投資用マンションローンは、不動産投資を始める際、物件購入のために利用する重要な要素です。しかし投資用マンションローンは今、不正融資や新型コロナウィルスの影響を受け、状況が大きく変化しているといわれています。
一方では、コロナ禍で多くの人が不安を抱え、働かなくても収益が得られる不動産投資に改めて注目する人が増えています。果たして、投資用マンションローンの将来性は、どのように考えられているのでしょうか?
まずは、投資用マンションローンの特徴を理解し、今後の見通しを見ていきましょう。
さらに、不動産投資と同様に注目を集めている太陽光発電投資についても解説します。不動産投資・太陽光発電投資、それぞれのローンの傾向や将来性を比較してみましょう。
投資用マンションローンとは?
投資用マンションローンとは、不動産投資用の物件を購入する際に利用されるローンの一種です。「アパートローン」と呼ばれることもあります。
一方、事業全般に利用できる「プロパーローン」というものもあります。プロパーローンを利用し、物件購入費用、アパートやマンションの新築・改築費用などに充てることも可能です。
投資用マンションローンの特徴
投資用マンションローンは、家賃収入がローンの返済原資です。そのため融資審査には、個人の属性だけでなく、物件の収益性も重視されます。
また万が一ローン契約者が返済不能となった場合、金融機関は物件を売却して残債を回収しようとします。そのため投資用マンションローンにおいては、融資対象となる物件の担保価値も重視されるわけです。
住宅ローンと投資用マンションローンの違い
住宅ローンは、自分もしくは親族が住むための家を購入する際に利用できるローンです。賃貸向けの投資用不動産を購入する際に用いる投資用マンションローンとは用途が異なるため、投資用物件の購入に住宅ローンを利用することはできません。
また、住宅ローンと投資用マンションローンでは、融資審査の内容や金利も異なります。
住宅ローンと投資用マンションローンの違いや、投資用マンションローンのメリット・デメリットなど、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いと5つの金融機関の特徴
投資用不動産ローンのメリットは?~住宅ローンとの違いや金利の目安~
投資用マンションローンの今後
先述の通り、投資用マンションローンはさまざまな要因から、大きく現状が変化しているといわれています。どのような要因で、どのような変化がみられるのか、解説しましょう。
度重なる不正融資による金融庁からの引き締め
2018年に起きた「かぼちゃの馬車」事件をはじめ、近年地方銀行による不動産投資への不正融資が相次いで発覚しました。金融庁はこれらをきっかけに、各金融機関への不動産融資に対する引き締めを強化。各金融機関は、より厳しい融資審査を行うようになったわけです。
しかし、金融機関はやみくもに不動産融資をしなくなったわけではありません。本来あるべき厳格な融資審査を行っているだけ、と言い換えることもできます。つまり返済の裏付けがとれる適切な投資であれば、現状でも金融機関から融資を受けられる可能性はじゅうぶんにあるといえるでしょう。
不動産投資に対する銀行融資の現状や、融資審査への対応については、融資が厳しい不動産投資に今から参入するべきか?金融機関と上手に付き合う7つのポイントの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
コロナによる投資用マンションローンへの影響
今後の不動産投資において、懸念材料となるのがコロナウィルスの影響ではないでしょうか。
実際、不動産投資への新規融資は自粛傾向にあるようです。しかしそれは、コロナ禍において金融機関が不動産融資をストップしようとしているわけではありません。
現状、金融機関には売り上げが減少した事業者からの相談が増加し、より緊急性の高い融資に優先的に対応しています。つまり、投資用マンションローンに手が回っていない状態であるということができるでしょう。
コロナウィルスの影響により、金融機関がさらに融資を厳しくしようとしているスタンスではない、というのが一般的な見解です。
不動産投資家としては、コロナが落ち着いた時にすぐに金融機関との交渉を再スタートできるよう、絶えずコミュニケーションを取っておくことをお勧めします。
新型コロナウィルスが不動産投資に与える影響については、コロナが与える不動産投資への影響~オンライン化の流れと補助金制度~の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
投資用マンションローンの審査に重要な3つのポイント
融資審査が厳しくなった投資用マンションローンをできるだけ有利に進めるには、どのようなポイントに注意したらよいのでしょうか?
