不動産投資の1つとして、手軽に始められると人気の駐車場投資。駐車場経営の方法やメリット・デメリット、成功するためのポイントなど、知っておくべき基礎知識をお伝えします。
土地活用の1つとして認知度の高い駐車場経営。手軽に始められる不動産投資として人気が高まっています。
そこでこの記事では、駐車場経営を始めるにあたって押さえておきたい基礎知識をご紹介します。貸し出しの方法や経営方法、メリット、デメリットについて詳しく見ていきましょう。
利回りのシミュレーションもしていますので、駐車場投資を成功させるために、ぜひ参考にしてください。
駐車場投資の基本「貸し出し方」
駐車場の貸し方は2種類あり、月極駐車場かコインパーキングを選択することとなります。
両者の違いは、以下のようにまとめることができます。
月極駐車場 | コインパーキング | |
収益の安定性 | 高い | 低い |
初期費用 | 安い | 高い |
ランニングコスト(税金以外) | ランニングコスト(税金以外) 管理委託費、舗装のメンテナンス費など | 管理委託費、機械や舗装のメンテナンス費、電気料金など |
賃料値下げ | あまりない | 可能性あり |
詳しく解説していきましょう。
月極駐車場
月極駐車場は、借り主と賃貸契約を交わし、駐車スペースを貸し出す方法です。
契約が継続している間は毎月安定した収入が見込めるでしょう。また、更地を区画分けするだけで賃貸をスタートすることができるという、初期費用の低さが大きなメリットです。
維持費などのコストもほとんどかかりません。
一方、一度契約が終了すると、次の利用者が見つかるまで期間が空く可能性があり、収入が減少するというリスクもあります。
自己管理する場合、利用者の募集や契約手続きが必要となるため、台数が多くなるほど契約管理が煩雑になるデメリットもあるでしょう。管理会社に委託することも可能ですが、手数料を支払う必要があり、その分利益が減少します。
また駐車場の場合、建物のように老朽化することもないため、賃料が大幅に値下がりする可能性は低いといえるでしょう。
コインパーキング
コインパーキングは時間貸しの駐車場です。
数十分、数時間で入れ替わりがあり、稼働率も毎日変わるので、収入は大きく変動します。収入がゼロになる可能性は少ないですが、不安定になる傾向があるでしょう。
しかし、立地や周辺環境によって高い稼働率をキープできれば、収入の上限が決まっている月極駐車場より大きな収益となり得る可能性があります。
その他、利用者との契約手続きは不要ですが、見やすい場所に誘導看板を設置したり、割引券を配布したりするなど、駐車場を認知してもらう努力が必要です。
コインパーキング用の機械の設置・維持にコストがかかるというデメリットもあります。周辺に大手のコインパーキングがあるエリアでは、値下げ競争に巻き込まれる可能性もあるので、注意が必要です。
駐車場投資の基本「形態」
駐車場投資をするにあたって、次に確認するのは形態の違いです。平面駐車場か立体駐車場かを選択することになります。
平面駐車場
家屋で言えば「平屋」です。
建物の建設や昇降機の設置が不要なので、初期費用や維持費が抑えられます。平面の月極駐車場であれば、砂利を敷いただけでも貸し付けることが可能です。
貸付できる車の台数は土地の広さに比例しますが、土地の形によっては駐車スペースが想定より少なくなることもあります。立体駐車場より収益性は低いでしょう。
立体駐車場
家屋でいえば「アパート」や「マンション」です。
立体駐車場は、さらに自走式と機械式に分類できます。
自走式は、2階建て以上の平面駐車場で、スロープを利用して駐車スペースまで自走して移動するタイプの立体駐車場のことです。一方機械式は、昇降機などの機械を使い、上下階に機械で車を移動するタイプのことを指します。
狭い土地でも、賃貸できるスペースを縦に増やすことで、土地の利用効率を上げることができるでしょう。一方で、平面駐車場よりも初期投資費用や設備の維持費用がかかるというデメリットがあります。
駐車場投資の基本「経営方法」
駐車場の経営方法には、大きく分けると「自営」と「一括借上」の2種類があります。
自営
自営は、投資家自身が駐車場の経営者となります。
駐車場の売り上げはすべて自分のものとなるので、駐車場の稼働率によっては大きく儲けられる可能性があるでしょう。しかしその反面、利用者がいなければ収入が大幅に少なくなるリスクもあります。
