コロナウィルスの影響によって、収入や貯蓄面で先行きに不安を抱える人が増えています。なかなか収入が増えず、社会保険料も上昇している昨今、よりお金を効率的に生かす方法が必要です。
この記事ではまず、多くの人がどのようなことに先行きの不安を感じているか、具体的な統計結果を見ていきます。そして、それらの不安を解消するのに有効で、かつ投資初心者にもおすすめの投資方法をご紹介しましょう。
先行きに不安を感じる要因
2020年から始まったコロナ禍も相まって、多くの人が抱えている先行きへの不安。具体的にどのようなことに対して不安を持っているのか、どんなことが先行き不安の要因となっているのか、見ていきましょう。
多くの人は先行きにどんな不安を感じている?
2019年6月に行われた内閣府の世論調査にて、日頃の生活の中で「悩みや不安を感じている」と答えた人のうち、どのような点に不安や悩みを感じるか調査したところ、以下のような結果が出ました。
日常生活の中で、老後の生活や自身・家族の健康、収入についての悩みを抱えている割合が非常に多いことが分かります。これはコロナ禍以前に行われた調査ですが、この時点ですでに多くの人が老後や収入面に先行きの不安を持っていることが見て取れます。
コロナ禍で増幅された先行きの不安
新型コロナウィルスの影響による業績不振から、解雇されたり業務を減らされたりした結果、収入が減少したという人が増えています。明治安田生命が2021年4月に公表した調査では、コロナ禍により約4割の人が年収減を実感しているとの結果が出ました。
また、2020年12月に公表された、日本FP協会「くらしとお金に関する意識調査2020」を見ると、コロナ前後における世帯収入の変化によって、お金に対する不安がどのように異なるかが見て取れます。
出典:日本FP協会「くらしとお金に関する意識調査2020」(2020年12月)
当然のことながら、コロナ禍以降収入が増えた人よりも収入が減った人の方がお金に対して不安を抱えている割合が高い結果でした。収入が減った世帯では、8割以上の人が現在・将来ともにお金への不安を持っています。
また、現在のお金に対する不安より、将来のお金に対する不安を持っている人の割合の方が全体的に高い結果となっているようです。
「不安を解消する情報を知りたい」と回答した人の中で、投資について「そう思う」と答えた人は3~4割程度。収入の増減による違いは比較的少なく、どの世帯の人も投資に関心を持っていることがわかります。
コロナ禍以前から平均給与額は横ばい
国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、2019年以前の平均給与は以下の通りとなっています。過去数年間、平均給与にはさほど大きな変動が見られていません。
出典:国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査」(2020年9月)
先述の通り、コロナ禍において多くの人が年収減を実感しています。コロナ収束後、経済が元に戻れば、きっと給与や収入が上がると期待している人も多いでしょう。
しかし、上記のグラフから分かる通り、実はコロナ禍以前から、給与所得者の平均給与額はほとんど増えていません。つまり、コロナ収束後に景気が戻ったとしても、給料や収入がコロナ禍以前よりさらにアップすることは考えにくいといえるでしょう。
コロナ禍前の2019年の世論調査で多く挙がっていた老後の生活や収入に対する不安は、たとえコロナが収束した後であっても続く可能性が高いといえます。
社会保険料の上昇
給与収入が増えていない上に、ここ数年は社会保険料率が年々上昇しています。
協会けんぽ 健康保険料率 (平均)(%) | 協会けんぽ 介護保険料率 (平均)(%) | 健保組合 健康保険料率 (平均)(%) | 厚生年金保険料率(%) | |
2011年度 | 9.50 | 1.51 | 8.0 | 164.12 |
2012年度 | 10.00 | 1.55 | 8.3 | 167.66 |
2013年度 | 8.7 | 171.20 | ||
2014年度 | 1.72 | 8.9 | 174.74 | |
2015年度 | 1.58 | 9.0 | 178.28 | |
2016年度 | 9.1 | 181.82 | ||
2017年度 | 1.65 | 9.2 | 183.00 | |
2018年度 | 1.57 | |||
2019年度 | 1.73 | |||
2020年度 | 1.79 | |||
2021年度 | 1.80 |
引用:
全国健康保険協会「保険料率の変遷」
厚生労働省「医療保険制度をめぐる状況」(2019年9月)
健康保険組合連合会「令和 3 年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について」(2021年4月)
日本年金機構「厚生年金保険料率の変遷」
主に中小企業の会社員とその家族が加入する協会けんぽの保険料率の上昇は2012年、厚生年金保険料率の上昇は2017年で一旦止まっています。しかし、大企業の会社員が加入する健保組合の実質保険料率や、介護保険料率、各都道府県の国民健康保険料率は依然として上昇傾向が続いているのが現状です。
