小額から始められ、比較的リスクが抑えられていることから初心者にもよくお勧めされる投資信託。
しかしそんな投資信託であっても、なかには大損してしまったケースも見られます。
投資信託で大損してしまうパターンにはどのようなものがあるのか、またどのようなことに気をつければ大損を回避できるのか、投資信託を運用するにあたって重要なポイントを見ていきましょう。
投資信託の基本について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
投資信託の利回りとは? 投資初心者向けに計算方法や利回りのポイントを解説
【投資信託の税金】課税される仕組みと税額シミュレーション
そもそも投資信託で大損する可能性ってどれくらい?
冒頭でも述べたとおり、投資信託は初心者にもお勧めされることが多く、比較的リスクが分散された商品といえるでしょう。FXや仮想通貨ほどの大きな値動きはなく、投資信託の運用が「大損」「大失敗」となる可能性はそれほど高くないと考えられています。
その理由をいくつか解説しましょう。
投資信託は比較的リスクが分散された商品
投資信託は、1つの投資信託に複数の銘柄、複数の資産、複数の地域が組み込まれているものが多いです。1つの銘柄を購入するだけで分散投資が可能になることから、投資信託は比較的リスクが分散されている金融商品といわれます。
資産運用のプロによって管理されている
投資信託は、信託報酬という手数料を払って、投資の専門家に資産運用をお任せする仕組みです。
もしその銘柄の運用が思わしくない場合、資産運用のプロが適宜銘柄や資産を組み替えて運用しているため、比較的リスクを抑えることができると考えられます。
元本保証はないが、価格が0円になることは考えにくい
いくらリスクが抑えられているとはいえ、投資信託は元本保証のない金融商品です。価格が下がれば元本割れも当然あり得ます。
ただし投資信託において、個別株のように基準価格が0円になることは考えにくいといわれています。投資信託はいくつもの銘柄・資産を組み合わせて構成されているため、それらが一度にすべて破綻して0円になることは現実的ではないからです。
「繰り上げ償還」による強制的な償還の仕組みがある
投資信託には「繰り上げ償還」という仕組みがあります。
「償還」とは、投資信託の運用期間が終わる際に信託財産の清算を行い、投資家に対し保有口数に応じて償還金を返還すること。
そして「繰り上げ償還」とは「運用成果が思わしくない」「純資産総額が減ってきた」などの理由で効率的な運用ができないと判断された場合に、もともと設定されていた期限を繰り上げて償還することです。
つまり投資信託には一定の繰り上げ償還基準が決まっているので、大損となる前に強制的に償還されることになります。
個別株のように「自身で損切りできなかった」「企業が破綻した」などの理由で、価値がゼロとなるような大きな損失になることは考えにくいということです。ただし強制的に元本割れの状態で償還されることはあり得ます。
繰り上げ償還について詳しくは「投資信託の8つのリスク|リスク分散のポイントとリスクの計算方法」を参考にしてください。
過去に投資信託が大暴落したタイミング
投資信託は組み入れられている資産によって値動きが変わります。株式を中心に組み込んだ投資信託であれば、株価と同様の値動きが見られるということです。
2000年以降の株式市場暴落のタイミングを参考にすると、
2000年 ITバブル崩壊
2001年 同時多発テロ(ITバブル崩壊と同時多発テロ両方で約45%の下落)
2007年 リーマンショック(約50%の下落)
2020年 コロナショック(約20%の下落)
などが挙げられます。
ただし、いずれもその後数年で回復。全体としては右肩上がりで上昇が続いています。
REIT(リート)も株式と比較的似たような動きです。
一方債権は株式やREIT(リート)のような大きな変動はありません。リーマンショック時にも日本債券や先進国債券は他の資産ほど大きな影響を受けず、緩やかな動きが見られました。
このように、投資信託の値動き・暴落の可能性は、組み入れられた投資商品によって変わります。
投資信託で大損してしまうよくある5つのパターン
ここまで投資信託で大損となる可能性がそれほど高くないといわれる理由をご説明しました。しかしそんな投資信託であっても、運用の仕方によっては損失で終わってしまうこともあります。
