一般NISA口座で資産を運用しており、非課税期間5年目の方は要注意です。
一般NISAの非課税期間が終了した後の商品をどうするか、選択肢はいくつかあります。もし、さらに5年間の非課税期間を延長するロールオーバーをしたい場合は、所定の期間に手続きしなければなりません。手続きを忘れた場合、課税されてしまう可能性もあります。
一般NISAのロールオーバーについて、初心者の方にも分かりやすく解説しますのでぜひ参考にしてください。
NISA(ニーサ)とは
NISAとは政府が2014年にスタートさせた、国民の資産運用を後押しするための税制優遇制度です。NISA口座内で購入した金融商品から得た運用益には税金がかからない仕組みで、税制優遇を受けながら投資することができます。
2021年時点では、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類があります。
NISAについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
NISA(ニーサ)とつみたてNISA(ニーサ)の違いを分かりやすく解説
一般NISAのロールオーバーとは
一般NISAは非課税期間が5年と定められています。しかし非課税期間が終了するときに新たなNISA口座へ移管することで、非課税期間をさらに5年延長することが可能です。これを「ロールオーバー」といいます。
もともと非課税期間が20年あるつみたてNISAには、ロールオーバーは認められていません。
参考:金融庁「NISAのポイント」
ロールオーバー時の金融商品の取得価格
ロールオーバーする際の金額は、保有する株式や投資信託の非課税期間満了時の評価額、つまり時価で移管されます。
購入した時の金額ではありませんので注意しましょう。
非課税枠120万円以上でもロールオーバー可能
ロールオーバー可能な金額には上限がありません。購入時よりも値上がりし、非課税投資枠120万円を超えていても全額ロールオーバー可能です。
ロールオーバー後の非課税枠
ロールオーバーした分の金額は、ロールオーバーした年の非課税投資枠を消費します。
つまり非課税枠120万円を超えてロールオーバーした場合、その年の非課税投資枠残高はゼロです。新規買い付けはできません。
一方非課税枠120万円を超えない範囲でロールオーバーした場合は、その年の非課税投資枠残高分新規買い付けが可能になります。つまり60万円ロールオーバーした場合、残り60万円分の新規買い付けが可能ということです。
参考:金融庁「NISAのポイント」
保有商品の一部だけロールオーバーも可能
NISA口座で購入した金融商品は、保有する金融商品全部をロールオーバーすることも、一部だけロールオーバーすることも、どちらも可能です。
ロールオーバーしなかった商品は、非課税期間内に売却するか課税口座へ自動的に移管されます。ロールオーバーしない場合の取り扱いについては後ほど詳しく解説します。
一般NISAをロールオーバーする方法
NISA口座で保有する商品をロールオーバーしたい場合は、所定の手続きが必要です。手続きの際に気をつけたいポイントもありますので、見ていきましょう。
金融機関で所定の手続きをする
ロールオーバーを希望する場合は、NISA口座を開設している金融機関で所定の申し込み、手続きが必要です。
一般的には「非課税口座内上場株式等移管依頼書(ロールオーバー依頼書)」を提出する必要があります。金融機関によってはWeb手続きも可能なので確認してみましょう。
放っておいても自動的にロールオーバーされるわけではありませんので、ご注意ください。
NISAのロールオーバーはいつまでに手続きが必要?
ロールオーバーの手続きは、金融機関が定める申込期限内に必ず完了させる必要があります。多くの場合、ロールオーバーの申込期限は非課税期間が終了する年の10月~12月頃ですので、金融機関のホームページをチェックしておきましょう。
翌年分の一般NISA口座(第2期)が必要
ロールオーバーする場合、非課税期間が終了する年末時点で翌年の一般NISA口座(第2期)が開設されていることが条件となります。少し複雑な条件なので、いくつかのパターンごとに見ていきましょう。
【同一の金融機関内でロールオーバーする場合】
同一の金融機関内でロールオーバーする場合は、翌年の一般NISA口座(第2期)が自動で開かれます。所定の期間内にロールオーバーの申し込みがなされていれば、問題ありません。
【つみたてNISAに区分変更していた場合】
非課税期間の間に一般NISAからつみたてNISAに区分変更していた場合は、ロールオーバーする年のNISA口座を一般NISAの区分に変更する手続きが必要です。
【一般NISA口座開設時と、課税期間終了時の金融機関が異なる場合】
例えば2017年にA銀行でNISA口座を開設し、非課税期間途中に金融機関をB銀行に変更したとします。この場合、2021年末でA銀行にある商品は非課税期間5年を終了することになります。
このA銀行にある商品を2022年にロールオーバーしたいとなった場合、A銀行に2022年の一般NISA口座(第2期)が開かれていなければなりません。つまり2022年以降A銀行で再び取引ができるよう、非課税期間満了までの間にB銀行からA銀行へ金融機関変更手続きが必要になります。
NISAのロールオーバーを忘れた場合
もしNISAのロールオーバー手続きをし忘れてしまった場合、NISA口座にあった金融商品は課税口座に自動的に移管されます。
一度課税口座に払い出された銘柄をNISA口座に戻すことはできませんので、注意しましょう。
ロールオーバーしない場合の保有商品の取り扱いについては、次の見出しで詳しく解説します。
NISAをロールオーバーしない場合
非課税期間終了後、ロールオーバーする以外にどのような方法があるのでしょうか。
非課税期間内に売却
ロールオーバーしない場合、非課税期間内に売却するという方法があります。非課税期間内なら売却益に税金はかかりません。
課税口座に移管
売却もロールオーバーの手続きもしなかった場合は、一般口座・特定口座などの課税口座へ自動的に移管されます。その場合、非課税期間満了時の金融商品の時価が、課税口座での取得価格となります。
含み損に注意
課税口座移管後の売却については、含み損でも税金がかかるケースに注意しましょう。
例えば、100万円で購入した株式が70万円に値下がりし、取得価格70万円で課税口座に移管されたとします。その後90万円に値上がりして売却した場合、本来の購入価格と比較すると、実際には10万円の損失です。しかし課税口座での取得価格は70万円なので、値上がり分20万円に対して課税されてしまいます。
課税口座に移管する場合、このように実際には損失であるにもかかわらず税金がかかるケースがありますので、注意しましょう。
2024年スタート新NISAでのロールオーバーはどうなる?
現行のNISA制度は2023年で終了し、2024年以降は新NISAへ移行します。
2018年に購入した一般NISAの商品は2023年の一般NISA口座にロールオーバー可能です。しかし2019年以降に一般NISAで購入した商品は、新NISAへロールオーバーすることになるので、ぜひ覚えておきましょう。
一般NISAから一般NISAへのロールオーバーと同様、非課税期間終了時の時価で移管し、その年の非課税枠を超えていても全額ロールオーバーが可能となる見込みです。
まとめ
一般NISAのロールオーバーは、非課税期間を延長することのできる重要な制度です。注意したいのは、放っておいても自動的にロールオーバーされるわけではないこと。そして、万が一ロールオーバーし忘れて課税口座に移管された場合、そこからNISA口座には戻せないことです。
課税口座に移管され税金の支払いが発生することになったら、その分利益が下がってしまいます。
課税期間終了のタイミングを把握しておき、期限が近づいてきたらその後の選択肢をよく考えるようにしましょう。
NISA以外にもさまざまな投資手法、節税商品があります。ぜひ以下の記事も併せて読んでみてください。
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