市場成長が続く米国株への投資が加熱する中、押さえておきたいのが株価指数S&P500への投資です。S&P500はアメリカの株式市場全体を反映する指数とされ、投資先は「S&P500だけでいい」と考える投資家もいるほど注目を集めています。
この記事では、S&P500への投資メリットや取引方法について解説します。併せて、今後の動向や注意したいリスク要因についても触れていますので参考にしてください。
株価指数S&P500とは?
S&P500は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やNASDAQなどに上場している銘柄から選出された500銘柄で構成される株価指数です(※2021年12月31日現在505銘柄)。
対象の時価総額はアメリカの株式市場の総額約8割を占めることから、市場動向の指標として広く活用されています。算出者はインデックス・プロバイダー「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス」です。
S&P500は時価総額加重平均型の株価指数で、以下の式で算出されます。
構成銘柄の時価総額の合計÷基準点の時価総額合計÷除数
(※除数=指数に連続性を確保するための数値)
S&P500の構成銘柄
S&P500の構成銘柄は、一定の時価総額(2021年11月時点で131億ドル以上)や4期連続黒字、浮動株比率50%以上などの条件を満たすアメリカ国内の優良企業です。構成銘柄は、年4回必要に応じて入れ替えが行われます。構成比率は時価総額が大きいほど高くなり、上位は、GAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・マイクロソフト)と呼ばれるビッグ・テックやテスラなどが占めています。
【構成比率上位10銘柄(2021年12月31日時点)】
アップル | 情報技術 |
マイクロソフト | 情報技術 |
アマゾン・ドット・コム | 一般消費財 |
アルファベットA (Goolge) | 電気通信サービス |
テスラ | 一般消費財 |
アルファベットC (Goolge・議決権なし) | 電気通信サービス |
メタ・プラットフォームズA (Facebook) | 電気通信サービス |
NVIDIA | 情報技術 |
バークシャー・ハサウェイB | 金融 |
ユナイテッドヘルス・グループ | ヘルスケア |
S&P500への投資が注目される理由
S&P500は、大型株から新興株、各セクターを広くカバーしています。米国株式の指標ともされる指数であるため、米国株への投資は「S&P500だけでいい」と考える人も少なくありません。かの投資家ウォーレン・バフェットも個別株よりもS&P500への投資を勧めるほどです。
S&P500への投資が注目される理由は大きく2つがあります。
長期的に上昇を続けている
米国株は、過去リーマンショックやコロナショックなどの大幅下落局面もありましたが、過去30年間上昇を続けています。これは、アメリカの経済が成長を続けてきたからです。
S&P500はアメリカ株式市場をほぼ反映しており同様に上昇を続けています。S&P500に投資しておけばアメリカ株式全体への投資へと同等のパフォーマンスが期待できるのです。
株価指数の上昇率においてはNASDAQ100の方が上回りますが、新興企業が中心ということもあり変動幅が大きくなります。リスクを抑えて長期的に運用したい場合には、S&P500が選択肢として有効でしょう。
分散投資が手軽に実現できる
分散投資は投資リスクを抑えるために欠かせない手法ですが、個別株で分散投資を実現するには銘柄選択や購入など大きな手間がかかります。
米国企業についての情報収集は、身近な国内企業とは異なり簡単ではありません。
S&P500は11業種・優良500社を対象とした指数ですので、S&P500へ投資するだけで分散投資が実現します。
これから米国株への投資をお考えの初心者の方も投資しやすいでしょう。
S&P500への投資方法
S&P500は株価指数ですので、直接の投資はできません。投資するには、S&P500をベンチマークとするETF(上場投資信託)や投資信託を購入する、もしくはCFD取引(差金決済)を利用するなどの方法があります。
S&P500をベンチマークとするETF
ETFを通じてS&P500に投資するメリットは、運用コストが低いことです。ETFは一般的に投資信託よりも運用管理費用が低いため、長期投資になるほど運用効率に差が表れるでしょう。
また、上場銘柄ですので市場でのリアルタイム取引や信用取引も可能です。
S&P500をベンチマークとするETFは、海外市場(アメリカなど)・国内市場(東証)で取引できます。
