田中法人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

実家空き家の有効活用

1.実家空家の現状と課題

増え続ける空家

総務省「平成30年住宅・土地統計調査」によると、「居住世帯のない住宅」のうち空き家は846万戸、総住宅数に占める空き家率は13.6%と、年々増え続けています。

空き家の内訳は、「賃貸用の住宅」が431万戸(50.9%)、「売却用の住宅」が29万戸(3.5%)、「二次的住宅」が38万戸(4.5%)、「その他の住宅」が347万戸(41.1%)。

なかでも最大の問題とされているのは「その他の住宅」です。その他の住宅とは、「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅」と異なり、利用目的のない住宅です。例えば転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅のほか、空き家の区分の判断が困難な住宅のことを指します。実家空き家は「その他の住宅」に分類されます。

出所:総務省統計局 平成30 年住宅・土地統計調査

出所:総務省統計局 平成30 年住宅・土地統計調査

左図の通り、賃貸用住宅の空き家は減少していますが、その他の住宅の空き家は年々増え続けています。人口減少に高齢化が進む今後、その他の空き家が増加するのは容易に想像できます。この後、実家空き家を放っておくと、益々手間とコストのかかる「負」動産になってしまうかもしれません。

2.実家空き家のコスト

空き家は、周辺の環境や治安にも悪影響を及ぼします。例えば、雑草が伸びゴミが投棄されるなど不衛生な状態による悪臭の発生、老朽化による家屋の倒壊などという環境問題、空き家内部での犯罪や放火のリスクが高まるといったことが懸念されるのです。
周辺に迷惑をかけないためには、空き家を適切に管理する必要があります。そのための空家管理には、想像以上のコストがかかることを認識しておかなければいけません。具体的には以下のような経費です。

固定資産税

利用価値のない空き家も固定資産税・都市計画税がかかります。また、放置したまま管理不十分な空き家は特定空き家に指定される可能性があります。指定されれば、住宅用地に適用される軽減の特例から外れてしまいます。この場合、土地の200㎡以下の部分について軽減された固定資産税で1/6、都市計画税で1/3の軽減がなくなります。

光熱費

空き家のまま維持するためには掃除や通水も欠かせません。そのためには、水道光熱費が必要です。

修繕費

空き家を適切に管理する必要があります。屋根・外壁や外回りの劣化は放置していると家が崩れたり風で飛んだりします。特定空き家に指定される可能性もあり、修繕が必要です。

火災保険料

古くなり崩れかけた屋根・外壁の風雨対策、万が一の火災等の後片付けなど、保険の備えも必要です。

庭木の剪定・除草

年に数度のお墓参りついでの管理では庭木の剪定や除草は追いつきません。庭木の剪定除草費用もコストとしてみておく必要があります。

空き家管理を利用する

月に一度、確実に管理してもらえる空き家管理を利用する方も増えてきました。この場合、月額5000円~1万円程度が相場です。(庭木の剪定除草等は別途料金)。空き家管理を利用せずご自身で管理をするならば交通費が必要です。
※広島市内にある筆者所有の空き家のケース(火災保険料は土砂災害計画区域内のため水害保証を含む)交通費を除き合計282,000円/年

このように実家空き家を所有することは大きなコストがかかります。

3.新しいライフスタイルや多様な暮らしへの関心

突如現れたウイルスによって私たちの日常は、新しい生活様式への変化を余儀なくされました。
ここまで実家空き家を所有するためにはコストがかかるという負の面をみてきましたが、一方で新しい生活様式は、実家空き家を有効活用する機会に恵まれたといえるのかもしれません。

地方・郊外への居住、二拠点居住

多様化する価値観・ライフスタイルの変化に加えて、コロナ禍による働き方、暮らし方の変化に伴い、地方居住への関心は高まってきています。新たな動きとして、全国二地域居住等促進協議会 事務局(国土交通省国土政策局地方振興課)が設立されました。その設立趣旨には、「二地域居住等を促進することは、人の流れを生むとともに、東京一極集中の是正はもちろん、地方創生、関係人口の拡大にも資する極めて重要な課題であり、この機を逃さず、関係省庁、関係地方公共団体、関係団体・事業者等が連携して、国民的な運動として取り組んでいく必要がある」とあります。