自営の管理方法は、さらに「完全自主管理方式」と「管理委託方式」の2種類に分類できます。
完全自主管理は、土地の整備・設備の設置・オープン後の集客・契約・集金・トラブル対応など、運営・管理業務をすべて自分で行う方法です。管理委託費用が不要なので、運用コストを減らすことができますが、駐車場の規模が大きくなるほど、運営・管理の負担が大きくなるでしょう。
一方管理委託方式は、駐車場の整備は自分で行うものの、集客・契約・集金・トラブル対応など一部の運営・管理業務を管理会社に委託する方法です。初期費用や設備投資費用はかかりますが、運営・管理にかかる手間を減らすことができます。
管理委託方式の委託費用は、賃料収入の5%〜10%程度が一般的です。
一括借り上げ
一括借り上げ方式はサブリースとも呼ばれ、駐車場の運営会社に土地をまるごと貸し付け、毎月一定の賃料を受け取る方法です。駐車場の経営者は運営会社となります。
駐車場の稼働率に関わらず毎月一定の賃料が受け取れるので、空車リスクを心配する必要がありません。
さらに駐車場の整備や、設備の設置、運営管理はすべて運営会社が行ってくれます。そのため、初期投資0円で事業を始めることも可能で、業務の負担を減らすことができるという大きなメリットがあります。
デメリットとして、一般的に管理委託方式よりも委託費用が高くなること、駐車場がフル稼働したとしても、受け取れる賃料は増えないことが挙げられます。
駐車場投資のメリット
次に、駐車場へ投資するメリットを確認していきましょう。
初期費用が少ない
駐車場経営は、アパートやマンションへの投資に比べて少ない初期費用で始められるのがメリットといえます。必要な費用は、主に土地の整備費用と機械や看板の設置費用です。
月極駐車場の場合、土地整備費用の相場は、アスファルト塗装で5,000円/m2程度、砂利塗装で1,500円/m2程度です。その他、車止め、ライン引きなども必要となるでしょう。車止め4,000円/個、ライン引き58,000円/50mなどの参考価格を挙げている工事会社もあります。
砂利塗装で、区画分けはロープを引くなど最低限の整備にするのであれば、かなり費用を抑えられるでしょう。
コインパーキングの場合、月極駐車場と同じ土地整備費用の他、
・精算機:45万円程度~
・ロック板:9万円程度~
・看板:16万円程度~
などの設置費用がかかります。
どのような仕様の精算機にするのか、どの程度の大きさの看板にするのかなどで費用は異なりますが、自営にするのであればそれなりの初期費用を準備する必要があるでしょう。
初期費用をかけずにコインパーキングを始めたいのであれば、一括借り上げ方式がお勧めです。
短期間で始められる
平面の月極駐車場であれば、最低限の土地整備をし、区画用ロープを張るだけで貸し出しが可能です。舗装のみなら1週間程度で工事が完了します。
コインパ―キングでも、舗装、機械の設置、電気工事を含め、着工からオープンまでは2~3週間程度でしょう。
アパートやマンションの場合は、なかなかそうはいきません。新築物件を建設から始めた場合でおよそ1年、中古でもリノベーションや修繕に数ヶ月はかかるでしょう。
土地の購入から1ヶ月以内で事業を開始し収入を得ることができるのは、駐車場投資の大きな魅力の1つです。
土地の広さや形を問わない
普通乗用車1台分の駐車スペースは、長さ6.0m×幅2.5m=15m2の広さが標準とされています。駐車場投資の場合、狭い土地でもいびつな形の土地でも、上記した車が止められるスペースが確保できれば問題ありません。
1台分しか確保できないとしても、1台分の駐車場経営をスタートすることが可能なのです。
駐車場経営をするにしても土地が狭い、変形地であるという場合、バイク駐車場にするという方法もあります。バイクの場合、長さ2.6m×幅員1.3mの広さがあれば大型バイクでも駐車スペースを確保することが可能です。
バイク駐車場は車用の駐車場と比べると供給が少ないため、ニーズの高さがうかがえます。駐車場までの道が狭くても、バイクであれば敬遠材料にならないのも利点といえるでしょう。
土地の転用が簡単
住宅の取り壊しと比べると、少ない費用、短い期間で原状回復ができます。そのため、駐車場からアパート建築へ、駐車場をやめて売却へなど、比較的簡単に転用が可能です。
自営でも一括借上でも、1ヶ月~3ヵ月前に契約者、もしくは運営会社に対し解約予告をすれば、事業をやめることができるのが一般的です。ただし、解約予告期間は契約書の記載によるので、注意しましょう。
