不動産投資では、管理事業を行っている不動産会社に管理を委託するケースが一般的ですが、大家さんが直接賃貸することもできます。
ただし、管理会社に支払う費用は抑えられる反面、自主管理は複数のデメリットもあるため注意が必要です。
今回は、大家さんが入居者へ直接賃貸する際に必要な業務やメリット・デメリットについて解説します。
以下の記事では管理会社や仲介会社の役割について解説しているので、興味がある人はご覧ください。
【ホームズ】賃貸契約で知りたい「大家」「管理会社」「仲介会社」役割と関係は?
https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00199/
大家さんが直接賃貸する際に必要な業務とは?
大家さんが入居者へ直接賃貸する際、不動産の賃貸・管理に関連するすべての業務を自分で行う必要があります。
大家さんが直接賃貸する際に必要な業務は、大きく分けて以下の3つに分かれます。
・新規入居者の募集
・既存入居者が退去するまでの管理
・建物の管理
それぞれの業務内容を順番に解説しましょう。
新規入居者の募集
大家さんが安定して家賃収入を得るためには高い入居率を維持する必要があります。
新規入居者の募集には、広告を掲載して物件を紹介する、入居者と賃貸借契約を締結するといった業務があります。
新規入居者の募集に関連する業務
・物件の広告作成
・自作のHPやマッチングサイト等による広告掲載
・入居希望者の内見対応
・賃貸借契約の締結
ただし、入居者の募集や賃貸借契約締結の手続きを円滑に行うためには、専門的なノウハウが必要です。
大家さんが直接広告を掲載できるマッチングサイトもありますが、一般的なポータルサイトと比べて利用者数が少なく、客付けが難しい場合もあります。
そのため、入居者の募集は仲介会社へ依頼することをおすすめします。
自分で入居者を募集したい人の中には、仲介手数料に関して不安を抱いている人もいるでしょう。以下の記事では仲介手数料の仕組みや相場について解説しているので、こちらも併せてご覧ください。
【ホームズ】賃貸物件の仲介手数料の相場っていくら? どういう場合に費用を抑えられるかをご紹介
https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00298/
既存入居者の管理
大家さんの仕事は、入居者と賃貸借契約を締結して終わりではありません。入居者が安心して過ごせるように、クレーム対応や更新業務などを行います。
既存入居者の管理に関連する業務
・家賃の入金管理
・クレーム対応(例:雨漏り、設備の不具合)
・入居者同士のトラブル対応(例:騒音、マナーが悪い入居者への注意)
・更新、退去の手続き
・退去時の立ち合い
新規入居者の募集は手間と費用がかかる一方で、既存入居者に長く入居してもらうと少ない手間で安定して家賃収入を得られます。既存入居者に長く入居してもらうためには、素早く丁寧な対応を意識することが大切です。
建物の管理
大家さんが直接賃貸する場合、定期的な修繕や共用部分の清掃など、建物自体の管理も行います。
建物の管理
・各設備、建物の修繕対応
・共用部分の定期清掃
・退去後の居室クリーニング
建物の価値を維持するためには、日頃から劣化状況を確認して、計画的に修繕することが大切です。
また、不動産投資には、長期的な賃貸経営による老朽化で、周辺の競合物件と比べて見劣りするリスクがあります。必要に応じてリフォームをして、周辺の競合物件と差別化を図ることも選択肢の一つです。
大家さんが物件を直接賃貸するメリット
大家さんが物件を直接賃貸するメリットは、管理委託費を節約できることや賃貸経営者としての経験を積めることです。
業務の負担が重くなったとしても経費を節約したい人、投資家としてだけではなく賃貸経営者として成長したい人には直接賃貸が向いているでしょう。
管理委託費を節約できる
物件を直接賃貸することで、管理会社へ支払う管理委託費や更新時の更新手数料などを節約できます。
ちなみに、管理委託費の目安は家賃収入×5%程度です。例えば、家賃収入の総額が50万円の場合、管理委託費は2.5万円となります。(2.5万円=50万円×5%)
賃貸経営者として大きく成長できる
不動産投資を始める人の中には、収益だけでなく不動産賃貸業に魅力を感じる人もいるでしょう。管理会社へ管理を委託すれば業務の負担を削減できますが、賃貸経営者としての経験を賃貸経営者としての仕事の大半を外部に任せていることになります。
管理会社や仲介会社を通さず、入居者募集から退去者の管理まで行えば、賃貸経営者として大きく成長できるでしょう。
また、入居者と直接関わることで入居者との人間関係も構築できるので、人と関わることが好きな人、人の面倒を見ることが好きな人は直接賃貸が向いているかもしれません。
物件の現状を把握できる
物件の魅力を維持するためには、適切なタイミングでの修繕、入居者のニーズに応えるための設備投資など、物件の現状を把握した上での対応が必要です。
大家さんが直接賃貸することで物件を訪れる機会が増え、自然と物件の変化や入居者のニーズを把握できるようになるでしょう。
大家さんが物件を直接賃貸するデメリット
大家さんが物件を直接賃貸するデメリットは、肉体的にも精神的にも負担が大きいということです。物件を管理する時間がない人、トラブルにはできるだけ直接関わりたくない人は注意が必要です。
業務の負担が大きい
大家さんが直接賃貸することで管理会社に支払う費用を節約できますが、その分、負担が増えます。
新規入居者の募集・既存入居者の管理・建物の管理など、非常に広範囲の業務が発生するため、それぞれの業務を問題なくこなせるか、事前に確認しておきましょう。
費用がかかる場合がある
大家さんが物件を直接賃貸する際、物件の広告を掲載するHPの維持費、ポータルサイトの掲載費などの費用がかかる場合があります。
自分で物件を管理した場合の業務や費用の負担と、管理会社へ管理を委託した場合の費用を総合的に比較した上で判断しましょう。
クレーム・トラブル発生時の窓口はすべて自分
大家さんが物件を自主管理する場合、クレーム対応も業務の1つです。
特に水道・ガス・電気などのライフラインに関するクレームは、迅速な対応が求められます。すぐに対応しないことで入居者と大きなトラブルに発展するリスクもあるため、注意が必要です。
また、入居者の中には家賃を滞納する人もいます。家賃の滞納はめったに起こらないと考える人もいるかもしれませんが、賃貸経営で意外と多いトラブルです。
「賃貸物件オーナーの経営実態調査」では、今までに家賃を滞納された経験があるオーナーは約半数というデータがあり、大家さんが抱える悩みの中で最も多い悩みでした。
参考元:【HOME’Sリサーチ】「賃貸物件オーナーの経営実態調査」
https://lifull.com/files/news/press-research/20070726.pdf#page15
たまたま入金を忘れていただけですぐに支払ってくれる場合は問題ありませんが、家賃滞納が続いて万が一夜逃げされた場合、大家さんの負担がさらに大きくなるでしょう。
大家さんが直接賃貸する場合、家賃滞納への対策として保証会社を利用することをおすすめします。
入居者が夜逃げした場合のリスクや対応方法については以下の記事で解説しているので、興味がある人はご覧ください。
【ホームズ】入居者が夜逃げした物件でオーナーがとるべき行動は?
https://toushi.homes.co.jp/column/lifull-homes-investment/beginner149/
まとめ
大家さんが物件を直接賃貸する場合、管理会社へ委託するよりも経費を大きく削減できるでしょう。ただし、広範囲の業務をこなす負担や精神的な負担がかかる場合があります。
経費だけでなく、業務や精神的な負担、トラブルに対するリスクなどを総合的に考慮した上で、管理会社へ委託するかどうかを判断することをおすすめします。