エンジェル投資とは、個人投資家が未上場の企業に資金を提供する投資方法です。将来有望な企業に投資することで、企業の成長と共に大きなリターンを得られる可能性があります。
また、エンジェル投資には投資した金額に応じて税制優遇措置が設けられています。制度を上手に活用すると、企業への投資と節税を両立することが可能です。
今回は、エンジェル投資の仕組み、メリット・デメリット、税制優遇措置について解説します。
エンジェル投資とは?
エンジェル投資とは、創業間もない企業や株式市場に未上場の企業に対して、個人投資家が資金を提供する投資方法です。
企業にとっての資金調達手段には、金融機関からの融資や国・自治体からの助成金などがあります。エンジェル投資もそのような資金調達方法の1つです。
エンジェル投資のリターンは企業によって異なりますが、対象企業の株式や債券となっているケースが一般的です。
従来、エンジェル投資というと、100万円以上などまとまった資金が必要でした。しかし、近年は株式投資型クラウドファンディングの誕生で、10万円といった少額でも投資することが可能になっています。
クラウドファンディングについては以下の記事で解説しているので、興味がある人はこちらもご覧ください。
【ホームズ】クラウドファンディングとは? 資金調達方法とメリット、デメリットを解説
https://toushi.homes.co.jp/column/lifull-homes-investment/beginner211/
エンジェル投資家の重要性と日本の現状
エンジェル投資家の増加は、資金繰りに苦労している起業家の開業を後押しする効果があります。より多くの優秀な起業家が、新しいビジネスに挑戦するチャンスを得ることで、私たちの生活がより豊かになる可能性も高まるでしょう。
アメリカではベンチャー企業への投資が日本よりも盛んに行われており、Google、Appleなど世界中で有名な企業が多数輩出されています。
一方、日本ではエンジェル投資が根付いておらず、開業率は諸外国と比較して低水準となっています。起業家にアイディアがあっても、多くの人が挑戦する機会に恵まれないということが日本の現状です。
日本のベンチャー企業への資金提供を促進させるために、政府は「エンジェル税制」とおう税制優遇措置を設けています。そのため、近年では日本でもエンジェル投資家が増えつつあります。
エンジェル投資が儲かる仕組みとは?
それでは、創業間もない企業に投資すると、どのように利益が生まれるのでしょうか。ここでは、エンジェル投資の仕組みについて解説します。
【エンジェル投資の仕組み】
1.未上場企業に出資する
2.リターンとして企業の株式や債券を得る
3.イグジットによって、キャピタルゲインを得る
投資対象の企業に資金を提供するとリターンとして企業の株式や債券を得られるので、それらを保有し続けます。企業の成長によって価値が上がったタイミングで売却し、利益を得る仕組みです。
イグジットとは、エンジェル投資家が投じた金額を回収する手段のことです。
例えば、投資対象の企業が成長して株式市場に上場すると、保有していた株式の価値が大きく上がります。そこで、保有していた株式を売却し、投資金額を回収します。
キャピタルゲインとは、このように金融資産を売却して得られる利益のことです。
エンジェル投資のメリット
エンジェル投資をするメリットには、大きなリターンを得られる場合がある他、税制優遇を受けられる、企業の成長を応援できることが挙げられます。
大きなリターンを得られる場合がある
創業間もない企業の成長率は未知数です。エンジェル投資で投資した企業が大成功した場合、一般的な資産運用では得られない大きな利益を得られる場合があるでしょう。
例えば、日本でもコロナ禍の巣ごもり需要で大人気となったUber。この企業に投資したアメリカのエンジェル投資家ジェイソン・カラカニス氏は、1,000万円の投資で100億円(1万倍)の利益を得たことで知られています。
現代では、誰もがインターネットを通して気軽に投資を始めることが可能です。ジェイソン・カラカニス氏ほどの利益を得られなくても、将来性のある企業に投資することで大きなリターンを得られる可能性があります。
税制面で優遇されている
エンジェル投資には、投資家や投資対象の企業だけでなく日本経済全体を活性化させる効果があるため、政府も普及促進を目指しています。そのため、要件を満たせば「エンジェル税制」という税制優遇措置を利用可能です。
エンジェル税制を上手に活用すると税金の負担を軽減できるので、興味がある人は制度について確認してみてくださいね。エンジェル税制については後ほど解説します。
企業の成長を応援できる
エンジェル投資は、将来的な成長を期待する企業に対して投資することです。単にお金を投資するだけでなく、自分が支援した企業の成長を応援する楽しみも醍醐味の1つといえます。
また、ベンチャー企業の中には社会問題に取り組む企業もあるため、そのような企業に投資すると社会貢献をしているという幸福感を味わうこともできるでしょう。
エンジェル投資の投資先を選ぶ際は、起業家の人柄や事業内容などを確認し、応援したいと思う企業に投資することをおすすめします。
エンジェル投資のデメリット
