が違います。いくら不動産投資が株式やFXに比べてリスクが低いとはいえ、利益が生じるということは、代わりに損失が生まれる可能性もあるということです。
安定志向が強く、単純に不動産投資に取り組もうと思っていない方もいるでしょう。
またお勧めしている物件に対し、営業担当者自身が「よい物件」とそもそも思っていないケースも考えられます。どんな物件であれ「売れればよい」という悪質な営業マンも中にはいます。
万が一このような物件を紹介された時、自分の身を守るのはやはり予備知識です。本当にいい物件なのかどうかは、自分で判断できるようにしましょう。
本業に集中した方が高所得になる
先ほども紹介したとおり、不動産投資会社の営業マンは歩合制の給与形態をとっていることが多いです。契約獲得時のインセンティブが高いので、トップセールスマンともなれば年収が1,000万円を超えることも珍しくありません。
自ら不動産投資に時間を割くよりも、商材として不動産を扱い、より多くの顧客を確保した方が高収入になるというケースもあります。そういった営業マンなら、自分で不動産投資を始めようとは考えないでしょう。
ローンが組めない
不動産投資をしたくでもできない、というケースもあります。
実は不動産会社の営業は「収入が安定しない」「会社から購入を強いられていると疑われる」などの理由で、ローンが組めないケースが多いといわれています。
先述の通り、不動産営業の給与形態の多くは歩合制、つまり成果主義です。
契約が取れないとインセンティブが発生せず、年収が極端に低くなってしまう場合もあるでしょう。年収は属性に大きな影響を与えるので、年収が低いと属性も低くなり、融資が下りにくくなってしまいます。
また金融機関は、契約件数によって月々の給与額が大幅に変動する不動産会社の給与形態を「安定性に欠ける」と判断することもあります。不動産業界は転職を繰り返す人が多いというのも、金融機関からの信用を下げる一因となるようです。
また不動産投資会社の社員に対して、そもそも金融機関が融資を行わないこともあります。なぜかというと、不動産投資会社の社員に「売れ残り」の物件を購入するよう押し付ける一部の企業が存在するためです。
押し込み販売を懸念した金融機関が、融資を断るというケースもあります。
このようなさまざまな理由から、ローンが組めず、結果として不動産投資に取り組めない営業マンも少なくないのです。
優良な不動産投資の営業マンを見分けるために必要な3つのポイント
先ほども紹介した通り、中にはインセンティブを目的に高額な不動産を紹介してくる営業マンもいます。決して全ての営業マンがそうではありません。しかし、不動産に関する知識がない状態では、営業マンの良しあしを見分けることも難しいでしょう。
営業担当者のセールストークを正しく判断し、優良な営業マンを見分けるにはどうすればよいのでしょうか。その方法を3つご紹介します。
不動産業界や不動産投資に関する正しい情報・知識を得る
まずは不動産に関する正しい知識を獲得しましょう。営業にきたセールスマンから情報を仕入れるのも悪くはありませんが、基本的な不動産の知識は事前に備えておいた方が懸命です。
予備知識がまったく無いままセールストークに耳を傾けてしまうと、リターンばかりに気を取られて肝心のリスクを正しく認識できなくなってしまいます。
不動産投資のセオリーやメリット・デメリット、リスク・リターンを網羅した上で営業マンと話すことで、営業マンや紹介された物件の良しあしを見抜けるようになるでしょう。
不動産投資に関する書籍を読んだり、LIFULL HOME’Sのコラム記事で気になったものに目を通したりして、不動産投資に関する知識を事前に仕入れることをお勧めします。
不動産投資のセミナーへ参加する
不動産投資は複雑な知識が求められる投資手法なので、書籍などによる独学には限界を感じる方もいるでしょう。その場合は、セミナーへの参加がお勧めです。
不動産投資に関するセミナーは全国各地で開催されていますし、無料で参加できるものもあります。中には、分からないことを質問したり、個別相談したりできるセミナーもありますので、いろいろと調べてみてください。
不動産投資のプロや経験者の話を直接聞くことは、非常に有意義です。不動産投資に関する基礎知識が学べるので、営業マンのセールストークを自分なりに判断し、良しあしを見抜く手助けとなるでしょう。
受講者の中には、あなたと同じようにこれから不動産投資を始めようと考えている人、すでにオーナーとして不動産投資に取り組んでいる先輩など、さまざまな人がいます。
不動産投資においては、オーナー同士の横のつながりは重要なポイントです。セミナーの内容も大切ですが、人脈が広がるという意味でも、ぜひ積極的に参加してみましょう。
営業マンに逆に質問してみる
ある程度の知識を蓄えたら、営業マンに質問を返してみるのもお勧めです。
