金井規雄の不動産投資コラム

シリーズ連載: アメリカ不動産投資のすべて

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

アメリカ西海岸の不動産取引実情(1)

セミナー開催のお知らせ
金井規雄氏による新刊『アメリカ不動産投資の実態。』出版記念セミナーを開催
日程:6月30日(土)14:00~
料金:無料
定員:80名
会場:八重洲ブックセンター 本店8階ギャラリー
詳細:http://www.yaesu-book.co.jp/events/talk/14144/

 

1 日本との違い

日本では売主と買主がエージェントを通して(または直接)売買条件を前もって話し合い、まとまったところで、売買契約書を取り交わしますが、アメリカでは、気に入った物件があれば、すぐにオファー(売買契約書)を売主エージェントに出状します。
いきなり売買契約書を提出するのは、まだ何も決まっていないのに、リスクが高いと思われますが、提出する売買契約書(オファー)には、買手がいくらの価格で、どういう条件で購入するかという内容が細かく書かれています。買手の希望条件を盛り込み、売買契約書にサインをして出状します。これを、「オファーを出す」といいます。

通常、売買契約書(オファー)は、たとえばカリフォルニア州の場合、州の不動産協会定型フォームを使用します。人気の高い物件や、市場価格より低い物件は、すぐに他者に取られてしまうので、とにかく早く購入したいという意思表示をする(オファーを出す)ことが重要です。
オファーを出してから交渉が始まり、いく度かの交渉の結果、初めて売買契約が成立します。それまでは、契約が成立したことにはならないのです。

売主は買手から入ったオファーを見て、買手の希望価格やその他の条件が気に入らなければ、今度は売主の希望条件を買手に出状します。これを、「カウンター・オファー」といいます。

たとえば、売主がある物件を50万ドルで売りたいとします(この売主が売りたい価格のことを、”Asking Price”といいます)。ここである買手が、47万ドルで、ローンが30日で取れるという条件でオファーを出したとします。これに対し、売主は価格は49万ドルで、ローンは21日で取るように、という内容で、カウンター・オファーを買手に出します。今度は、買手が売主からのカウンター・オファーに対し、価格は48万ドルで、ローンの日数は25日でというカウンターを出し、売主がこれに合意すれば、その時点で売買契約が成立することになります。

最初に出したオファーから、次々にカウンターが出されて最後に合意に至るわけです。このようにアメリカでは、書面を取り交わして条件を詰めて合意に至ります。

こぼれ話2 エージェントは個人事業主
アメリカの不動産エージェントは、そのほとんどが個人事業主で、不動産会社の給与社員ではありません。「XXX不動産のYYYです」という場合は、YYYさんはXXX社の看板とデスクを借りて、自分で仕事をしております。つまり給料は会社から給与という形で出るのではなく、自分で稼いでいます。
たとえば、広告を出す場合、XXX社のYYYです、といっても広告費用は自分で負担します。要するに歩合制です。売買の成約がなければ、収入は一切ありません。したがって、「XXX社のYYYです」と言っても、XXX社の社員ではないということです。

 

2 売買取引の手順

(1)不動産エージェント(仲介業者)の選定
物件を探して取引交渉をするエージェントを見つけなければいけませんが、サイトや広告で探す場合は、そのエージェントが本当に優秀であるかどうか、わからないケースが多いと思います。

エージェントは単に物件を見つけて、売買契約書を作成するだけでなく、ローンを熟知していることや、鑑定士、エスクロー会社、タイトル保険会社、弁護士、公認会計士、インスペクション会社、火災保険会社、修理会社、等々に精通しているエージェントでなければなりません。

ここでは、どのエージェントにしたらいいか、4つの条件を掲げておきます。
a・交渉力があること
相手のエージェントの言いなりになるのではなく、こちらの要望をできる限り認めさせる、勝ち取る交渉力のあるエージェント。
b・関連専門業者を周知していること
不動産取引には、インスペクションや、銀行、保険、物件鑑定などが必要になりますが、ただ単にそれら専門業者を知っているのではなく、それぞれがベストの業者であることを周知しているエージェント。
c・金融のことを熟知していること
不動産ローンに留まらず、金融全般に知識があるエージェント。
d・顧客のニーズを理解する・できること
「ロスで50万ドルの不動産を購入したい。」と聞いてそれ以上のご希望や条件などを詳しく尋ねて希望物件を絞り込んで適切な物件紹介ができるエージェント。
ある質問を2~3してみて、まず答えられるかどうか、そしてその回答の内容と説明で、そのエージェントが優秀かどうかがわかります。これらの条件を満たすのは言うまでもないことですが、納得できて安心して任せられるエージェントが求められます。
そして、これはできればですが、実際に不動産投資を実行している(または実行した)エージェントが望ましいと思います。

(2)物件選び
頭金などの予算、ロケーション、利回りなどに見合う物件を、エージェントに探してもらいます。
通常、条件に見合った候補物件は5~10件ほど見つかります。エージェントから送られてきます物件情報・写真などを見て絞り込んでいきますが、最終的には実際に物件を視察して、その中から、第1希望、第2希望、第3希望と3件ほど選びます。

(3)オファー・交渉・合意
選んだ物件にオファーを出します。「オファー」とは、買手が希望価格、条件などを明記し、売主のエージェントに出す仮売買契約署(まだ合意に至っていないため)のことをいいます。
ここでできれば候補物件を3件ほど選びオファーを出すことをお勧めします。理由は1件だけですと、オファーを出したからといって、必ずその物件が取れるわけではないからです。2件から3件にオファーを出して交渉していく間に、その中から条件が一番良い1件に絞り込んでいくのが得策です。ポイントは、気に入った物件があれば、どんどんオファーを出すことです。