エンジェル投資では、大きなリターンを得られる場合がある一方、投資資金が返ってこない可能性や流動性が低いなど、リスクが高いといったデメリットがあります。エンジェル投資を始める際は、十分に注意が必要です。
投資資金が返ってこない可能性がある
エンジェル投資はハイリスク・ハイリターンの投資方法のため、投資した資金が返ってこないリスクがあります。
上場企業の場合、上場するにあたって証券会社や証券取引所が経営の健全性、事業計画の合理性などを審査するため、一定の基準を満たした業績の企業に投資できます。
一方、エンジェル投資の対象企業は、会社の事業モデルが確立していないケースが一般的です。そのため、成功するかどうかの見通しが難しく、失敗するリスクが高くなっています。
流動性が低い
一般的な上場株式とエンジェル投資のリターンとして得られる株式は、流動性の高さが異なるため注意が必要です。
上場企業の株式は株式市場で一般的に売買されているため、いつでも売却可能です。
一方、エンジェル投資の対象企業の株式は、株式市場に上場されていない「店頭有価証券」に分類されます。店頭有価証券は、原則、証券会社から顧客に対しての勧誘を禁止されているため売却方法が限られます。
つまり、現金化したくても簡単に換金できないということです。
エンジェル投資では、イグジットによって売却益を得るケースが一般的なので、エンジェル投資は余剰資金で行うことをおすすめします。
エンジェル投資の税制優遇措置【エンジェル税制とは?】
エンジェル税制とは、一定の要件を満たすベンチャー企業に株式投資をした場合、税制優遇を受けられる制度です。企業の「一定の要件」には、事業年度ごとに定められている要件や未上場であるなど細かい要件があるので、中小企業庁の公式サイトでご確認ください。
中小企業庁 エンジェル税制の対象要件
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/subject/index2.html
エンジェル税制によって受けられる優遇措置には、「優遇措置A」「優遇措置B」の2つの方法があります。
優遇措置A
優遇措置Aは、設立5年未満の要件を満たした企業に投資した金額のうち、以下の金額をその年の総所得金額から控除できる制度です。
控除できる金額=対象企業への投資額-2,000円
2021(令和3)年1月1日以降に投資した場合、控除対象の投資額上限は、800万円または総所得金額×40%のいずれか低い金額となっています。
優遇措置B
優遇措置Bは、設立10年未満の要件を満たした企業に投資した金額全額が、その年の他の株式譲渡益から控除できる制度です。控除対象となる投資額の上限はありません。
株式を売却して損失が発生した場合
優遇措置AとBは投資した金額に対する優遇措置ですが、エンジェル税制では売却時にも優遇措置が設けられています。
エンジェル税制の対象企業の株式を売却して損失が発生した場合、損失分をその年の他の株式譲渡益と相殺することが可能です。さらに、その年に相殺しきなかった損失は、翌年以降3年にわたって株式譲渡益と相殺できます。
エンジェル税制を利用するには?
エンジェル税制を利用するには、企業・個人投資家の双方が一定の要件を満たした上で、手続きをする必要があります。
エンジェル税制に関する相談窓口は中小企業庁の公式サイトで確認できるので、詳細はこちらでご確認ください。
中小企業庁 エンジェル税制についてのお問合せ
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/contact/index.html
投資家がエンジェル税制を受ける際の流れは、以下のとおりです。
【投資家がエンジェル税制を受ける際の流れ】
1.投資対象の企業が都道府県の担当窓口に申請する
2.企業が「税制適格の確認書」の交付を受ける
3.企業から投資家へ「税制適格の確認書」を送付する
4.投資家が確定申告時に書類を添付する
まとめ
エンジェル投資は、個人が創業間もない企業に投資する投資方法です。日本経済を活性化させる効果があるなど社会貢献度の高い投資ですが、ハイリスク・ハイリターンのため、投資する際は注意が必要です。
今回紹介したエンジェル投資の他にも、節税と資産運用を両立できる方法として不動産投資、節税できる国の制度としてiDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)があります。気になるものがあれば、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。
【ホームズ】不動産投資でサラリーマンが節税を行う場合の基礎知識と注意点
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【ホームズ】iDeCo(イデコ)とは?メリット・デメリットやおすすめの運用方法
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【ホームズ】NISA(ニーサ)とつみたてNISA(ニーサ)の違いを分かりやすく解説
https://toushi.homes.co.jp/column/lifull-homes-investment/beginner196/