大損してしまう可能性のある投資信託の運用パターンを5つご紹介しましょう。
新興国ファンドへの投資で大損
実は、中国・台湾・インド・ブラジルなど新興国への投資に特化した新興国ファンドは、先進国ファンドなど他の投資信託よりも手数料が高い傾向にあるため、金融機関の担当者から勧められるケースが多いでしょう。なぜなら金融機関にとって利益が大きいからです。
しかし新興国ファンドには値動きが大きいという特徴があります。大きな利益が期待できる分、損失も大きくなるリスクをよく理解せずに購入してしまい、結果大きな損失となってしまうパターンが見られているようです。
他の投資信託と比較するなど、投資前に特徴やリスクをよく考慮して購入する必要があるでしょう。
新興国ファンドに投資するなら、一括で投資せず積み立てタイプにしたり、他の先進国ファンドなどと組み合わせたりするとリスクの分散になります。
初心者でも分かる「新興国株式インデックス」-対象はどこの国? メリット・デメリットは?-
株価急落時の狼狽売りで大損
コロナショックやリーマンショックなどの株価急落の際に、慌てて狼狽売りしたことによる大損のパターンもよく見られます。株価が急落しているタイミングで慌てて売却してしまうと、その時点で損失が確定してしまうわけです。
しかし先述のとおり、過去何度も見られている暴落の後には、回復傾向が見られています。つまり狼狽売りせずに保有し続けていれば、いずれ価格は戻っていたということです。
株価の値動きの傾向や経済変動との関連性など、自分なりに知識と情報を身に付けておくことが重要といえるでしょう。
価格暴落をチャンスと捉え買い増ししたものの、繰り上げ償還で大損
投資商品の価格が暴落するタイミングは、損失の危機であると同時に安く購入するタイミングでもあります。いずれ回復することを見込んで、価格暴落をチャンスと捉え追加購入するのも投資手法の一つです。
しかし先述のとおり、投資信託には運用期間途中でも定められた一定の償還基準を超えると強制的に途中償還・繰り上げ償還される仕組みがあります。
価格が急落した局面でたくさんの口数を安く購入することは可能ですが、保有する口数が多い分含み損も膨れ上がることになります。つまりそのタイミングで繰り上げ償還が決まり損失が出た場合、保有する口数が多い分大損となってしまうわけです。
将来的な値動きや回復の可能性を計ることは経験者でも難しいもの。買い増しは慎重に検討しましょう。
毎月分配型の投資信託で大損
「毎月分配型」とは、1ヶ月ごとに決算を行い、毎月分配金が支払われるタイプの投資信託のこと。毎月こまめに収益が入ってくるのがメリットでしょう。
一方、その分配金はファンドの資産の中から支払われるため、その分その投資信託の基準価格が下落するデメリットもあります。
分配金には以下の2種類があります。
【普通分配金】……運用益から支払われる分配金。課税対象であるため利益率が下がる
【元本払戻金(特別分配金)】……元本を切り崩して支払われる分配金。非課税となるものの個別元本が減る。
こうして見ると、いずれにしても投資家の利益となりにくいことが分かりますね。よほど運用成果がよく値上がりしない限り、投資信託自体の価格が下がりやすいのが「毎月分配型」といえるでしょう。
この仕組みをよく理解せずに購入した結果、投資信託の基準価格が下落し、大損となるパターンが見られています。
毎月分配型の仕組みをよく理解し「年金の足し」「毎月のお小遣いとして」など明確な目的を持って運用するのであればよいでしょう。ただし毎月分配型は長期的な継続性・安定性において不安があることを知っておくべきだといえます。
一方「毎月分配型」と対照的なものに「再投資型」があります。
「再投資型」とは、分配金を受け取らずに再度投資に回し、同じ投資信託を自動的に買い増す設定のことです。利益が利益を生み出す複利効果でより投資効率が上がる傾向があるため、長期投資には「再投資型」のほうが向いているといえます。
投資信託の分配金・基準価額については、ぜひ以下の記事を参考に理解を深めておきましょう。
投資信託と分配金について徹底解説|分配金を受け取るメリットとデメリット
投資信託の基準価額とは? よくある勘違いと基準価額の変動要因
レバレッジを効かせた投資信託で大損
投資信託にはレバレッジを効かせた投資信託「レバレッジファンド」があります。