前項で説明しましたように、アメリカでは書面にて物件購入意思表示をしないといけません。3件もオファーを出して全て受けられると大変なことになるのでは、と思いますが、実はここでエージェントの力量が試されます。売主が必ずカウンター・オファーを出してくるようなオファーを出してくるようなオファーをエージェントが書けるかどうかです。
必ずカウンターを出してくるオファーの項目があります。そうすれば、いきなり最初に出したオファーが受けられることはありません。

具体的に説明します。
まず、こちら買手の希望する物件の売り価格が52.5万ドルとします。そして、40%の頭金で60%のローンを組むとします。その他のオファー条件をまとめますと、下のようになります。

【買手のオファー項目】
・買手希望価格:50万ドル
・ローン:60%(=30万ドル)
・ローン承認期間:30日
・インスペクション期間:30日
・エスクロー期間:40日
・鑑定評価:30日
・エスクロー会社:ABCエスクロー
・タイトル会社:シカゴ・タイトル会社

 

【売主からのカウンター・オファー】
・価格:52万ドル
・ローン承認期間:20日
・インスペクション期間:17日
・エスクロー期間:30日
・鑑定評価:20日
・エスクロー会社:XYZエスクロー
・タイトル会社:ファースト・アメリカン・タイトル会社

 

【買手のカウンター・オファー】
・価格:51.5万ドル
・ローン承認期間:25日
・インスペクション期間:20日
・エスクロー期間:35日
・鑑定評価:25日

これらを、所定のフォームに記入して(エージェントが用意します)、買手がサインをし売主エージェントに提出します。受け取った売主エージェントは売主に見せて、どう対応するか検討し、カウンター・オファーを作成し、買手エージェントに通常3日以内に提出します。売主からのカウンター・オファーが、次のページの上段のようなオファーとしますと、買手は今度下段のようなオファーを指示します。

エスクロー会社はXYZエスクロー、タイトル会社はファースト・アメリカン・タイトル会社でOKとします。この買手からのカウンター・オファーを、売主が承諾しサインすれば、売買契約が成立します。

ここでひとつ重要なことがあります。それは、オファーやカウンター・オファーなどの書類のサインですが、必ずパスポートと同じサインをします。本人であることとその署名・サインを確認する身分証明書としてパスポートになるからです。あとで説明しますローン契約書や譲渡証書など、すべての書類は、パスポートと同じサインをします。

(4)エスクロー
売買契約が成立しますと、エスクローを解説します。通常「エスクローをオープンする」といいます。
エスクローがオープンして3営業日以内に、手付金(Deposit)合意価格の通常3%をエスクローの指定銀行口座に振り込まないといけません。

これは、日本の銀行からアメリカの指定銀行口座に、海外送金をしますと通常1~2日で届きますので、エスクローの指定銀行口座を売買契約が合意し、エスクローがオープンすると同時にエージェントから知らせてもらう必要があります。
ここで、エスクロートは、どういう役割を果たすのか、どういうものなのか。

[米国におけるエスクロー取引について]
●米国の不動産取引、特に中古住宅取引では、確実な契約の履行確保を目的として、エスクロー取引が頻繁に利用されている。
●エスクロー取引とは、不動産仲介業者とは別に、エスクロー業者(州のライセンスが必要)が中立的な第三者の立場で、売主・買主双方の契約事務の代行、履行の管理・確認を行う。
●日本では、司法書士が、特に制度的な責任や報酬体系などの存在しない状況下で、慣行的にすべての当事者が一堂に会して契約関係書類と支払い等を交換する三位一体と呼ばれる手続を実施することがある。

こぼれ話3 エスクロー
不動産売買取引を円滑に行うために、エスクロー会社が介在します。州によっては、弁護士事務所が取り扱います。役目としては、売手・買手の合意に基づいた売買契約書の内容どおりに取引されることを中立を保って処理します。
たとえば、手付金・ローン・残金などの入金チェック、名義の登記にあたる所有権譲渡証書(Grant Dead)の登録、ローン書類のチェック・確認など、を行います。エスクロー会社は、売手・買手双方が指定できますが、商慣習上では売手指定のエスクローになります。エスクローは、中立を保つ、となっていますが、実際には売手のエージェント、買手のエージェントの息のかかったエスクローですと、それぞれに便宜を図ってくれますので、できる限り当方のエスクローになるように、エージェントは交渉します。

 

次回コラムに続く

【このコラムの著者】

金井規雄

立命館大学経済学部卒、カリフォルニア大学院統計学修士号。
三菱東京UFJ銀行(為替資金部資金課および企業融資担当)入行ロスアンジェルス支店勤務後、Bank of the West日本企業部を経て、2004年コスモ・インベスメント(不動産仲介・コンサルティング)を設立、現在に至る。

カリフォルニア州不動産仲介ライセンス、カリフォルニア州保険ライセンス保有。米国での仲介実績多数。
現地銀行、会計士、弁護士、保険業者、管理会社などとの幅広いネットワークを持つ。

著書に「アメリカ不動産投資の実態。」「アメリカ西海岸で不動産投資 7年で1億円!」「安全!確実!アメリカ不動産投資のすべて」「ドル資産を持て! 世界最強の通貨によるアメリカ不動産投資戦略」がある。

HP: https://www.cosmoinvestusa.com/

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