住宅確保用配慮者の住まい

家余りといわれますが、高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅の確保に配慮が必要な方は今後も増加する見込みです。それらの方に向けた住宅セーフティネットとしては、公営住宅を新たに建てるよりも、増加する民間の空き家・空き室を利用する方向になっています。

4.待たれる実家空き家の活用

実家空き家を活用する支援制度

平成 29 年4月 26 日、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に 関する法律の一部を改正する法律」が公布され、同年10月25日に施行され、 新たな住宅セーフティネット制度が開始されました。一定要件のもとにセーフティネット住宅に登録すると、補助金などのサポートが受けられます。

改修費への補助
改修費の補助とは以下の工事を対象とした補助金です。
①耐震改修
②間取変更
③シェアハウスへの改修
④バリアフリー改修
⑤居住のために最低限必要と認められた工事
⑥居住支援協議会が必要と認める工事
⑦これらに係る調査設計計画の作成
補助の限度額は国費で50万円/戸ですが、①~③の工事を含む場合は2倍の100万円になります。(シェアハウスの場合は一室当たり)

改修費への融資
住宅金融公庫より融資対象工事費の8割で融資を受けることが可能です。金利は全期間固定です。

家賃低廉化への補助
低額所得者が入居する場合、その負担を軽くするために家賃を下げたときには、その家賃減額分に対して、1戸あたり毎月最大4万円の補助を受けられます。

用途変更に伴う制限の合理化

建築基準法の改正
2019年(令和元年)の建築基準法の改正により、空き家住宅を店舗やシェアーハウスなどに用途を変更して活用する場合、建物の延べ床面積が100平方メートルを超えるものについては、建築確認申請が必要でしたが、今回の改正で200平方メートル以下の場合は申請が不要となりました。また、3階建ての一戸建住宅を特殊建築物(シェアハウスを含む)にする場合に、耐火建築物にしなくてもよくなりました。

シェアオフィス等の立地要件の緩和
第一種低層住居専用地域等におけるシェアオフィス等について、特例許可をするにあたって、用途地域の良好な住居の環境を害するおそれがない等と認められるものについて、許可の対象とすること。とされています。実家空き家の多くも第一種低層住居専用地域に存在します。
このように、空き家を活用することの必要性に着目し、移住希望者とのマッチングから定住につなげる賃貸スキームや、広い家を子育て空間として利用するため、子育て支援サービスの担い手と連携した再生プロジェクトなど、空き家を活用した新しい仕組み・体制が構築されています。

5.実家空き家はリスクの少ない不動産投資

毎年のコストに加え管理が面倒な空き家は、ゴミのようなものという見方があります。事実、「売りに出したが売れる気配はない」「タダでもいいから譲りたい」という声が聞こえてきます。

地方における郊外の空き家、都市部の道路が狭い日当たりが悪い等、条件の悪い空き家は処分するにも手間も時間もかかります。それなら倉庫として使えるし放置しておこう、という考えもあるでしょう。安くてもいいから売れるなら売っておこう、という考えもあるでしょう。

しかし、賃貸市場に目を向けると、新しい日常による幅広い暮らしの要望は広い空間を求めています。また、住宅弱者に向けた市場は整備されているとはいえません。

これらの動きに応えるように「ボロ戸建投資」とよばれる、郊外の一戸建て投資を始める方が増えています。 融資審査が厳しいのに投資意欲が増加している理由は、少ない投資で超高利回りが可能とされる戸建投資への関心の高さからです。

放置するコストやリスクを考えれば、実家空き家の賃貸投資は、入居者が付くと比較的長期間安定した家賃収入が見込めます。また、管理も業者に任せれば不要です。

新たに購入することもなく、補助金の利用もできる実家空き家は、リスクの少ない投資方法のひとつかもしれません。この機会に実家空き家の有効活用を考えてみてはいかがでしょう。

【このコラムの著者】

田中法人

AFP/宅地建物取引士/2級建築士/不動産コンサルティングマスター/既存住宅状況調査技術者/木造住宅耐震診断士

ハウスメーカー支店長を得て2008年不動産FPコンサルティング事務所を開業。住宅購入者向けに、ライフプラン、住宅診断、不動産調査、各種個別相談、セミナー等を行う。不動産売買、建築コンサルティングが得意分野。現在、空き家問題解決のためのスキームとして中古戸建×リノベーション事業を開始。

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