不動産投資を始めたばかりの人にとって、確定申告は難しいイメージがあるのではないでしょうか?また最初のころは「大した収入ではないので確定申告しなくてもいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
本来行うべき確定申告を怠っていた場合、罰金として重い加算税が課せられてしまうケースがあります。そこでこの記事では、家賃収入を確定申告しないとどうなるのか、なぜバレるのかについてみていきましょう。不動産投資にかかる税金の種類や、確定申告の修正方法などについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
不動産投資にはどんな税金がかかる?
不動産投資でかかる税金には以下のようなものがあります。
不動産取得税 | 不動産を取得した時に係る税金 固定資産税評価額×3%(土地と住宅用家屋の場合) 新築住宅に対する特例控除や、宅地に対する軽減措置などあり |
登録免許税 | 土地や建物の所有権を登記し、公示する手続きのために治める税金 固定資産税評価額×0.4%~2.0%(登記の種類により異なる) |
印紙税 | 売買契約書などに添付する必要のある税金 契約金額に応じて異なる(以下、一例) 500万円~1,000万円 1万円 1,000万円~5,000万円 2万円 5,000万円~1億円 6万円 |
所得税 | 個人の所得に対してかかる税金 課税所得金額×税率(5~45%) 所得税率は、課税所得金額が増えれば増えるほど上がる累進課税方式 |
住民税 | 居住している自治体に支払う税金 課税所得金額×10%+5,000円 (自治体によって異なる場合あり) |
固定資産税 | 購入した不動産のある市町村に支払う税金 固定資産税評価額×1.4% 住宅用地、新築住宅に対する軽減措置あり |
都市計画税 | 市街化区域内の土地・建物に対してかかる税金 固定資産税評価額×0.3%以内 住宅用地に対する軽減措置あり |
個人事業税 | 個人事業主であっても、地方自治体が定める「事業的規模」に該当する場合に発生する税金 (不動産所得-各種控除)×5% 290万円の事業主控除あり |
家賃収入にかかる税金
表に挙げた税金の中で、家賃収入に対して課税される税金は
・ 所得税
・ 住民税
・ 個人事業税
の3つです。
不動産投資にかかわる税金について、詳しくは以下の記事に解説されています。大切な知識ですので、ぜひ併せて読んでみましょう。
不動産投資にはどのような税金がかかるのか?
家賃収入にかかる税金・経費・正しい確定申告の方法とは?
家賃収入を確定申告しなくてもよいケース
不動産投資で家賃収入が発生した場合であっても、不動産所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。
ここでいう「不動産所得」とは、総家賃収入から必要経費を差し引いた後の金額を表します。「家賃収入が20万を超えたら」ではありませんので注意しましょう。
不動産投資でかかる経費については、不動産投資の鍵「経費」を理解しよう!経費の種類・範囲は?をぜひ参考にしてください。
家賃収入20万以下でも確定申告が必要なケース
サラリーマンの方など他に給料所得がある場合でも、基本的には不動産所得が20万円を超えなければ確定申告の必要はありません。
ただし給与収入が2,000万円を超える場合や、他の副業による所得との合計が年間20万円を超える場合など、所定の要件に該当する人は確定申告が必要です。事前によく確認しましょう。
確定申告が不要でも、した方がいいケース
不動産所得は、本業の給与所得と損益通算できるという特徴があります。
もし家賃収入から必要経費を差し引いた結果、所得が赤字だった場合、給与所得と損益通算することで、本業の課税対象となる所得額を減らすことが可能です。
払いすぎた所得税などの還付が受けられる可能性があるでしょう。
このような場合は、確定申告が不要な家賃収入額であっても、確定申告した方が節税になります。
家賃収入を確定申告していないとどうなる?
不動産所得が20万円を超えている、もしくは確定申告が必要な要件に当てはまるにもかかわらず確定申告を怠った場合、支払うべき税額に対し以下の加算税が課されます。
条件 | 税率(追加本税に対する) | |
過少申告加算税 | 期限内申告に対する修正申告・更正 | 10% 期限内申告税額もしくは50万円どちらか多い金額を超える部分には 15% (税務署からの通知前に自主的に申告・納付する場合は非課税) |
無申告加算税 | ① 期限後申告 ② 期限後申告に対する修正申告・更正 | 50万円以下の部分 15% 50万円超の部分 20% (税務署からの通知前に自主的に申告・納付する場合は5%) |
重加算税 | 隠蔽など悪質な場合 | 過少申告加算税に代えて35% または 無申告加算税に代えて40% |
延滞税 | 法定納期限までに納税しない場合 | 納期限の翌日から完納までの日数に応じて2.6%~8.9%程度(2020年度参考値) |
申告漏れの部分に課される税率は、制裁の意味合いもあり、重たい税率になります。
また、確定申告しなければいけない人が、納税申告書を期限までに提出しない場合、それ自体が犯罪になります。脱税が刑事事件に発展する可能性もあり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、違法性の強いものは5年以下の懲役または、500万円以下の罰金またはその両方が科されます。
家賃収入の無申告はなぜバレる?