また一括借上の場合、中途解約をすると違約金を支払わなければならないケースがあります。契約書をよく確認しておきましょう。
駐車場投資のデメリット
駐車場投資には多くのメリットがある反面、デメリットもあります。
メリット・デメリットをよく理解し、駐車場投資の投資スタイルが自分に合っているか、検討してみましょう。
税制面のメリットが少ない
住宅が建っていれば、住宅用地として固定資産税や都市計画税の減税が受けられますが、駐車場の場合は更地と同じ扱いとなるため、減税の対象外です。
住宅用地の場合、固定資産税や都市計画税の課税対象となる固定資産税評価額は、平米数によって1/3から1/6にまで下げられるという軽減措置があります。
しかし駐車場にはその軽減措置が適用されません。
建物が建てられる広さの土地がある場合、駐車場経営とアパート経営、どちらの収益がより高いか、どちらの投資スタンスが合っているか、よく検討する必要があるでしょう。
収益性が低い
平面駐車場は、アパート経営に置き換えると1フロアしか賃貸できないのと同じことになります。数フロアを賃貸できるアパートやマンションと比べると、どうしても収益性は低くなることが分かるでしょう。
立体駐車場という選択肢もありますが、初期費用が高く、定期的な機械の点検費用や壊れた際の修理費用も必要になります。建築制限で立体駐車場を建築できない土地もあるため、よく確認する必要があるでしょう。
土地の購入から駐車場経営を始めた場合、月々のローン返済があるため、より利益を上げるのが難しい傾向にあります。
駐車場投資の利回り
では、駐車場投資ではどれくらいの利回りが想定できるのか、実際にシミュレーションしてみましょう。
土地の購入からスタートし、月極駐車場とコインパーキングを、それぞれ管理委託で経営する場合の利回りを計算してみます。
駐車場投資は、エリアによって土地の購入価格・賃貸料・駐車料が異なるため、一概に利回りを算出することは難しいものです。今回は、ある地方部における土地価格、賃料、駐車料を基に算出してみます。
一例として参考にしていただき、具体的な利回りはそれぞれが投資を行おうとしている地域の相場に合わせて計算するようにしましょう。
また利回りは、それぞれ以下のような計算式で求めるものとします。
表面利回り(%)=満車時年間収入÷土地価格×100
実質利回り(%)=(満車時年間収入-ランニングコスト)÷(土地価格+初期費用)×100
月極駐車場
【計算例】
賃料8,800円/台
50坪500万円の土地(市街化区域内)を購入
7台の駐車スペースを設置
土地の整備費用100万円(アスファルト舗装、車止め設置、ライン引き)
【年間最大収入】
8,800円×7台×12ヶ月=約74万円
【ランニングコスト】
管理委託費:74万円×10%=7万4,000円
固定資産税・都市計画税:500万円×70%×(1.4%+0.3%)=約6万円
※固定資産税・都市計画税の課税標準額は売買価格の70%が目安といわれています。
これらの条件で満車時の利回りを計算すると、
表面利回り:74万円÷500万円×100=14.8%
実質利回り:(74万円-13万4,000円)÷(500万円+100万円)×100=10.1%
となります。
空車による損失を加味し、稼働率を80%とすると、
表面利回り:(74万円×80%)÷500万円×100=11.8%
実質利回り:(74万円×80%-13万4,000円)÷(500万円+100万円)×100=7.6%
となります。
もし土地の購入費用をローンで賄うのであれば、ローン返済額が費用に加算されるため、利回りは上記より低くなります。
コインパーキング
【計算例】
24時間最大料金1,000円/台
50坪500万円の土地(市街化区域内)を購入
7台の駐車スペースを設置
土地の整備費用100万円(アスファルト舗装、車止め設置、ライン引き)
機械設置台130万円(精算機、ロック板、看板など)
【年間最大収入】
1,000円×365日×7台=約255万5,000円
【ランニングコスト】
管理委託費:255.5万円×10%=25万5,500円
固定資産税・都市計画税:500万円×70%×(1.4%+0.3%)=約6万円
償却資産税:230万円×80%×1.4%=約2万5,000円
※償却資産税は路面塗装や駐車設備に対してかかる税金のことです。