投資用マンションローンの審査に重要なポイントを3つ解説します。
ポイント1. 担保価値の高い土地
担保価値の高い土地にある物件は、金融機関から高い評価を得ることができ、融資審査に有利になるといえるでしょう。
担保価値が高い土地の主な特徴として、以下の3つが挙げられます。
・利便性が高い
スーパーやコンビニ、医療施設など日常生活に不可欠な施設が充実している地域
・交通の便がよい
駅近、もしくは駅までのアクセスが良い地域
最寄り駅からその地域の中心地へのアクセスが良い地域
・住みやすい環境
治安の良さ、嫌悪施設の有無
これらを満たす物件であれば、将来的な不動産価格の下落が少ないと判断され、融資審査に通りやすかったり、有利な融資条件を受けられたりすることが期待できるでしょう。
また、将来的に人口増加が見込まれる地域であれば、高い賃貸需要をキープできると予想されます。家賃下落や空室リスクが少なく、安定したリターンが期待できるでしょう。
融資審査に有利になるだけでなく、不動産投資としても成功率が高まります。
ポイント2. 担保価値の高い建物
建物の担保価値も、融資審査において重要な判断ポイントです。
金融機関は融資審査をする際、該当物件に対して「積算価格」というものを算出します。積算価格とは、土地と建物それぞれの評価額を合計したもので、その物件にどれくらいの資産価値があるのかを見積もるために使用されます。
土地は公示地価や路線価を用いますが、建物はもう少し複雑で、以下のような計算式が使われることが多いです。
建物の評価額=再調達価格×延床面積×(法定耐用年数-経過年数)÷耐用年数
再調達価格とは、その建物を新築として立て直す場合にかかると予想される費用のことで、木造やRC造など建物の構造によって異なります。
つまりこの式から、面積・築年数・構造が建物の担保価値を左右することが分かるでしょう。
ただし、この評価額のみで融資限度額が決まるわけではありません。
その他、建物のセキュリティがしっかりしている・新築である・実用的な設備が備わっているなどの要素があれば、さらに担保価値が上がる可能性があります。
一方、耐震性が基準に満たない・建物に異常があるような場合においては、評価額に悪い影響を与えることが予想されるでしょう。
建物の評価にはさまざまな要素が絡んできます。物件を検討する際には、担保価値を意識することが重要といえるでしょう。
ポイント3. 物件の収益性
投資用マンションローンの審査にあたっては、物件の収益性も重視されます。
投資家は融資申し込みの際、どのくらいの利益が見込まれるのか、空室率・家賃下落率・賃貸需要はどの程度かなどの情報を含めた事業計画や収支計画を提出します。それを参考にしつつ、金融機関も独自に収益性を判断するのが一般的です。
当然のことながら、より収益性の高い物件の方が融資審査には有利になるでしょう。
しかし融資審査への影響に関わらず、物件の収益性は不動産投資をする上で非常に重要な指標です。不動産投資は、家賃-ローン=収益という単純なものではありません。さまざまな経費や修繕費などを含めた、長期的な視点で検討することが大切です。
より具体的かつ現実的な数値に基づいた空室率・家賃下落率かどうか、賃貸需要の想定に誤りはないかなど、さまざまな視点から収益性を判断するようにしましょう。
金融機関別投資用マンションローンの特徴と傾向
投資用マンションローンは、さまざまな金融機関が取り扱っています。
代表的な金融機関として、
・メガバンク
・地方銀行
・信用金庫・信用組合
・ノンバンク
・日本政策金融公庫
・ネット銀行
などが挙げられます。
それぞれ金利や融資スタンスが異なるため、各金融機関の特徴を理解し、各投資家の投資スタンスに合った選択をすることが重要です。
各金融機関の特徴や融資傾向については、融資が厳しい不動産投資に今から参入するべきか?金融機関と上手に付き合う7つのポイントに詳しく解説されています。ぜひ参考にしてください。
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注目されている土地付き太陽光発電投資
コロナ禍において、働かなくても安定した収入が得られる、経済変動の影響を受けにくいとして、不動産投資が注目を集めています。
一方、不動産を購入し毎月家賃収入を得るという一般的な不動産投資以外に、今注目を集めているのが「太陽光発電投資」です。
太陽光発電投資とは、太陽光発電設備を所有して発電を行い、発生した電力を電力会社に売却をして収益を得る方法のことです。
さらに土地付き太陽光発電投資とは、太陽光発電の販売事業者があらかじめ用意した土地に太陽光発電設備を建設し、土地と設備をセットで販売もしくは賃貸するという仕組みになっています。
不動産投資よりも高い利回りが期待できるとして、太陽光発電投資を検討している方も多いようですが、果たして不動産投資と太陽光発電投資は、どちらがお勧めなのでしょうか?
