2020年にマネックス証券が行った「NISA利用者アンケート」によると、約29%の人が「新NISAそのものを知らない」、約31%の人が「新NISAを知っているが詳しくは知らない」という結果でした。
すでにNISAを利用している人ですら、約6割の人が新NISAについてよく理解していないようです。
そこで新NISAとはどんな制度なのか、一般NISAとの違いや注意点を分かりやすく解説します。
新NISAとは?
新NISAとは、2024年から現行の一般NISAに代わる新しい制度のことです。NISA口座内で購入した株・投資信託などから得た運用益が非課税になる点は変わりません。
新NISAは2028年まで口座開設可能です。
現行NISAとの違いについて、後ほど詳しくご説明します。
現行NISAについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
NISA(ニーサ)とつみたてNISA(ニーサ)の違いを分かりやすく解説
現行のNISAはどうなる?
2020年度の税制改正によって見直されたNISA制度。一般NISAだけでなく、つみたてNISA、ジュニアNISAにも変更点があります。それぞれ見ていきましょう。
2024年以降の一般NISA
先述のとおり、現行の一般NISAは2023年で終了。一般NISAの口座開設は2023年まで可能ですが、2024年以降は新NISAへ移行します。
2019年以降の投資分は、非課税期間5年を過ぎたら新NISAへ資産を移管する「ロールオーバー」が可能です。現NISAと新NISAの違いやロールオーバーについては後ほど詳しく解説します。
2024年以降のつみたてNISA
2037年までとされていたつみたてNISAの期間が5年間延長され、制度内容を維持して2042年まで口座開設可能になりました。2042年まで新規買い付けが可能なので、2023年までにつみたてNISAをスタートすれば、20年間の新規投資(積み立て)が確保されます。
2024年以降にスタートした場合は、新規投資(積み立て)できる期間が1年ずつ短くなりますので注意しましょう。例えば2025年につみたてNISA口座を開設した場合、新規投資(積み立て)できる期間は18年間、残りの2年間は運用益非課税のまま「保有」することだけ可能ということです。
2024年以降のジュニアNISA
ジュニアNISAは2023年で終了し、延長はありません。口座開設は2023年末まで可能なので、2023年中に口座を開設して買い付けすれば、2027年まで5年間はジュニアNISA口座で非課税での運用が可能です。
制度終了後のジュニアNISAの扱いは、2022年4月1日から施行される成年年齢18歳引き下げの影響により、年齢設定が変更されていますので注意しましょう。
ジュニアNISAは制度終了後も、1月1日時点で18歳である年の前年末までロールオーバーすることが可能です。つまり成人するまで非課税のまま金融商品を保有できることになります。
ジュニアNISAの非課税枠は80万円ですが、ロールオーバーする金額に上限はありません。ただし制度終了後の保有期間中、売却は可能ですが新規投資は不可となっています。
もしくは2024年以降はジュニアNISAの「払い出し制限」がなくなるため、18歳に達していなくても課税なしで払い出しが可能です。
現行NISAと新NISAの違い
では、現行NISAと新NISAの違いを詳しく解説します。まずはそれぞれの違いを表にまとめてみましょう。
現NISA(改正前) | 新NISA(改正後) | |
非課税対象 | 株や投資信託などの運用で得られた配当金・分配金・売却益 | 株や投資信託などの運用で得られた配当金・分配金・売却益 |
非課税期間 | 最長5年(ロールオーバー可) | 1階部分……最長5年(つみたてNISAへのロールオーバー可) 2階部分……最長5年(ロールオーバー不可) |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 1階部分……年間20万円 2階部分……年間102万円 |
口座開設可能期間 | 2023年まで | 2024年~2028年 |
投資対象商品 | 上場株式・公募株式投資信託・ETF・REITなど | 1階部分……つみたてNISAと同等の商品(金融庁の基準を満たす投資信託) 2階部分……上場株式・公募株式投資信託・ETF・REITなど(一部高レバレッジの投資信託などを除く) |
投資方法 | 制限なし(一括購入・積み立てなど) | 1階部分……積み立て専用 2階部分……制限なし(一括購入・積み立てなど) |
引き出し | いつでも可 | いつでも可 |
多制度との併用 | つみたてNISAとの併用は不可 | つみたてNISAとの併用は不可 |
一つ一つ、詳しく解説していきます。
新NISAは2階建て
新NISAは下の図のようなイメージで2階建てになっています。
参考:財務省「NISA改正のイメージ」
【1階】
つみたてNISAと同等の意義を持ち、安定的な資産形成を目的とする部分です。
定期的かつ継続的な投資方法でコツコツと長期にわたって資産を積み上げていくことを目指しています。
【2階】