償却資産税評価額の合計が150万円以上の場合に課税されます。
路面塗装・駐車設備の場合、償却資産税評価額は取得費用の約70~90%なので、概算として80%を課税標準額としています。
これらの条件で満車時の利回りを計算すると、
表面利回り:255万5,000円÷500万円=約51.1%
実質利回り:(255万5,000円-34万500円)÷(500万円+230万円)=約30.3%
となります。
かなり高い利回りが算出されましたが、これはあくまで24時間フルに稼働していたケースです。コインパーキングの稼働率はエリアや立地によって大きく異なるため一概には言えませんが、仮にコインパーキングの現実的な稼働率とされる40%で計算すると、
表面利回り:(255万5,000円×40%)÷500万円=約20.4%
実質利回り:(255万5,000円×40%-34万500円)÷(500万円+230万円)=約9.3%
となります。
その他、機械のメンテナンス費用や、融資を受ければローン返済額を収益から差し引くことになるため、さらに利回りは低くなる可能性があるでしょう。
もちろん稼働率が上がればより高い収益も期待できます。駐車場経営成功のために重要なのは、いかに稼働率を上げられるかどうかといえるでしょう。
駐車場投資を成功させるポイント
最後に、駐車場で利益を上げるために押さえておきたい重要なポイントについてお伝えします。
立地を重視する
まず大前提として、車の出入りが必要なので、土地に道路が接していなければいけません。狭い道では通行を避ける人の方が多くなるため、道幅も重要です。最低でも4m(車1台が通れる幅)以上あることが望ましいでしょう。
また月極駐車場かコインパーキングかによっても、適した立地は違います。
月極駐車場は、住宅の敷地内に車を停めるスペースがない人、通勤で会社近くに車を停める必要がある人、来客用駐車場を設けたい会社などからの需要が高いです。そのため、住宅街やオフィス街などが適しています。
一方コインパーキングは、駅、駐車場のない商業施設、繁華街、オフィス街、人気スポットの近くなど、一時的に駐車が必要になる人が多い場所が向いているでしょう。
ただし、来訪者が多い場所はおのずと競合が多くなる傾向があります。出入りのしやすい立地・レイアウトになっているかどうか、周辺の賃料相場に見合っているかどうかなど、運転手から見て利用したい駐車場になるよう意識することが大切です。
住宅地に向かないような土地を狙う
駐車場経営のために購入する土地の狙い目は、建物が建たないような小さな土地、もしくは変形地です。住宅には利用が難しい土地であれば、その分安く手に入れることができる可能性があるでしょう。土地の購入費用を抑えることができれば、その分高い利回りを出すことができます。
ただし、そういった土地は転売が難しい傾向にあるので注意が必要です。駐車場経営がうまくいかなかった場合でも、売却が難しくなる可能性があるため、購入する際はよく検討しましょう。
周辺環境の調査をする
土地を探す際には、周辺環境の調査が不可欠です。
ある程度人口が多い都市で、競合が多すぎない地域が理想的でしょう。需給状況や周辺環境を把握するために、必ず現地に赴き自分の目で確認するようにしてください。
購入を予定している土地が、利用者から分かりやすい位置・使いやすい位置にあるか、競合の料金設定や稼働率はどれくらいか、などをチェックしましょう。
安い土地を手に入れたとしても、料金設定や稼働率が低い状況では、ローン返済や税金が収益を圧迫し、赤字となってしまう可能性もあります。実地調査を反映した収支シミュレーションを立て、駐車場経営が成り立つかどうか、慎重に判断するようにしましょう。
まとめ
駐車場経営は、初期費用が少なく、短期間で事業を始められ、狭小地や変形地でも可能というメリットを持った不動産投資です。駐車場から住宅へなど、土地転用のスピーディーさも魅力の1つといえます。
しかし「アパートやマンションの賃貸経営より簡単そうだから……」と、安易に駐車場投資を選んでしまうことは危険です。
住居の賃貸経営より税金の負担が大きく、収益性が低いというデメリットがあることも、駐車場投資を始める上で押さえておかなくてはなりません。
駐車場の需要に対し、供給が間に合っていない地域を見つけ、好立地の土地を安く取得し、高い稼働率を維持することが成功オーナーになる道といえるでしょう。不動産投資の1つの方法として、駐車場投資をぜひ検討してみてください。