これは、コロナ禍における企業の業績悪化や、高齢者割合の増加に伴う医療費の増加が主な理由とされています。団塊の世代が後期高齢者入りする2022年以降、さらに医療費負担は増えることが予想されており、そこにコロナ禍による追い打ちがかかっている状況です。今後も、社会保険料の負担が増加する可能性があるでしょう。
先行き不安のポイントと解消方法
コロナ禍によって給与収入が減少した世帯が多いにもかかわらず、社会保険料が増加傾向にあることから、手取り額はなおさら減少しているという人も多いのではないでしょうか。
後期高齢者の割合は今後ますます増えると見込まれており、さらなる社会保険料の増加、年金受給額の減少、受給年齢の引き上げといった不安要素もあります。
これらの理由から、今現役で働いている世代は、すでに年金を受け取っている世代よりも、老後にじゅうぶんなお金を残すことが難しいのでは……と予想されているのです。
このようにさまざまな状況が重なった今、先行きの不安を感じる人が多いのも当然でしょう。
先行き不安の解消には「投資による資産運用」が効果的
こうした先行きの不安を解消するには、単に給与所得の上昇や預貯金の増加だけを目指していては難しいでしょう。
先述の通り、いつかコロナが収束し経済が復活したとしても、コロナ禍以前から平均給与額の上昇が見られないのであれば、その後の給与上昇は期待できない可能性があります。
そこで、お金をより合理的に活用していくためにお勧めなのが「投資による資産運用」です。超低金利時代が長く続く日本において「貯蓄から投資へ」のスタンスが広がりつつあり、国も税制優遇措置などでその流れを後押ししています。
そこでまずは、初心者が押さえておくべき投資のポイントや初心者にお勧めのローリスクな投資方法をご紹介しましょう。さらに、もう少し収益を重視した投資をしたい人向けに、レバレッジ効果を得られる投資手法についてもご紹介します。
投資初心者が意識すべきリスクを抑える投資のポイント3つ
どんな投資商品にも相応のリスクとリターンがあります。投資において、リスクとリターンは原則表裏一体です。大きなリターンを得るためには、リスクのある商品を選択しなければなりません。
しかし、投資初心者は特に、なるべくリスクを抑えた運用を心掛けることをお勧めします。
ここでは、投資初心者が意識すべき、リスクを抑えてリターンを得る投資の基本ポイントを3つ解説します。
長期投資
リスクを抑える投資の基本ポイント、一つ目は「長期投資」です。同じ投資商品を15年~20年以上の長期で保有しているだけで、リスクを抑えて運用することができます。
特に株式のようにリターンの高い商品は、プラスの収益とマイナスの損失どちらも値動きの幅が大きいという特徴があります。そのため、長く保有すればするほど、毎年のプラスとマイナスが相殺され、最終的にリターンが安定する傾向があるわけです。
分散投資
投資において「卵は一つのカゴに盛るな」という有名な格言があります。これは、一つの投資商品や一つの銘柄、一つの業種など、偏った運用にはリスクがあることを表している格言です。
一つのカゴに全部の卵を盛っていると、落としたときに全部割れてしまいます。しかし、いくつかのカゴに分けて卵を盛っておけば、一つのカゴを落としても全ての卵がだめになってしまうことはないということです。
つまり、複数の投資商品を持っておく、複数の銘柄に投資するなど、投資先を分散させることでリスクを抑えることができます。
ただし、同じ要因で値動きをする商品を複数持っていても、分散投資の効果は働きません。例えば株式と債券のように、値動きの特徴の異なる商品を組み合わせることで、分散投資の効果が働きます。
このように複数の商品に分けて運用する方法を「商品の分散」といい、他にも「地域の分散」「通貨の分散」などがあります。
積み立て投資
まとまった金額を一度に投資するのではなく、積み立てのように毎月一定額を投資することでリスクを抑える効果があります。投資商品には値動きがあるため、定期的に一定額の投資をすると、価格が高い時には少なく購入し、価格が低いときにたくさん購入することができるわけです。
価格変動のリスクを回避し、最終的には平均購入単価を抑える効果が期待できます。
このように毎月一定額で積み立て投資をすると、購入時期を分散させる効果があることから、この投資手法を「時間の分散」といいます。
初心者におすすめの元本保証・ローリスクな投資
長期投資・分散投資・積み立て投資に当てはまり、かつ初心者にもお勧めの元本保証・ローリスクな投資商品として、債券・保険商品・積み立てなどが挙げられます。
これらの商品の特徴については、以下の記事で解説されていますので、ぜひ参考にしてください。
投資初心者向け|元本保証・ローリスクな金融商品おすすめ6選
ローリスク投資は資産形成に時間がかかる
ここまで紹介したローリスクな投資商品は、大きな損失を回避して安定したリターンを得られる点で大変有効な方法です。しかし、これらの商品にはデメリットがあります。それは、大きな収益を得るまでに長い時間がかかることです。