日経平均株価やS&P500といったインデックスに2倍や3倍といった倍率をかけた値動きで連動することを目指して構成されたファンドのことです。
株価上昇局面では大きなリターンが期待できる一方、下落局面ではその倍率分大きな損失となるリスクがあります。リーマンショックやコロナショックなどの急落時には、レバレッジファンドの損失は非常に大きくなり、大損となるケースも。
初心者が扱うにはハイリスクで難しい金融商品といえるでしょう。
「レバレッジ」の意味を分かりやすく解説! レバレッジ取引のメリット・デメリット
投資信託での大損を回避する5つのポイント
最後に、投資信託の運用で大損することを避けるにはどうしたらよいのか、大切な5つのポイントを見てみましょう。
投資信託は長期運用を前提とする
個別銘柄のデイトレードやFXなどと違って、投資信託は長期運用を前提として少しずつ利益を積み重ねていく投資商品と捉えておくとよいでしょう。
リーマンショックやコロナショックなど、一時的に価格が急落するような局面があっても、その後価格は回復傾向が見られています。長期運用を見越していれば、一時的な暴落時にも焦らずに状況を判断することができるでしょう。
分散投資を意識する
基本的に投資信託は、複数の銘柄・資産を組み合わせて構成されているものが多く、1つの銘柄を保有するだけでリスク分散が叶う投資商品です。
しかしなかには、特定の分野や特定の地域を対象とした銘柄もあります。
国内型と新興国型の組み合わせ、株式型と債券型の組み合わせなど、異なる資産や異なる地域を組み合わせて複数の投資信託を保有するなど分散投資を意識するとよいでしょう。
もしくは1つの投資信託の中に複数の資産を組み合わせたバランス型の投資信託を保有するのも一つの方法です。
このように、もともとリスク分散に長けている投資信託ですが、保有の仕方によってより安全性を高めることができるでしょう。
初心者がハイリターンタイプの投資信託を狙うのは危険
投資信託には、より大きなパフォーマンスを狙った商品があります。
【アクティブ型】……対象とするインデックスを上回る運用を目指した投資信託
【ブルファンド】……対象とするインデックスに連動し、2倍・3倍といった目標倍の値動きをするレバレッジファンド。株価の上昇局面でハイリターンが期待できる。
【ベアファンド】……対象とするインデックスと「逆の」値動きで、2倍・3倍といった目標倍の値動きをするレバレッジファンド。株価の下落局面でハイリターンが期待できる。
これらはハイリターンが狙える半面、同時にハイリスクでもあり、初心者が運用するには難しい傾向にあります。
【インデックス型】……対象とするインデックスに連動することを目指した投資信託
【バランス型】……国内外の株式や債券など、複数の地域、資産を組み合わせた投資信託
など、リスクが分散されていて比較的大損の可能性が低いと思われる投資信託が初心者向きといえるでしょう。
NISAを活用して利益率を上げる
NISAやつみたてNISAを利用して投資信託を購入することで、利益にかかる約20%の税金を非課税とすることができ、その分利益率が上がります。
自身の目指す投資規模が非課税投資枠内であれば、NISAの活用を検討してもよいでしょう。
投資前に自分でしっかり知識と情報を身に付ける
投資信託に限らず、すべての投資商品を活用するうえで最も重要なことは、購入しようとする商品についてしっかりと知識・情報を身に付けることです。
正しい知識があれば、リスクをよく理解せず営業担当者に言われるがまま購入してしまうことによる大損を防いだり、安全性の高い投資信託の組み合わせを自分で判断したりすることができます。
過去の株価急落時の値動きのパターンを知っておくことで、狼狽売りによる大損を防ぐこともできるでしょう。
まとめ
リスク分散が可能といわれる投資信託であっても、ここで解説したような大損のパターンがあることをご理解いただけたでしょうか? 元本保証のある投資商品でない限り、どんな投資にもリスクがあります。
しかし基本的に、投資のプロに運用を任せることができ、小額から始められる投資信託は、初心者でも始めやすい投資商品です。ぜひ先述した大損を避けるために重要なポイントを押さえ、投資信託運用の安全性をより高めることを意識しましょう。
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