安定的な資産形成とともに、より大きなリターンが期待できる投資方法を組み合わせて、成長資金の供給拡大・長期保有の株主育成などを目的とする部分です。
投資方法に制限はなく、一括購入・積み立てどちらも選択できます。
新NISAは、従来の一般NISAの一部につみたてNISAを組み込んだような構造になっているわけす。
2階部分の投資には1階部分の投資が必要
新NISAの目的は、より多くの人に積み立て・分散投資を経験してもらうことです。そのため、原則2階部分の非課税枠の利用には、1階部分の積み立て投資が必須となります。
ただし1階部分の非課税枠20万円のうち一部でも利用していればOK。また現行の一般NISA口座開設者、投資経験者は2階部分の投資のみも可能となります。(上場株式のみ)
非課税期間はどちらも5年
新NISAでは、1階・2階どちらも非課税期間は5年間です。
1階部分のみ、非課税期間終了後つみたてNISAにロールオーバーすることができます。新NISAのロールオーバーについて、詳しくは後ほど解説します。
非課税投資枠が年間合計122万円に
新NISAの非課税枠は、1階と2階でそれぞれ異なります。
1階……年間20万円、非課税期間5年間で合計100万円
2階……年間102万円、非課税期間5年間で合計510万円
現一般NISAより年間2万円、非課税期間5年間で10万円アップされました。
1階と2階で投資商品が異なる
1階と2階では、投資対象となる商品が異なります。
【1階】
つみたてNISAの対象商品と同様
積み立て投資・分散投資に適した一部の公募株式投資信託・ETFなど、金融庁が定めた基準を満たすもの
【2階】
上場株式・投資信託・ETF(上場投資信託)・REIT(不動産投資信託)など基本的に一般NISAと同等の商品(高レバレッジの投資信託など一部除外)
1階部分は基本的に積み立て投資専用となっており、個別株投資をしたいなら2階部分で投資する必要があります。
新NISAの注意点
新NISAの利用には、いくつか注意点があります。一般NISAとは異なる部分もありますので、しっかり押さえておきましょう。
新NISAとつみたてNISAの併用は不可
現行の一般NISAと同様、新NISAもつみたてNISAとの併用はできません。
ただし、新NISAとつみたてNISAを年単位で変更することは可能です。変更したい場合は、口座を開設している金融機関で勘定変更の手続きが必要になります。
新NISAでも損益通算・未使用分の繰り越しは不可
現行の一般NISAでもそうですが、新NISAにおいても他の課税口座との損益通算や、未使用分の非課税枠を翌年に繰り越すことはできません。
一般NISAから新NISAへのロールオーバーは2階部分の非課税枠から
2019年以降の一般NISAは、非課税期間終了後に新NISAへロールオーバーすることが可能です。現NISAのロールオーバーと同様、非課税期間終了時の保有商品の評価額・時価が、新NISA口座での取得価格となります。
ここで注意したいのは、一般NISAから新NISAへロールオーバーした場合「2階部分の非課税投資枠から消費する」ということです。
例えば80万円分の投資商品をロールオーバーする場合、2階部分から消費するので、新NISAにおける2階部分の非課税枠は残り22万円、1階部分の非課税枠は20万円ということになります。
時価が非課税枠122万円を超えていても全額ロールオーバー可能ですが、その年の非課税枠をすべて消費するため新規買い付けはできません。また一般NISA口座内の一部商品のみロールオーバーすることも可能です。
新NISA1階部分のロールオーバーは時価ではなく「簿価」
先述のとおり、新NISAは1階部分のみ非課税期間終了後につみたてNISAへロールオーバーできます。
ここで注意したいのは、ロールオーバー時の金額は時価ではなく「簿価」ということです。簿価とは、帳簿に記載された資産の評価額のこと。つまり「取得価格」のことを指します。
例えば新NISAの1階部分で20万円分の積み立て投資をスタートし、非課税期間終了時に時価で30万円になっていたとします。この場合であっても、つみたてNISAへのロールオーバーは簿価の20万円でカウントされるということです。
20万円分のみの非課税枠の消費で、時価30万円分すべてロールオーバーできることになり、残りの非課税枠20万円分新規投資することができます。
ちなみに新NISAの2階部分はロールオーバーできません。非課税期間内での売却か、非課税期間終了後その時点の時価で課税口座へ移管となります。
まとめ
2023年以降ロールオーバーできないとされていた一般NISAは、新NISAとして5年間延長され、引き続き非課税での運用を継続することが可能となりました。しかし構造やロールオーバーの仕組みなどに変更点があるため、よく理解してから始めるようにしましょう。
NISA以外にも、節税効果のある投資手法、副業におすすめの投資手法などがたくさんあります。ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
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