資産形成を考える中で、働かずともお金が入ってくる不労所得を持つことに憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか。
不労所得を手に入れるにはさまざまな手段があります。そこで、主な不労所得の種類や特徴、所得が得られるようになるプロセスについてご紹介しましょう。
また、不労所得の一つに分類される不動産投資を選ぶメリットについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
不労所得とは
「不労所得」とは、会社からもらう給与や自営業の売上げなど、個人の勤労に対する直接的な所得、いわゆる「勤労所得」に当てはまらない所得のことです。主に権利に基づいて発生する収入や、投資による収益などが挙げられます。
不労所得には「働かずとも得られる収入」という意味がありますが、実際にはその不労所得を得られるようになるまでには何らかの労働を伴うことが一般的です。
不労所得を持つメリット
不労所得を持つことには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
直接的労働がなくても収入が得られる
先述の通り、不労所得には「働かなくても収入が入る」というイメージがありますが、その収益の仕組みを作るまでには、何らかの労働や準備、費用、時間がかかることが一般的です。
しかし一度その仕組みを完成させてしまえば、直接的・日常的に労働を行わなくても収入が得られるというのは、不労所得の最大のメリットといえます。本業を持ちながらでも、それに大きな影響を及ぼすことなく収入を増やすことができるでしょう。
万が一の際の保険になる
不労所得があれば、万が一何らかの事情で働けなくなった場合でも、収入が途絶えてしまう事態を避けられるという保険のような役割を果たしてくれます。将来的に年金だけでは老後資金が不安という方にも、不労所得があれば安心材料となるでしょう。
副業禁止規定に抵触しないケースがある
近年、より多くの収入を得るために、本業と別に副業を持ちWワークに取り組むことも珍しくなくなりました。しかし、本業と別にもう一つ仕事を持つことは、時間や体力を必要とします。本業に支障をきたすという理由から、会社で副業が禁じられているというケースもあるでしょう。
不労所得に含まれる種類の副業であれば、一般的に役務を提供するものではないという性質から、副業禁止規定のある会社でも問題とならないケースがあります。例えば、株式投資や不動産投資などです。
ただし、副業規定が厳密な企業や公務員などの場合は、副業とみなされない条件を事前によく確認するようにしましょう。
不労所得の注意点
不労所得は、労働への対価のように収入が保証されているわけではありません。時間や手間、費用をかけて不労所得の仕組みを構築したからといって、確実に収益が得られるわけではないということを理解しておきましょう。
例えば権利によって生じる不労所得なら、その権利を獲得するまでに時間や手間・費用がかかります。しかし、その権利による収益がじゅうぶんに得られなかった場合、かけた労力が無駄になってしまうでしょう。
資産を元にした不労所得の場合には、収益が得られなくなるだけでなく、むしろ損失となってしまう可能性もあります。
こうしたリスクを理解した上で、不労所得に取り組まなければならないでしょう。
主な不労所得8種類の特徴・リスク
では、不労所得を得るにはどのような方法があるのでしょうか。主な不労所得8種類の収入の仕組み、メリットやリスクなどの特徴について解説します。
株式投資
収益の種類 | メリット | リスク |
・配当金 ・株主優待などのサービス ・株価変動を狙った売却益 | ・低額で始められる ・短期間で大きな利益を得られる可能性がある ・流動性が高い ・維持管理費用がかからない | ・元本割れ ・企業の倒産により株式の価値がなくなる可能性 ・値動きが大きく予想が立てにくい ・融資を受けられない |
株式投資は、上場企業の株式を購入して始める投資手法です。企業が得た収益の一部を株式保有者に分配する「配当金」と、株式市場における価格変動を狙った「売却益」が主な収益になります 。
近年ではネット証券会社の登場により手数料水準が下がり、スマートフォンアプリからも取引ができるようになりました。
また、株式の取引単位(単元)は多くの銘柄で100株となっていますが、1株から取引可能な単元未満株を扱う証券会社も増えています。より低額から始めることもでき、株式投資は身近な投資商品といえるでしょう。
ただし、株式投資の配当利回りは年間約2.4%(2020年東証第一部加重平均利回り)。つまり、不労所得としてある程度の収入を得るためには、多額の資金が必要になるといえます。
株式投資最大のリスクは、株価が常に変動することです。企業の業績悪化や市況の悪化が起こった場合、株価が大きく値下がりし損失を被るリスクがあります。投資金額が大きくなるほど、そのリスクも大きくなることに注意が必要です。
不動産投資と株式投資については、不動産投資と株式投資の違いを徹底比較!利回り・リスク・流動性などの記事に詳しく解説されています。ぜひ参考にしてください。
投資信託
収益の種類 | メリット | リスク |
・分配金 ・譲渡益 | ・低額で始められる ・分散投資が可能 ・手間がかからない | ・手数料がかかる ・元本保証がない |