まずは、太陽光発電投資の特徴について簡単に見ていきましょう。
最大の魅力は安定した収益
太陽光発電の大きな魅力は、FIT制度(固定価格買取制度)です。20年間一定価格で電力を買い取ることを国が保証してくれる制度のことで、安定した収益が期待できます。
また不動産投資と同様、発電設備は減価償却することが可能で、節税効果が期待できます。さらに太陽光発電投資には、不動産投資に付き物の空室リスクがありません。
長期的な利益が見通しにくい
太陽光発電は安定した収益が期待できるものの、一方で考慮しなければならないデメリットもあります。
1つ目は、買い取り価格が下がり続けていることです。2012年には42円だった1kWhあたりの売電価格は、2020年には21円まで下落。今後さらに下落が続くいていく可能性もあり、今後の収益性の見通しが立てにくいといえるでしょう。
2つ目は、FIT制度の保証期間が20年という点です。20年後の電力買い取りがどうなるのかは不明であり、長期の収益としては読みにくいというデメリットがあります。
固定での買い取り期間終了後は、自家発電用にする、もしくは新たな電力事業者に売却するという見通しもあります。しかしまだ前例がないため、将来の収益として想定するには少し注意が必要でしょう。
太陽光発電投資や土地付き太陽光発電投資については、こちらの記事に詳しく解説されています。合わせて読むと、より理解が深まるでしょう。
【2020年】今さら聞けない!太陽光発電投資は儲かるのか?
【売電価格40円物件も!?】注目の「土地付き太陽光発電」を掘り下げ!
投資用マンションローンと太陽光発電投資に対するローン比較
次に、不動産投資に利用される投資用マンションローンと、太陽光発電投資に利用される融資にはどのような違いがあるのか、比較してみましょう。
不動産投資 | 太陽光発電投資 | |
投資額 | 数百万円~数億円 | 数百万円~数億円 |
表面利回り | 5%前後(※1) | 10%前後(※2) |
初期投資 | フルローンが可能であれば0円から可能 | |
融資時の金利 | メガバンク…1~2%程度(変動金利の場合) 地銀・信金・信組…1~4%程度(変動金利の場合) 信販系…2~15%程度 政府系金融機関…1~2.5%程度 | 銀行・信金・信組…非公開(1~2%台が一般的) 信販系…2%台 政府系金融機関…1~2.5%程度 |
ローン利用時の注意点 | ・地銀、信金、信組は営業エリア内に物件がある、営業エリア内に居住しているなどの条件が付くケースが多い ・担保価値の高い物件でないと、融資審査が厳しい傾向にある。 | ・地銀、信金、信組は営業エリア内に物件がある、営業エリア内に居住しているなどの条件が付くケースが多い ・設備の販売会社と提携している信販会社しか利用できない ・法人向けの融資しか行っていない銀行もある ・信販会社の融資期間は比較的短い(15年以内など) |
初期費用回収までの期間 | 20年以上かかるケースが多い | 8~12年程度であるケースが多い |
キャピタルゲイン | 売却益が期待できる | 売却益はあまり期待できない |
インカムゲイン | 家賃収入 | 売電収入 |
投資のリスク | ・空室リスク ・家賃下落リスク ・災害リスク ・修繕リスク など | ・買い取り価格が毎年下落している ・買い取り保証期間は20年間のみ |
※1:2019年11月に一般財団法人日本不動産研究所が公表した「第41回不動産投資家調査」による期待利回りのデータ
※2:太陽光発電物件の平均的な表面利回り(参照:一般社団法人日本住宅工事管理業界)
単純に利回りや初期費用回収期間を見ると、太陽光発電投資の方が不動産投資よりも有利に思われるでしょう。
しかし、太陽光発電投資向け融資の場合、個人向けの融資を行っていない銀行が多いことや、融資期間・売電価格保証期間の短さから長期的な見通しが立てにくいといったデメリットもあります。
売電価格が保証される20年間のみを考えれば、太陽光発電投資の収益の高さは魅力的といえるでしょう。しかし、長期的な投資を基本とする不動産投資の方が、将来的な安定性は期待できるかもしれません。
太陽光発電投資の今後
不動産投資と比較されることの多い太陽光発電投資ですが、今後どのような変化がみられるのでしょうか?