では、家賃収入を確定申告しなかった場合、どうしてバレてしまうのでしょうか?
取引会社への税務調査
不動産投資・賃貸経営をするには、不動産会社や管理会社、金融機関、修理業者などさまざまな企業との関わりがあります。それらの企業とオーナーの間では、必ずお金を支払ったり、受け取ったりといったお金の流れが発生しているはずです。
そうした会社に税務署が調査に入った場合、各企業が記録するあなたとのお金のやり取りや業務内容を税務署がチェックすることになります。取引先には記録があるのに、あなたが確定申告していないと、当然税務署は「おかしい」と思うでしょう。
確定申告を怠っても、すぐにはバレないかもしれません。しかし、税務署は税金のプロです。いずれバレる可能性は高いと考えておきましょう。
マイナンバーでバレる可能性も
確定申告や支払調書にはマイナンバーが紐付けられています。そのため税務署がマイナンバーを検索すれば、簡単にお金の流れを把握したり情報を照合したりすることが可能です。
例えば、自身が所有する賃貸物件に個人事業主や法人が入居している場合、家賃は経費として計上されていることが一般的です。入居者の確定申告に紐付いた情報から、あなたに家賃収入が発生していることが発覚する可能性があるでしょう。
その他、金融機関と取引する場合にもマイナンバーの提示が必要になることもあります。
近年、さまざまな申告や届け出にマイナンバーが必要とされるようになってきました。税務署がマイナンバーを利用して無申告をあぶり出すのは、難しくないといえるでしょう。
確定申告と税金の時効の関係は?
税金には時効があります。時効を過ぎると、税務署は納めていない税金を請求することができなくなり、納税義務が消滅することになります。
申告期限までに確定申告を済ませている場合の時効は3年。申告をしなかった場合は5年。虚偽や不正な申告が認められる場合の時効は7年間です。
しかし、時効期間中に税務署から督促状が送られた場合は、これまで経過した年月はリセットされ、督促状の送付日から新たに時効期間がカウントされます。
税金の時効期間を過ぎれば逃げ切れる……?
「時効期間を逃げ切れば、納税しなくても済むのでは……」と思う方もいるかもしれません。しかし先述の通り、税務署は税金のプロであり、無申告や虚偽申告を徹底的に調べ上げようとします。督促状が送られたら、時効もリセットです。
納税の時効期間を逃げ切ることは、ほぼ不可能だといわれています。
確定申告の間違いに気づいたときの対処法
最後に、確定申告の間違いに気づいた時の対処法について解説しましょう。
確定申告期限内に間違いに気づいた場合
まず、確定申告期限内に、すでに提出した申告内容に間違いがあった場合です。この場合は、改めて申告書を作成し直し「訂正申告」として再度税務署に正しい申告書を提出しましょう。訂正申告も、申告期限内に行う必要があります。
この場合においては、ペナルティはありません。
確定申告期限後に間違いに気づいた場合
次に、確定申告期限後に間違いに気づいた場合です。税金の還付がある場合は「更正の請求」、逆に税額を少なく申告してしまった場合は「修正申告」となります。
税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税はかかりません。無申告加算税も5%に軽減されます。なるべく速やかに修正申告を提出するようにしましょう。
ただし修正申告の場合、すでに確定申告の期限を過ぎているので、追加で納める税額に対して延滞税は避けられません。また追加で納める税金の納期限は、修正申告の提出日です。提出と同時に納めなければなりませんので、注意しましょう。
まとめ
家賃収入から経費を引いた金額が20万円を超えれば、確定申告が必要です。初心者にとって確定申告の作業は大変かもしれませんが、納税は国民の義務です。正しく確定申告を行い、間違いに気づいたときはすぐに修正申告することが原則といえるでしょう。
不動産投資における確定申告については、以下の記事を参考に、よく理解しておきましょう。
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