ぜひ「不動産投資にはどんなリスクがあるか?」「紹介された物件にはどんなデメリットがあるか」など、マイナス面について聞いてみましょう。
優良な営業マンであれば、メリットばかりでなく、リスクについても親身に答えてくれるでしょう。自分の知識を蓄えるという意味でも有意義です。
また、収支計画や事業計画のコンサルティングが優秀であり、出口戦略まで相談に乗ってくれる人は、優良な営業マンである可能性が高いです。
有力なアドバイスをくれるパートナーになりうるか、優良な不動産営業マンであるかを判断するのに有効な質問を投げかけてみましょう。
営業担当者からしつこい勧誘を受けた場合の断り方
一般消費者保護などの事業を行う全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)には、不動産投資会社の営業マンからの悪質な勧誘に関する相談も寄せられるそうです。断り方が分からないという方も多いでしょう。
何度断ってもしつこく電話をかけてくる、家にいるタイミングを狙って迷惑な時間帯に訪問してくるなど、常識を逸した営業活動を行う営業マンには、どのように対応したらよいのでしょうか。
実は、宅地建物取引業法の施行規則には、以下のような禁止事項が明文化されています。
・勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うことを禁止
・相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続することを禁止
・迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問による勧誘を禁止
(引用:http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_fr3_000014.html )
もし営業担当者から悪質な勧誘を受けている場合、まずは「勧誘をやめてほしいこと」「投資用物件は必要ないこと」をはっきりと伝えましょう。
それでもしつこい勧誘が続くようであれば、
・勧誘を受けた日時
・具体的な状況や様子、やりとりの内容
・相手の正確な会社名、担当者名、所在地などの情報
を記録し、各都道府県の宅建業法の所管課や国土交通省、免許行政庁に知らせてください。しつこい勧誘を行う不動産会社に対し、行政上の指導・処分を行ってもらうことができます。
中には、脅迫ともとれるような内容で契約を迫る悪質な会社もあります。一人で悩まずに、全宅連や消費生活センターへ相談するようにしましょう。
不動産投資の肝は「最悪の事態を想定すること」
ここまで、不動産投資会社の営業マンについて、その業務内容や見分け方、断り方などを解説してきました。
ここからは、不動産投資に興味のある方、不動産投資を始めようと考えている方に、不動産投資を成功に導くために大切なポイントをご紹介します。
不動産投資に必要なのは正しい知識と説明してきましたが、それと同時に重要なのが「最悪の状況を想定する」ことです。
不動産投資においては、不動産の取得費用を捻出するために金融機関の融資を受ける方が多いでしょう。家賃収入からローンの返済額、さらに税金や修繕費などの諸経費を差し引いたものが収益として残ります。
しかし、そもそも入居者が集まらなければ家賃収入は発生しません。その場合、ローンの返済や諸経費の支払いを自己資金で賄い続けなければならず、大きなリスクとなるでしょう。
このような事態を乗り切るために必要なのが、事前に「最悪の事態を想定すること」なのです。
例えば、空室が数ヶ月続いたと想定します。
自分は何ヶ月の空室なら耐えられるのかを正しくシミュレーションしておかなかった場合、キャッシュフローが回らなくなってからようやく事態の深刻さに気づくことになるでしょう。そのときにはすでに打てる施策がなかったり、支払いに追われて精神的な余裕がなかったりするかもしれません。
あらかじめ最悪の状況を考え、どれだけのリスクになら耐えられるのかを想定しておくと、余裕を持って不動産投資に取り組めるのです。
これから不動産投資を始める方は、まず不動産投資の収益と支出をシミュレーションしてみることをお勧めします。リスクとリターンを正しく理解した上で、不動産投資を始めましょう。
正しい知識を手に入れて、優良なパートナーを見つけよう
不動産投資の営業マンの良しあしを見抜くためには、不動産投資に対する正しい知識が必要不可欠です。
セールストークの内容を全てうのみにするのではなく、自分で物件のメリット・デメリットを理解できるようになれば、必要以上に警戒する必要もありません。
むしろ、営業マンをよきパートナーとして迎え入れて、効率的に資産運用できるチャンスと考えましょう。
この記事を参考に、不動産投資の基礎知識や不動産の営業についての理解を深めてみてはいかがでしょうか。