投資信託は、専門家が株式・債券・不動産などの金融商品を組み合わせて、投資家の代わりに資産運用してくれる投資商品です。プロが運用すること、複数の投資銘柄を組み合わせていることから、個別銘柄への投資に比べると低リスクだと考えられています。
小資金で取り組めるものが多く、積立商品などリスク回避に配慮した商品を選ぶことも可能です。
ただし、投資信託は販売時手数料のほか、プロにお任せするための運用管理費用などがかかります。
投資の手間をかけたくない、リスクを少なくしたい方に向いている投資商品です。
投資信託の中には、不動産に特化した不動産投資信託(REIT)というものがあります。賃貸物件を運用する一般的な不動産投資と、REITの違いについては、以下の記事を参考にしてください。
不動産投資と不動産投資信託(REIT)どちらがいいの?(前編)
不動産投資と不動産投資信託(REIT)どちらがいいの?(後編)
FX(外国為替証拠金取引)
収益の種類 | メリット | リスク |
・金利差を利用したスワップポイント ・売却益 | ・レバレッジをかけることができる ・大きなリターンが期待できる | ・国内外の経済情勢の影響を受ける ・為替変動により大きな損失となる可能性がある ・常に為替レートをチェックする手間がかかる |
FXは、円やドルなどの通貨を為替レートの変動を利用して売買し、差益を得る投資商品です。例えば1ドル=104円の時に1万ドルを買い、105円になった時に売却した場合、1万円の利益になります。こうした売買益のほか、異なる2国間の通貨の金利差調整金として「スワップポイント」と呼ばれる収益が得られます。
FX取引の大きな魅力は「レバレッジをかけられること」でしょう。
レバレッジとは、少ない元手で大きな収益を得ることです。FXの場合、証拠金として金融機関に預けた金額の何倍にも相当する資金を動かして取引することができます。
例えば1ドル=100円、元手100万円の場合、本来であれば1万ドルしか買えません。しかしレバレッジ10倍を効かせることで、同じ元手でも10万ドルの取引を行うことができるのです。
FX取引は、国内業者での取引の場合、最大25倍のレバレッジをかけることができます。
このように、FXは小資金でも大きな利益が得られる可能性がありますが、一方で大きく為替が変動した場合には、想定以上の損失となることもあるため、注意が必要です。
また、外国為替は国内外のさまざまな社会情勢の影響を受けやすく、投資商品としては高リスクといえるでしょう。
債券
収益の種類 | メリット | リスク |
・利息 ・売却益 | ・手間がかからない ・預金よりは高金利 ・利益の見通しが立てやすい | ・株式などに比べて収益性が低い ・元本割れ ・社債の場合、倒産・破綻リスクがある |
債券投資とは、国や地方公共団体、企業などにお金を貸し、発行元からの利息を収益とする投資手法です。期限まで保有していれば、額面に記載された金額が戻ってくる仕組みになっています。また債券が値上がりしていれば、中途売却により売却益を得ることも可能です。
債券は、一般的に預貯金よりも高い金利が設定されていること、期限と利率が決まっているため利益計算しやすいことがメリットといえるでしょう。
一方、国債は比較的安全性が高いものの、社債には企業の倒産・破綻リスクや、元本割れリスクが存在します。債券選びには、知識が必要です。
ポイント投資
収益の種類 | メリット | リスク |
・購入した金融商品によってさまざま(配当金や売却益など) ・収益に応じたポイント増減 | ・現金支出がない ・少額から気軽に始められる ・貯まったポイントを有効活用できる | ・リターンが少ない ・購入した商品によって、元本割れや倒産・破綻リスクがある |
商品購入やサービス利用によって付与されるポイントを使って投資ができる「ポイント投資」が登場しています。
ポイント投資には2つのタイプがあります。一つは、ポイントを使用して投資信託や株式を購入し、収益は現金で受け取る方法。もう一つは、投資商品に連動する形でポイントが増減される方法です。
現金資産を減らすリスクを背負いたくない方や、お試しで投資に取り組んでみたいという方に向いている投資方法といえるでしょう。ただし、投資に用いるのは通貨ではなくポイントのため、少額の投資になり大きな収益を狙うことは難しいかもしれません。
広告収入
収益の種類 | メリット | リスク |
・広告表示に対する報酬 ・広告からの商品・サービス購入に対する成果報酬 | ・初期コストがかからない | ・収益化まで時間がかかる ・アクセス数によっては収益が出ない可能性がある |
ブログやWebサイト、YouTubeなどの動画配信サイトを運営し、そこに広告を掲載することにより収益を得る方法です。収益となる仕組みには、広告を表示することによる報酬と、広告から商品やサービスの購入に至った場合に得られる成果報酬の2つがあります。
ブログやWebサイトは無料でも開設できるため、初期コストをかけずに始めることができます。しかし、実際に収益が得られるようになるまでにはアクセスを集めることが必要で、収益化まで時間がかかることが一般的です。
広告収入でじゅうぶんな収益をあげるために、本格的なWebサイトの運営を検討する人も多いでしょう。そのためには専用のサーバーレンタルや、アクセスを集めるための広告が必要となり、費用がかかるケースもあります。
コンテンツの内容にもよりますが、安定した収益を得るためには、サイトの定期的な更新作業や、コンテンツの見直しが必要になることも多いです。広告配信関連の知識も学ばなければなりません。
