髙杉雅紀子の不動産投資コラム

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LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

田舎の実家を相続することを考えてみる~火災保険はどうなるのか~

実家を相続することを考えてみるというテーマで、相談者の質問にお答えしています。前回は、田舎の実家を相続するときに行う実家の名義変更の手続きや費用について解説しました。
今回は、火災保険について、ご相談者さんから以下の内容のご質問をいただきました。ご紹介いたします。

Q
実家を相続する場合は、火災保険はどうなるのでしょうか?
火災保険の名義変更の手続きについて、教えてください。
また、空き家にしておくのか、賃貸にするかで火災保険の種類等が変わるのでしょうか?

A
相続が発生した場合は、実家の火災保険の名義は変更する必要があります。
また、相続した実家を空き家にしておく、セカンドハウスとして活用する、賃貸にするなどの用途に応じて、加入できる火災保険が異なります。
これらを詳しくみていきます。

・火災保険の名義変更について
火災保険には、掛け捨てタイプと満期金がある積立タイプがあります。
火災保険の名義変更の手続きは、どちらのタイプも契約者が亡くなり相続が発生したら、法定相続人の代表1名を決め、その方が手続きを行います。なお、保険会社によっては法定相続人全員の押印が必要となる書類があります。加入している火災保険の窓口や代理店などにまずは問い合わせしてみましょう。
なお、相続が発生した時点で火災保険を解約した場合に支払われることになる解約金額が火災保険の権利の評価になります。解約金がある積立タイプや掛け捨てタイプでも前納保険料がある場合には、解約金額等の支払われることとなる金額を相続財産として加算することを忘れないようにしましょう。

・家の用途によって火災保険は違うのでしょうか。
相続した実家をそのままセカンドハウスに使用する場合や賃貸として利用する場合は、「住宅」火災保険を契約することになります。したがって、被相続人(亡くなった人)が加入していた火災保険を相続後に新しい所有者が名義変更により継続することができます。
一方、実家を空き家の状態にしてしまうと一般物件の扱いになりますので、相続前に住宅用の火災保険に加入していた場合は一般物件用の「普通」火災保険に加入し直すことになるでしょう。一般物件とは、店舗や事務所など住宅ではない物件のことです。

なお、一般物件用の普通火災保険と住宅火災保険の保険料を比べると一般物件の普通火災保険の方が高くなることが多いです。
さらに、住宅用の火災保険に加入していると地震保険に加入できますが、普通火災保険に加入していても地震保険は加入できないことになります。この理由は、地震保険に関する法律により、地震保険の加入は「被災者の生活の安定」を目的としています。ですから、「居住用建物や生活の動産」を保険の対象としています。したがって、地震保険を付帯できるのは居住用の保険のみということになります。建物は変わらなくても用途が異なることで、加入できる保険が異なるので注意が必要です。
また、賃貸にした場合は、建物の所有者が住宅火災保険に加入するのとは別に、借主が加入する借家人賠償保険があります。借家人賠償保険は、入居者が火災を起こしてしまった場合の貸家の原状回復や日常生活でドアや窓ガラスなど破損してしまったときや下の階の人に水漏れなどで損害を与えてしまったときなどを補償する保険です。借家人賠償保険の加入は法律上任意となっていますが、賃貸の契約では一般的に借主は退去するときに、建物を原状回復させる義務があります。借主が火災を起こしてしまい、建物が全焼してしまった場合、建物を原状回復させるには高額な費用がかかることが予想できます。そのため、借家人には借家人賠償保険に加入を促す必要があるでしょう。

・空き家の管理は義務なのか?
ここで、空き家の管理について少し解説します。民法717条で、不動産の所有者には管理する義務が記載されています。しかし、全国的に増加している空き家の管理が、適切に行われず、近隣の地域住民の生活に(防災・衛生・景観等)深刻な影響を及ぼすことから、社会問題になっていました。このような背景を踏まえて、平成26年11月に「空き家等対策に推進に関する特別措置法」が成立しました。市町村などの自治体は、空き家の所有者への適切な管理指導や適切な管理をしてない空き家は「特定空家」に指定し、助言・警告などができるようになりました。さらに行政指導をしても、改善されない場合には住宅用特例地の対象外となり、固定資産税の特例を受けられなくなります。そして、命令されてもなお応じない場合には50万円以下の過料となります。それでも、改善されない場合は、行政代執行となり解体や塀の撤去などかかった費用を行政が空き家所有者に請求します。
このように、空き家の管理については、法律で決められているのです。したがって、このような点からも相続した実家の管理は必須と言えます。田舎の実家を相続する場合は、所有者の住まいと相続した実家が遠距離の場合もあります。所有者がなかなか、相続した実家に足を運べない場合には空き家管理業者を利用することも検討しましょう。

・火災保険の補償
相続した実家を頻繁に使用しない、火も使わない、保険料を節約したいなどの理由で火災保険に加入しないと考える方もいらっしゃいます。
しかし、万が一、隣家が火災になってしまって、相続した実家に飛び火し、火災が発生した場合撤去費用はどうなるのでしょうか。失火責任法により重大な過失がなければ、火元である隣家の方が補償する義務はありません。したがって、実家の所有者が撤去費用などを賄う必要があるのです。
また、火災保険が補償する内容は、火災だけでなく風災・落雷・台風や大雨、土砂災害や浸水の被害も補償されます。例えば、台風で飛んできた屋根瓦によって窓ガラスが破損や土砂災害で土砂が入り込んでしまうなどの被害などが補償されます。
相続した実家が被災した場合、実家の築年数が古い場合には、再建の検討はしない可能性もあります。しかし、災害後の家屋の掃除や家財の処分費など費用がかかります。
なお、空き家の所有者が適切な管理を怠ったという原因で隣家に損害を与えてしまった場合には、所有者が賠償しなければいけない可能性も出てきます。実家を空き家にする場合は、施設賠償保険などの検討も重要です。

損害保険料率算出機構の火災保険・地震保険の概況によると、保険金の補償危険全体の傾向がわかります。火災による保険金の推移は横ばいに対して、自然災害は年によって大きく変動しています。特に、2018年では自然災害が原因の保険金が、年間全体で支払った保険金の約87%を占めています。相続した実家の用途に限らず、災害対策としても火災保険の加入は必須になるでしょう。

【保険金の推移】

出典:損害保険料率算出機構 2020年度火災保険・地震保険の概況

住宅の火災保険について、紹介しました。実家の活用方法によって、火災保険の種類は異なることはありますが、加入しておくべき保険と言えるでしょう。
田舎の実家を相続した場合、台風などの災害被害を確認することが難しいかもしれません。
外から見るとわからないけれど雨漏りしていたというような場合があります。そのような時、被害に気づかず雨漏りを放置すると、家はさらに傷んでしまいます。
頻繁に実家に足を運べない場合は、空き家管理業者や実家近くに住んでいる信頼できる人に災害後の家の状態を確認してもらいましょう。
また、賃貸にする場合でも災害時には、入居者や管理会社とのコミュニケーションは重要です。そして、被害があった場合は、速やかに保険会社と工務店や建設会社など修繕業者に連絡しましょう。

【このコラムの著者】

髙杉雅紀子

AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士・住宅ローンアドバイザー(金融検定協会)
生命保険会社を約8年勤務後、住宅建築の建設会社に16年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。さらに、ファイナンシャルプランナーとして教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなど相談を受けてる。
これまで培ったFPの知識と経験の他、主婦・母・自営業の嫁・親の介護、義父母との同居の経験を活かしたアドバイスを行う。お客様に寄り添う、地域密着型FP。

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