不動産を所有していると、固定資産税や都市計画税が課税されます。これらは、不動産投資において利益に関わらず必ず発生する費用です。収支計画を立てるにあたり、シミュレーションに含めて考えなければならない、重要な経費の一つといえます。
そこでまずは、固定資産税の課税の仕組みや計算方法などの基礎知識について解説します。さらに、固定資産税の支払いにお勧めのクレジットカード払い・スマホ決済のメリット・注意点について見ていきましょう。
万が一支払いが困難に陥った際の減免措置についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
固定資産税とは?
固定資産税は、土地や建物、償却資産に対し課税される税金です。1月1日時点の所有者に課税される地方税の一つで、不動産投資では租税公課として経費計上することができます。
固定資産税の決定方法
固定資産税額は、基本的に以下の計算式で求められます。
固定資産税評価額×税率1.4%(標準税率)
課税額の基準となる固定資産税評価額は、固定資産評価基準に基づいて各自治体が調査を行い、決定されるものです。3年に1度、評価額の見直しが行われます。
物件の売買価格を基に計算されるものではないことに注意しましょう。
また、1.4%という税率は「標準税率」であり、各自治体において異なる税率を定めることができます。不動産所在地の自治体において、税率を確認しましょう。
固定資産税非課税のケース
同一自治体内で、同一の者が保有する固定資産の課税標準額の合計が免税点(土地30万円・家屋20万円・償却資産150万円)に満たない場合、固定資産税は課税されません。
固定資産税額の計算方法①土地
土地の固定資産税額は次のように計算します。
課税標準額×税率1.4%(標準税率)
課税標準額は、先述した固定資産税評価額を基に、各種特例措置などを適用して算出されます。
住宅用地の特例措置
土地が住宅用地の場合、以下の割合で減額した固定資産税評価額を課税標準額とする特例措置があります。
小規模住宅用地 | 住宅一戸につき200m2までの部分 | 固定資産税評価額×6分の1 |
一般住宅用地 | 200m2を超える部分 | 固定資産税評価額×3分の1 |
(※家屋の床面積の10倍までの土地が対象。併用住宅の場合、家屋の種類と居住部分の割合に応じて規定率を乗じて対象面積を算出。)
例えば、400m2で固定資産税評価額3,000万円の住宅用地(専用住宅)の場合、
小規模住宅用地200m2分…3,000万円×(200/400)×1/6=250万円
一般住宅用地200m2分…3,000万円×(200/400)×1/3=500万円
課税標準額=250万円+500万円=750万円
さらに、評価額の急上昇による税負担の急激な増加や不公平を避けるため、課税標準額を調整する負担調整措置を加えて当年度の課税標準額が算出されます。
固定資産税額の計算方法②家屋
家屋の固定資産税は、次のように計算します。
固定資産課税台帳登録価格×税率1.4%(標準税率)
家屋の場合、固定資産課税台帳の登録価格がそのまま課税標準額となります。
課税台帳に登録される家屋の固定資産税評価額は、
・再建築価格(同一家屋を再度建築した場合にかかる価格)
・経年減点補正率(年数経過により生じる減価率)
・評点一点あたりの価額(地域による物価水準などを考慮した価額)
この3つの数値をかけることで計算されます。
つまり建物価値と同様、年数が経過するほど固定資産税評価額も下がる仕組みです。ただし、経年減点補正率は木造25年・鉄筋コンクリート造60年で下限の0.2に到達し、それ以降補正率が下がることはありません。
新築住宅に対する減額特例
新築住宅が以下の要件を満たす場合、一戸当たり120m2相当分までを上限として、固定資産税額が2分の1に減額されます。
・専用住宅もしくは居住部分が2分の1以上の併用住宅
・床面積50m2以上280m2以下(アパート・マンションなどの貸家の場合は40m2以上280m2以下)
減額期間は、固定資産税課税開始年度から以下の期間です。
・一般の住宅…3年分(認定長期優良住宅は5年分)
・3階建以上の中高層耐火住宅など…5年分(認定長期優良住宅は7年分)
固定資産税額の計算方法③償却資産
償却資産の固定資産税額は次のように計算します。
課税標準額×税率1.4%(標準税率)
償却資産の場合の課税評価額は、取得価額および耐用年数に基いて計算されます。
事業用の資産が対象で、エアコンなどの内装設備のほか、門や塀、路面の舗装などが該当します。
固定資産税の平均値はいくら?
