クラウドファンディングとは「群衆(Crowd)」と「資金調達(Funding)」を組み合わせた造語で、起案したプロジェクトの資金を不特定多数からインターネットを通じて集める資金調達方法です。この記事では、クラウドファンディングの概要、およびメリットとデメリットについて解説しています。
リード文
クラウドファンディングはインターネットを介して、多くの支援者からプロジェクトの資金を集められます。クラウドファンディングは、プロジェクト支援者に金銭的ではないメリットを返す「非投資型」と、金銭的なメリットを与える「投資型」の2つに分かれます。この記事では、クラウドファンディングの種類や、メリット・デメリットなど、基本的な内容を紹介します。
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、不特定多数の人にインターネットを通じて資金の提供を呼びかける資金調達方法です。資金調達が必要な事業内容を動画やインターネットサイトなどで呼びかけ、事業内容に賛同した人から出資を受けられるという仕組みです。
クラウドファンディングの歴史
クラウドファンディングの歴史は意外に古く、17世紀頃には印刷費用の寄付をする代わりに、書籍に広告を掲載するといったクラウドファンディングに近いものはあったとされています。
初めてクラウドファンディングのプラットフォームとしてスタートしたのは、2003年に立ち上げられたクラウドファンディングサイト「ArtistShare」で、音楽家兼プログラマーが、自らの音楽をデジタル化するために、寄付を募る目的で作られました。
日本では、2011年に起きた東日本大震災の復興支援を目的とした寄付型クラウドファンディングが急速に拡大。国内初のクラウドファンディングプラットフォームとしては2011年にスタートした「READYFOR」がはじまりとされています。
クラウドファンディングの市場規模
矢野経済研究所の調べによると、クラウドファンディングの市場規模(支援額)は、2019年1,566億円。2020年は1,841億円。2021年は見込みで1,505億円となっています。2020年は医療従事者や医療機関向けの支援・事業、飲食店支援、ライブハウスやイベント支援など新型コロナウイルスの感染拡大に伴う支援プロジェクトが急増しました。2021年は新型コロナウイルス関連のプロジェクトが落ち着くことが予想され、2020年よりは縮小する見込みです。しかし、さまざまな形態のクラウドファンディングが登場しており、今後、さらに注目される資金調達方法です。
5種類のクラウドファンディング
クラウドファンディングはさまざまな分類がありますが、支援をした人が金銭的なリターンを受け取れる「投資型」と、寄付を前提とした支援や、支援をした結果、物品やサービスを受け取れる「非投資型」の大きく2つに分類されます。
投資型、非投資型という2つの分類に着目しながら、ここではクラウドファンディングを5つの形態に分類して解説します。
購入型
プロジェクト起案者が資金を募り、支援者は起案者から支援金額に応じて、プロジェクトに関連した物品やサービスを受け取れます。
寄付型
被災地支援や、社会貢献、環境保全など、公益性の高いプロジェクトが多く、寄付であるため、支援者(寄付者)に対しての近況報告や、ニュースレターなどを送付するにとどまり、支援者は支援金額に応じて物品やサービス、金銭を受け取ることは基本的にはありません。
融資型(ソーシャルレンディング)
支援を希望する個人や事業者が、クラウドファンディング運営事業者にクラウドファンディングの申し込みをし、運営事業者が不特定多数に支援を呼び掛け、運営事業者が資金を融資する方法です。
融資型クラウドファンディングは、銀行融資と異なり、起案者そのものの事業規模や事業年数よりも、プロジェクトの可能性に資金を提供をするため、比較的資金調達しやすい方法です。
支援した側は、プロジェクトごとに定められた金利が受け取れますが、プロジェクトがうまくいかなければ、返済されないリスクもあります。
ファンド型
クラウドファンディング運営事業者にクラウドファンディングを申し込み、運営事業者が資金を集めるまでは融資型と同じですが、ファンド型の場合はプロジェクトによって得た利益に応じた分配金が受け取れます。また、プロジェクトの成果次第では分配金に加え、優待やサービスを受け取れることもありますが、成果が思わしくなければ分配金などが受け取れない可能性もあります。
なお、ファンド型のクラウドファンディングは第二種金融商品取引業として、内閣総理大臣への申請・登録をした運営事業者を介します。
不動産に特化したクラウドファンディングもあり、不動産クラウドファンディングにも、「融資型」と「ファンド型」2つのタイプがあります。