不動産投資の将来性と比較するためにも、太陽光発電投資の将来性を見ておきましょう。
太陽光発電に対する補助金制度
以前は太陽光発電設備の導入に対する国からの補助金がありましたが、2013年度で終了してしまいました。これは、太陽光発電がじゅうぶんに普及したことや、FIT制度の導入、太陽光発電設備費用の値下がりなどが影響しています。
しかし、地域によっては各自治体が独自の太陽光発電に対する補助金制度を展開しています。該当地域で補助金制度がないかどうか、ぜひ確認するようにしましょう。
FIT制度による売電価格の低下
先述の通り、FIT制度による売電価格は年々下落傾向にあります。
しかしこれには、太陽光発電設備の導入費用が大幅に下落していることが関係しています。
2020年2月に調達価格等算定委員会が発表した「令和2年度の調達価格等に関する意見」によると、太陽光発電のシステム設置費用平均値は、2012年の42.2万円/kW から、2019年には26.6万円/kWまで下がっています。
単純に売電価格だけを見て判断するのではなく、システム導入費用を含めた収支計算から利回りを算出し、判断する必要があるでしょう。
買い取り価格保証期間終了後の太陽光発電事業
FIT制度の保証期間が10年である家庭用太陽光発電のケースでは、保証期間終了後、別の小売電気事業者と新たな契約を結び、売電を続けている人もいます。
一方、産業用太陽光発電の売電価格保証期間は20年。産業用太陽光発電向けのFIT制度は2012年にスタートしているため、2032年を迎えるまで、買い取り価格保証期間終了後の太陽光発電投資を見極める前例はないということになります。
電力は必要不可欠なものであり、太陽光発電は国を挙げての施策です。そのため、産業用太陽光発電においても、家庭用と同様、保証期間終了後も売電を続けられるような仕組みが作られるかもしれません。しかし、まだまだ20年後が不明瞭であることは事実といえるでしょう。
今後の動きを注意深く見ていく必要があります。
ZEH住宅に対する補助金
「ZEH(ゼッチ)」とは「Net Zero Energy House」の略です。高断熱・高性能設備によって高い省エネ性能を実現し、かつ太陽光発電などでエネルギーを創出することで、年間のエネルギー消費量収支をゼロにする住宅のことを言います。
ZEH住宅としての要件を満たした上で太陽光発電などの設備を導入した場合、国から補助金を受け取ることが可能です。家庭用太陽光発電設備を検討している場合は、要件に該当しているかどうか、ぜひ確認しておきましょう。
まとめ
投資用マンションローンは、相次ぐ不正融資やコロナ禍において、その融資姿勢が厳しくなっている現状があります。そのため、不動産投資以外に太陽光発電投資を検討する人も多いでしょう。
しかし太陽光発電投資においても、売電価格の低下や20年後の不明瞭さなど、考慮すべきポイントは数多く存在します。
担保価値の高い物件を選ぶ、自己資金を用意するなどの対策を立てることができれば、現状であっても投資用マンションローンを組むことは決して不可能ではありません。
投資は長期的な視点で見極めることが重要です。不動産投資、太陽光発電投資、それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、判断するようにしましょう。
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