不動産投資にあたり固定資産税は必ずかかる費用になるため、あらかじめ金額を知りたい方もいるでしょう。しかし、固定資産税額は地域や物件など個々の環境によって異なるため、一概に平均値を算出するのは難しいです。
そこで、物件種類別の固定資産税の傾向や、おおまかな目安を見ていきましょう。
固定資産税評価額を左右する3つの要素
固定資産税の基となる固定資産税評価額は、主に「築年数」「面積」「構造」の3つの要素によって左右されます。
似たような条件の物件であれば、土地や物件の床面積が大きければ大きいほど評価額は高くなります。また建物においては、築年数の古いものより浅いもの、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が、評価額が高くなるのが一般的です。
これは、残存耐用年数が長い方が、建物の価値が高いと判断されるためです。
その他、地域による地価の変動、物件設備によっても左右されます。
物件種別による固定資産税の違い
固定資産税額は、戸建て・アパート・マンションなどの物件種別によっても差が生じます。なぜなら、先述の通り建物の構造によって耐用年数が異なり、所有する敷地面積も異なるからです。
例えば、戸建てと区分マンションでは土地の保有面積が異なります。土地を区分所有するマンションに比べて、土地の保有面積が広い戸建ての方が、土地に対する固定資産税は高額になるでしょう。
ただし、マンションは鉄筋コンクリート造であることが多く、木造の戸建てに比べて建物の評価額が高くなります。
都市部など地価が高い地域では、戸建ての方がマンションよりも固定資産税は高額になる傾向があります。
しかし戸建ての場合、住宅用地に対する軽減措置を大きく活用することが可能です。マンションの広さや設備などによっては、逆転するケースもあるでしょう。
マンションと木造アパートでは、建物構造の違いから、マンションの固定資産税の方が高額になる傾向にあります。
また新築と中古では、通常、経年劣化を加味した中古の方が固定資産税は安くなるのが一般的です。しかし、先述の通り新築住宅には軽減措置があるため、場合によっては中古の方が割高になるという逆転現象が起こることがあります。注意しましょう。
固定資産税の目安
固定資産税の目安を知るために、まずはおおまかな固定資産税評価額を算出しましょう。
土地の場合、固定資産税評価額はおおよそ公示地価の70%程度になるよう設定されています。公示地価は国土交通省が定めるもので、LIFULL HOME’Sでも、「見える!賃貸経営」のサイトで確認することができます。
購入を検討している地域の公示地価の70%の額に1.4%の税率をかけることで、おおまかな土地の固定資産税を知ることができるでしょう。
一方建物の場合、固定資産税評価額は再建築費用の50~70%になることが多いといわれています。再建築費用の50~70%の額に税率1.4%をかければ、おおよその固定資産税が分かるでしょう。
ただし建物の場合、築年数や構造、設備によって評価額が異なります。土地・建物どちらの場合においても、この算出方法で出た数値は、あくまでおおまかな目安として捉えておきましょう。
固定資産税評価額の調べ方
中古物件の場合には、前所有者が納税済みの昨年分の納税通知書が参考になります。添付されている課税明細書に固定資産税額や固定資産税評価額が記載されていますので、売り主や不動産会社に確認してみましょう。
新築物件の場合、建物が確定するまで評価額の算出ができません。不動産会社などに確認すれば、おおよその目安を教えてもらえる場合もあるでしょう。
その他「固定資産課税台帳の縦覧」という方法もあります。
固定資産課税台帳には、各自治体が決定した固定資産税評価額が記載されています。納税者から縦覧することの委任を受けていて、定められた縦覧期間内であれば、各地域の税事務所にて無料で閲覧することが可能です。
固定資産税とともに課税される都市計画税
都市計画税は、都市計画法による市街化区域内に土地や家屋を所有する人に課税される税金で、固定資産税と一括で徴収されるものです。税額は、
固定資産税評価額×0.3%以内(制限税率)
で計算されます。税率は最高で0.3%に制限されており、各自治体によってさまざまです。
都市計画税にも軽減措置が設けられています。住宅用地の場合、200m2までの部分は固定資産税評価額×3分の1、200m2超の部分は固定資産評価額×3分の2に軽減されます。
固定資産税の納税方法
固定資産税と都市計画税は、毎年4~6月にかけて所有者に納税通知書が送付されます。複数の自治体において複数の不動産を保有している場合は、それぞれの自治体から納税通知書が送付され、各自治体にそれぞれ納付する仕組みです。
納付は自治体指定の時期に年4回に分けて支払うか、一括で支払います。
固定資産税の支払い方法
近年、固定資産税は多様な方法で支払うことが可能です。金融機関や窓口での支払いの他、口座振替やインターネットバンキングを利用したペイジー(Pay-easy)払い、クレジットカード、スマートフォンアプリを使用するスマホ決済などが使用できます。
自治体によって対応している支払い方法が異なりますので、各自治体のHPなどで確認しておきましょう。
年途中で売買した場合は取引相手と精算
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点での所有者に課税されるものです。たとえ年度の途中で売買した場合でも、自治体から返金を受けたり、新たに請求されたりすることはありません。
そのため、固定資産税・都市計画税は売買契約の際に売り主・買い主の間で日割り計算し、精算を行うことが通例です。売買のタイミングによって、課税関係で損得が生じることがないように配慮されています。
延滞すると延滞税が発生
他の税金と同様、固定資産税や都市計画税の支払いが遅れた場合、納期限の翌日から納付日までの間、以下の税率で計算された延滞税が発生します。