海外市場での取引は現地時間・現地通貨ベースとなりますが、豊富な銘柄数と流動性の高さがメリットです。スプレッドコストや信託報酬は国内ETFよりも有利ですが、売買手数料や為替手数料の負担は大きくなります。
国内ETFは日本時間でリアルタイム取引ができ、日本株同様の感覚でS&P500へ投資できます。為替変動のリスクを抑えるヘッジあり商品の選択も可能であり、外国株への投資が初めての方にも挑戦しやすいでしょう。
海外市場よりも国内市場での取引がトータルコストで見た場合には、有利となることもあります。取引にあたり為替手数料も必要ありません。
分配金を自動的に再投資する仕組みはないことが一般的で、福利効果によって投資効率を上げるには、手動での再投資が必要な場合が多いです。
手間をかけずに複利効果を期待したい場合には、定期買付や配当金再投資のサービスを提供している証券会社を選択する必要があります。
S&P500をベンチマークとする投資信託
投資信託には、S&P500に連動するETFを組み入れている商品やS&P500の組み入れ銘柄でポートフォリオを組んでいる商品などがあります。これらのインデックスファンドを利用することで、S&P500への投資同等のパフォーマンスを期待できるでしょう。
投資信託は信託報酬がETFよりも高めとなる傾向ですが、金額単位の投資が可能です。
つみたてNISAで運用できる商品がある点も、長期的な運用をお考えの方にメリットとなります。
投資信託は非上場のため、基準価額での取引となり相場変動時にリアルタイム取引ができないことがデメリットです。また、取引コストが低く抑えられたインデックスファンドであっても、ETFと比較するとコストは一般的に大きくなります。
CFD取引
CFD取引(差金決済)は、原資産に連動する金融派生商品です。取引にあたり実資産を保有せず、価格差で決済する差金取引になります。FX(外国為替証拠金取引)と同じ取引方式です。
CFDにはS&P500をはじめとした株価指数を扱う銘柄があります。上昇局面でも下落局面でも利益を狙うことができる、最大10倍のレバレッジをかけられるなどのメリットがありますが、比例してリスクが大きくなりやすく資金管理が重要です。
S&P500の今後はどうなる?
S&P500へ投資する際には、今後の見通しや、想定されるリスク要因についても理解しておく必要があります。
堅調な推移が期待されている
米国株は下落局面もありましたが、何度も回復し成長を続けています。直近では2020年春に新型コロナウイルスの感染拡大懸念により暴落しましたが、その後半年ほどで回復し上昇を続けています。
アメリカの経済成長を支えているのは、人口の増加です。アメリカの総人口は、2020年時点で3億3,145万人あまりで、10年前と比較して7.4%増加しています。かつてほどの勢いではありませんが増加傾向が続いており、国連による世界人口予測(2019年)によると2050年には3億8,000万人目前です。
人口の増加は労働力の増加でもあり、経済成長が期待できます。一時的に経済が停滞した場合でも、積み上げられた消費者需要が表面化するベントアップデマンドにより強い回復が期待できるでしょう。
さらに、アメリカは世界経済の中心であり、最もイノベーションが活発です。現在好調のGAFAMをはじめ、IT関連企業の先行き予測も好調で、市場では引き続き企業業績は上がると予測されています。
このような背景から、アメリカ経済は長期的に成長を続け、その動きを反映するS&P500も堅調な推移が期待されています。
注意したいリスク要因
S&P500は過去30年スパンで見ると成長していますが、将来が保証されているわけではありません。これまで短期的には大きな下落も経験しています。
コロナショック以降は上昇基調が続いているものの、BofA(バンクオブアメリカ)をはじめ、近い将来の調整を予測している専門家も少なくありません。
インフレ率の上昇や利上げなどをきっかけに、短期的に下落する可能性もあるでしょう。
また、新型コロナウイルスによる経済停滞にも注意が必要です。ワクチンの普及で経済活動は回復してきましたが、新たな変異株の脅威により、再び停滞する可能性もあります。サプライチェーン危機の懸念もあるでしょう。
日本からS&P500に投資する場合には、為替リスクも生じます。ドル建てで値上がりしていたとしても、ドル円が購入時よりも大きく円安に振れていれば、マイナスとなるケースも出てきます。
まとめ
S&P500は、アメリカ経済全体への投資と同様のパフォーマンスが期待できる株価指数です。主要企業に分散投資が叶うため、米国株投資への入り口として検討してみてはいかがでしょうか。
資産を成長させたいとお考えなら、S&P500をはじめとした株式投資以外に不動産投資も選択肢の一つとなります。ぜひ以下の記事も参考にご検討ください。
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