不動産クラウドファンディングについては、こちらの記事を参考にしてください。
不動産クラウドファンディングの基礎知識-仕組みや他の不動産投資との比較-
株式型
プロジェクトの支援者は投資をすることで、支援先企業の株式を受け取れます。まだ上場していない、未公開株への投資ができるため、上場した場合には大きなリターンが期待できます。支援する側は同一の会社に年間50万円まで、支援を受ける側の調達額の上限は年間1億円までと金額に制限があります。
クラウドファンディングの調達方法
クラウドファンディングの資金調達方法には、「All or Nothing」方式と「All in」方式の2とおりがあります。
All or Nothing方式
プロジェクトの目標額に到達したら支援金を受け取れる方式です。ある程度の支援額があったとしても、目標額に到達しないと1円も受け取ることはできません。
All in方式
支援金がプロジェクトの目標額に達しなくても、期間終了日での支援金が受け取れる方式です。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングのメリットを紹介します。
賛同を得られればお金を集められる
金融機関からの融資を受けられなくても、プロジェクトの支援者の賛同が得られればお金を集められます。
金銭以外の特典が付与できる
クラウドファンディングの中には、支援に対して金銭的な特典以外にも、起案するプロジェクトに関連した物品やサービスを特典として付与できます。また、寄付型のように支援者に近況報告や、ニュースレターなどの送付にとどめるケースもあります。
資金調達のハードルが低い
クラウドファンディングは、金融機関と違い、起案者の事業規模や事業年数などより、プロジェクトの可能性に融資をする特徴があります。そのため、将来性が不確実な新規事業でも、賛同さえ得られれば資金を集められる可能性があります。
プロジェクトが宣伝できる
クラウドファンディングの告知をすれば、多くの人が自身のプロジェクトを目にするため、クラウドファンディングのプラットフォームに掲載するだけでも宣伝効果があります。
根強いファンができる
支援者はプロジェクトに賛同しているため、プロジェクトが好調に進んでいたり、起案者が定期的に経過報告などをしたりしていれば、その後も継続的な支援を受けられる可能性があります。
多額の資金が調達できる
クラウドファンディングは不特定多数に支援を求めることができるため、プロジェクトの賛同が得られれば、多額の資金を調達できます。
クラウドファンディングのデメリット
次にクラウドファンディングのデメリットについて見ていきます。
必ず資金が集まるとは限らない
クラウドファンディングはプロジェクトの賛同を得られれば、多額の資金が調達できますが、目標額に届かない場合や、All or Nothing方式を採用し、目標額に届かず1円も資金が集まらない可能性もあります。
アイデアを盗まれる可能性がある
クラウドファンディングのプラットフォームに掲載するだけでも宣伝効果がある半面、自身のプロジェクトの内容を公表することになるため、アイデアを盗まれる可能性があります。
事業が失敗すると信用を失う
起案したプロジェクトに対して、目標の支援額が集まったからといって必ずそのプロジェクトが成功するわけではありません。途中で失敗してしまったような場合、プロジェクト起案者は支援者だけではなく、事業に関わってくれた人にも迷惑をかけることになるため、社会的にも大きく信用を落としてしまう可能性があります。
クラウドファンディングの決済方法
クラウドファンディングでプロジェクトを支援するための支払方法は、銀行振込、クレジットカード、コンビニ決済のいずれかの方法を利用するのが一般的です。
逆にプロジェクト支援金を受け取る場合、支援金はプロジェクト起案者指定の銀行口座に振り込まれることが一般的です。
まとめ
クラウドファンディングは被災地の支援や、プロジェクトの応援というイメージがありますが、融資型、ファンド型、株式型のように事業やプロジェクトに投資をする側面も持っています。
投資目的のクラウドファンディングで資金を調達するプロジェクトの中には、金融機関の融資を受けることが難しいような新規事業を支援する案件などもあるため、リスクは高いですが、大きなリターンを得られる可能性もあります。
また、不動産投資に特化したクラウドファンディングもあるため、不動産投資に挑戦してみたい方は、不動産投資クラウドファンディングという選択肢もあることを知っておきましょう。
不動産投資クラウドファンディングについては、こちらの記事を参考にしてください。
不動産クラウドファンディングの基礎知識-仕組みや他の不動産投資との比較-