先述の通り、投資においてリスクとリターンは表裏一体。リスクの低い商品はリターンも少なくなる傾向にあるからです。
そこで、時間をかけずにリターンを得るための方法として、レバレッジをかけた投資方法があります。
収益重視ならレバレッジをかけた投資方法がおすすめ
レバレッジとは「てこの原理」のことで、「レバレッジをかけた投資」とは、少ない掛け金で大きな金額の取引ができる投資方法のことをいいます。
レバレッジをかけることができる投資方法には、FX、不動産投資、株式信用取引、株式CFDなどがあります。ここではFXと不動産投資についてご紹介しましょう。
FX
FXは「外国為替証拠金取引」のことで、常に変動する為替レートの値動きを利用し「ドル-円」のように異なる通貨を売買して収益を上げる方法です。
例えば、1ドル=100円の時に100万円を投資して1万ドルを購入したとします。その後、1ドル=105円の時に円を買い戻すと105万円となり、5万円の利益が出るということです。
FXはレバレッジを最大25倍までかけることができます。自己資金が1万円なら、その25倍で最大25万円分の取引ができるということです。うまくいけば、少ない資金かつ短期間で大きな収益が得られるでしょう。しかし、その逆で大きな損失になる可能性もあり、レバレッジをかけたFXはハイリスク・ハイリターンの投資になります。
必ずしもレバレッジをかけた取引をしなければいけないわけではありませんが、レバレッジの倍率を下げれば、その分短期間で大きな収益をあげることは難しくなるでしょう。
なお、短期間で売買をするトレードはリスクが高いですが、トレードをせずFX口座に資金を預けておき、金利差調整額(スワップポイント)を受け取る運用方法もあります。例えば、金利の高い通貨を買い、金利の低い日本円を売ったとすると、その異なる金利を調整するために一日ごとにスワップポイントの受け取りが発生するわけです。
一日のスワップポイント額は少額であり、資産が増えるまでには時間がかかります。しかし、為替差益を狙う運用方法よりリスクが低く、初心者向きといえるでしょう。
不動産投資
不動産投資は、不動産を購入して賃貸に出し、入居者から家賃収入を得る資産運用の一つです。実は不動産投資も、金融機関でローンを組むことでレバレッジをかけて運用することができます。
例えば、自己資金のみで売買価格1,000万円、利回り10%の物件を購入した場合、収益は家賃収入100万円のみです。しかし、自己資金1,000万円を元手に銀行から2,000万円の融資を受け、3,000万円の物件を購入して利回り10%で回すことができれば、家賃収入は一気に300万円になります。
1,000万円の頭金で3,000万円の取引をしているので、これもレバレッジをかけた投資ということができるわけです。
不動産投資は、入居者さえ決まればすぐに収益が発生するので、比較的早い段階で安定した収入が毎月受け取れるメリットがあります。また不動産は、株式やFXといった金融商品のような短期での大きな値動きは起きにくく、ミドルリスク・ミドルリターンで運用できる投資方法といえるでしょう。
不動産投資は長期的な賃貸経営を基本とし、複数のワンルームマンションを所有するなどして分散投資することもできます。リスクを抑える投資のポイントとして先述した、長期投資と分散投資が叶う投資手法でもあります。
また、基本的な運用方法が確立しているため、初心者でも取り組みやすいといえるでしょう。
LIFULL HOME’Sでは、不動産投資のメリットや基礎知識など、初心者にお勧めのコラムを掲載しています。ぜひ以下の記事を参考にしてください。
「プロが教える不動産投資入門 不動産投資の魅力」
初めての不動産投資を失敗させないために重要な5つのポイント
初心者におすすめの投資先や資金計画のポイント
その他の投資手法
ここまでご紹介した投資手法以外にも、NISA(ニーサ)、iDeCo(イデコ)といった税制優遇のある投資方法や、小額からできる投資信託や不動産投資信託(REIT)、ハイリスクの部類に入る株式投資などがあります。
それぞれの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
【iDeCo、NISA】
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【投資信託】
不動産投資と不動産投資信託(REIT)どちらがいいの?(前編)
不動産投資と不動産投資信託(REIT)どちらがいいの?(後編)
まとめ
多くの方が老後のお金や健康、収入に関して先行きの不安を抱えています。それらの不安は、新型コロナウィルスの影響でさらに増幅しているようです。高齢化が進む日本においては今後の社会保障の不安もあり、より上手にお金を活用していく必要があります。
老後までじゅうぶんな時間をかけられる人は、ぜひリスクを抑える長期投資・分散投資・積み立て投資を意識した資産運用で、時間をかけて資産を育てていきましょう。
すぐに定期的な収入を得たい方や、早期リタイアを視野に入れている方には、レバレッジをかける投資方法がお勧めです。ミドルリスク・ミドルリターンで、初心者でも取り組みやすい不動産投資などの投資手法を検討してみましょう。