不労所得の一種とはいえ、全く労働なしで広告収入を得ることは難しいといえるでしょう。
印税
収益の種類 | メリット | リスク |
・著作権収入 | ・損失となることがない ・作品が存在する限り、使用、販売に対して継続的に収益が発生する | ・作品を作る才能、労力が必要 ・かけた労力に対し収益が保証されているわけではない |
印税とは、本・楽曲などの発行や使用に対する著作権収入で、発行数もしくは販売数、使用数の〇〇%といった形で契約されることが一般的です。
印税収入のメリットは、投資のように損失を被ることがないことです。また、一旦作品を製作してしまえば、それが販売・使用される限り継続的な収入となることもメリットといえます。
しかし印税収入を得るには、その収入源となる作品を制作する必要があり、かつそれが広く使用・購入されなければなりません。不労所得としてまとまった収入となるには才能も労力も必要であるといえます。
ただし現在はインターネットの普及により、本なら電子書籍、楽曲なら配信サイトなどが手軽に利用できるようになりました。かつてはプロのものという性格の強かった印税収入ですが、近年、作品を製作・発表して収入を得るハードルは下がってきているといえるでしょう。
本や楽曲のほか、写真(ストックフォト)やイラストなどを発表し、利用(ダウンロード)回数に応じて収益が得られるプラットフォームもあります。
不動産投資
収益の種類 | メリット | リスク |
・家賃収入 ・物件の売却益 | ・ローンを組むことができる ・老後の年金代わり、生命保険代わりになる ・比較的収益が安定している ・インフレの影響を受けにくい ・節税効果がある ・相続税対策ができる ・現物資産が手に入る | ・家賃下落リスク ・価格下落リスク ・空室リスク ・災害リスク ・修繕リスク ・入居者トラブルリスク |
不動産投資は、購入した不動産を基にして収益を得る投資方法です。不動産を貸し出すことによる家賃収入のほか、不動産が値上がりした場合には売却益を期待することもできます。
物件購入には初期費用がかかるため、資産のある人しか取り組めないと思う方も多いでしょう。しかし実際には、物件価格の2~3割程度の自己資金があれば、残りの費用はローンを利用して投資を始められるのが一般的です。個人の属性や物件によっては、頭金なしのフルローンを組むことができるケースもあるでしょう。
不動産投資は、投資の中ではミドルリスク・ミドルリターンとされており、中長期的な目線で行う投資という性質があります。そのため、老後の年金代わり・生命保険代わりとなる資産形成として多く選ばれています。
不動産投資の基礎知識・メリット・デメリットについては、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
不動産投資入門者のための基礎知識~5つのリスクと初心者お勧め物件~
不動産投資の魅力
初めての不動産投資を失敗させないために重要な5つのポイント
不労所得を確保する手段に不動産投資が選ばれる理由とは
ここまで見てきたように、不労所得を手にするにはさまざまな手段があります。その中でも、不動産投資が選ばれる主な理由を2つご紹介しましょう。
手法がある程度確立している
不動産投資の手法は、不動産を貸し出して収益を得るというシンプルなものです。また歴史のある投資手法のため、すでにある程度のノウハウが揃っています。もちろん物件選びは重要になりますが、初心者でも比較的取り組みやすい投資手法といえるでしょう。
手間や労力をかけずに運用可能
不動産投資は賃貸経営ですので、収益を得るにあたり入居者や物件の管理などを行わなければなりません。しかし、不動産の管理業務は管理会社に委託することが可能です。オーナー自らの手間をかけずに投資に取り組むことができます。
他にも、不動産投資には資産の拡大がしやすい、安定した収益を得やすいなどの特徴があります。不動産投資を選ぶメリットを詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
不動産投資が選ばれる4つの理由
不動産投資の種類
不動産投資には、マンションやアパートなどの賃貸住宅を用いるものから、駐車場投資や民泊、コインランドリー投資など、さまざまな手法があります。それぞれ必要となる資金額や期待できる利回り・運用の手間が異なりますので、特徴やリスクを知り、自分の環境に合った投資を検討しましょう。
不動産投資の投資先別のメリット・デメリット・リスクなどは、以下の記事に詳しく記載されています。
【不動産投資】物件種類別メリット・デメリット・リスクまとめ
【不動産投資】駐車場経営の基礎知識~メリット・デメリット・利回り~
民泊新法に注目!民泊投資を始める前に知りたい最低限の知識
利回り10%以上って本当?コインランドリー投資の実態
まとめ
不労所得とされる収入の主な種類とそれぞれの特徴について解説しました。不労所得というと何もせず自動的にお金が入ってくるものと思われがちですが、収益化の仕組みを作るまでに、大変な苦労やリスクを背負うものもあります。
家賃収入が期待できる不動産投資は、数ある不労所得の中でも、初心者でも比較的取り組みやすい投資です。将来に向けた資産形成を目指す方、副収入を増やしたいという方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。