【令和3年1月1日以降の期間に対応する延滞税率】
・納期限の翌日から2ヶ月までの期間…「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い方
・納期限の翌日から2ヶ月を経過する日の翌日以降…「年14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方
(※計算の結果100円未満は切り捨て。延滞税が1,000円未満の場合、納税不要)
支払いをうっかり忘れてしまうと余計なコストがかかってしまいますので、期限に遅れないよう納付しましょう。
固定資産税の支払いにお勧め①クレジットカード払い
固定資産税をはじめ、各種税金のクレジットカード払いに対応する自治体が増えてきています。現金払いと比較してどのようなメリット・注意点があるのか見ていきましょう。
クレジットカード払いのメリット
自治体によっては、納税サイトや「Yahoo!公金」を利用することで、クレジットカード払いができます。クレジットカードで支払うと、決済金額に応じ所定のカード会社のポイントやマイルなどを貯められることが大きなメリットといえるでしょう。
またクレジットカードを使用した場合、支払いのタイミングはカード利用料金の引き落とし日になります。実際に引き落とされるのは支払い手続きを行った1~2ヶ月先になるため、一時的に現金を確保しておきたいときに便利です。
クレジットカード払いの注意点
クレジットカードで税金を支払う場合、別途1%前後の決済手数料がかかります。ただし、クレジットカードによってはポイント付与率の方が有利になることもあるでしょう。決済手数料と特典を比較して判断することをお勧めします。
またクレジットカードには利用限度額が設定されていますので、固定資産税の金額によっては限度額を超えてしまうこともあるかもしれません。その場合には、限度額に余裕のある上位ランクのクレジットカードを利用するか、別途事業者向けカードを検討するとよいでしょう。
自治体によっては、クレジットカード払いができる税額に上限を設定している地域もあります。事前に確認しておきましょう。
その他、クレジットカードを利用した場合、納税証明書の発行まで2週間程度かかることにも注意が必要です。納付直後に物件を売却予定の場合や、新たに融資を受けたい場合など、納税証明書がすぐに必要となるケースには適しません。
固定資産税の支払いにお勧め②スマホ決済
スマートフォンアプリを使用したスマホ決済に対応している自治体もあります。例えば、2021年1月時点において東京都で利用できるのは「LINE Pay」と「PayPay」の2つの決済サービスです。
スマホ決済のメリット
スマホ決済は、条件を満たせば利用金額に応じたポイントが貯まります。原則手数料無料で利用できるので、結果的に現金で支払うよりもお得になるでしょう。
スマホ決済の注意点
スマホ決済を利用する場合には上限金額に注意が必要です。
納付書1枚あたりの上限金額は、延滞金や加算金を含め、30万円以下となっています。スマホ決済には、バーコードが記載されている納付書が必要ですが、30万円を1円でも超えるとバーコードが印字されません。注意しましょう。
またスマホ決済は、決済アプリ側の設定やアカウントの契約状態によっても支払える上限金額が異なります。固定資産税の支払いに利用したい場合には、これらの状況を事前に確認しておきましょう。
現在口座振替を利用している方には、バーコード付きの納付書が送付されません。スマホ決済を利用したい場合には、管轄の納税課や税事務所に口座振替停止の連絡が必要です。
クレジットカード払いと同様、スマホ決済の場合も納税証明書の発行には2週間程度の時間がかかることにも注意しましょう。
固定資産税の支払いが困難な場合の対処法
固定資産税の支払いが困難な場合には、支払いの猶予や減免制度も用意されています。いずれも自動的に適用されるわけではなく、申請が必要です。納期限を迎える前の手続きが必要なケースもありますので、支払いが難しくなりそうな場合は早めに関連制度を確認しておきましょう。
現行の猶予・減免制度
固定資産税は、災害などにより土地・家屋・償却資産が滅失または甚大な被害を受けた場合、その被災の程度に応じて減免されます。
また、課税対象者が災害、病気、事業の休廃業などによって一時的に納税が難しいと認められる場合には、原則1年以内の間、税徴収が猶予されます。徴収の猶予が適用された場合、分割による納付が可能です。
猶予・減免制度の特例が設定されることも
大規模な災害や経済状況に大きな打撃が生じる事態が発生した場合には、現行の猶予・減免制度とは別に、特例措置が設けられることがあります。
例えば、新型コロナウイルス感染症に関連する徴収猶予の特例制度です。収入が前年同期に比べ20%以上減少し、かつ納税が困難な場合、2020年2月~2021年2月1日を納期限とする地方税が徴収猶予の対象となりました。猶予期間は、納期限から最長1年です。
さらに2021年度分の固定資産税・都市計画税についても、全額または2分の1の減免制度があります。
2020年2月から10月までの任意の連続する3ヶ月間の事業収入が、前年同期比で30%以上減少した中小企業者・小規模事業者が対象です。
まとめ
固定資産税は、不動産を保有している以上必ずかかる経費です。物件購入前から、いくらくらいかかるのかをよく調査し、必ず収支計画に組み込んでシミュレーションするようにしましょう。
固定資産税には、一括払いや口座振替による割引制度はありません。しかし、クレジットカード払いやスマホ決済を活用することで、ポイント付与などのメリットを享受できる可能性があります。対応する自治体が増加していますので、上手に活用してみてはいかがでしょうか。
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